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豚がつづる読書ブログ


★★★

トランスミッションの開発に乗り出した佃製作所。
帝国重工の財前が立ち上げた新たなプロジェクト、無人農業ロボット開発にもエンジンとトランスミッションを供給することになるが、その挑戦は前途多難な道のりだった…。

「下町ロケット ゴースト」の続編。

無人農業ロボット開発のためにトランスミッション研究に乗り出した佃製作所ですが、またもや様々な試練に晒されます。
佃を裏切ったギアゴーストはダーウィンという無人農業ロボットを開発することが明らかになり、帝国重工(佃製作所)vs下町の中小企業(ギアゴースト)の構図に。
しかし帝国重工の社内政治によって佃製作所がプロジェクトから外される危機もあり、複雑な様相を呈していきます。

結構、状況が難しくなってくるのですが、わかりやすい文章でテンポ良く進んでいくので自然とストーリーが頭に話が入ってきます。

また、佃製作所のものづくりの技術力とその誇りは素晴らしいと思うのですが、それだけではなく、佃社長の言葉にもいつも感服させられます。
佃社長は技術によって人の生活を便利にしたり人を幸せにしたい、ひいては世の中に貢献したいという強い思いを持っているんですよね。
その熱い信念が人の気持ちを動かし、今作でも野木教授、島津、殿村の父を説得していきます。
もちろん、技術に自信があるからこその説得力なわけですが、私はすごく強い言葉の力を感じます。
技術がいくら高くったって、それがきちんと人に伝わらなければ宝の持ち腐れですよね。
佃社長はものづくりに対する情熱、技術力、伝達力、すべての力を持っているので、経営者として素晴らしい!
こんな社長の下で働きたいです…。

お決まりの大団円にも納得の読み応えでした。

(2018年12月読了)
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★★★

ロケットエンジン用バルブシステムや人口心臓弁の開発によってその高い技術が認められ、経営も安定してきた
町工場の佃製作所。
しかし、取引先からの突然の受注打ち切り、エンジンバルブの納入先である帝国重工の業績悪化によるロケット事業撤退などの危機が迫り、佃製作所は窮地に追い込まれる。
同時期に経理部長の殿村の父親が倒れ、社長の佃は見舞いに訪れる。
農家を営む殿村の実家のトラクターを見て、佃は新たな分野の開発を思いつく―。

下町ロケットシリーズの第三作目。

読み終えた時、話が全然終わっていないことにびっくりしました。
次作の「ヤタガラス」に続くみたいです。
最初から「上巻」と銘打ってほしかったなと思い、モヤモヤが残りました。

それはそうと、相変わらず佃製作所の面々のものづくりに対する情熱は激しく、読み手の胸まで熱くさせてくれます。

今回の主役は佃製作所というよりもギアゴーストというベンチャー企業なのですが、こちらの会社の新キャラ達もそれぞれの思惑を抱えていて、これまた興味が尽きません。
どの登場人物たちも、事情は違えど、その技術にプライドと意地を持ち、前に進んでいこうとする意志が感じられるので気持ちよく読み進められます。
仕事をする人全員を鼓舞してくれるような、熱いものを受け取った気持ちになれました。

今回は佃製作所が脇役の立ち位置だったので、次作の展開に期待してます。

(2018年10月読了)
アキラとあきら (徳間文庫) アキラとあきら (徳間文庫)
池井戸潤

徳間書店 2017-05-17

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★★★

父の経営する町工場の倒産を見て育った山崎瑛(あきら)と、名門海運企業の創業家に生まれ、英才教育を受けて
育った御曹司、階堂彬(あきら)。
同じ名前ながらも対照的な生い立ちの二人は、矛盾や困難を乗り越えてバブル経済期に銀行員となり、互いを認めながらバンカーとしての才能を開花させ、さらなる難題に立ち向かう──。

二人のあきらの30年の成長を700ページにわたって丁寧に描いたストーリーです。
小学校を起点として高校から大学、バブル期の就職から中堅社員となるまで、実在の人物の30年を観察しているかのような気持ちになりました。

金に翻弄される青少年期を送った二人はそれぞれ目的を抱いて銀行に就職するわけですが、その様子をつぶさに描いているので、読者の頭の中に説得力のあるリアルな実像として浮かんできます。

中盤以降の、取引先との融資交渉や同族企業経営の難しさを描いた劇的な展開には手に汗を握りながら一気読み。
バブル期に建てたホテル事業の不採算により本業まで不振に陥った企業をどのように復活させるのか、知恵を絞る二人の苦悩と葛藤が見事でした。

「倒産した町工場」「銀行員としての矜持」など、いつもの池井戸作品と同じ要素が入っていますが、今回は経営者側の苦労が丹念に描かれているので一味違った読み心地でした。

欲を言えば、思ったほどアキラ二人の会話が無く、接点が薄い気がします。
あと、終盤は御曹司のアキラのほうの話が中心となるので、もう一人のアキラのエピソードももうちょっと読みたかった。
二人のアキラの配分が悪い…でも全体のバランスを考えればこれが最良かもしれません。

配られたカードで勝負するしかない人生の残酷さと、それを乗り越えようとする強い意志の力に圧倒される作品でした。


(2017年8月読了)
下町ロケット (小学館文庫) 下町ロケット (小学館文庫)
池井戸 潤

小学館 2013-12-26

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★★★★

かつてロケット開発に関わっていたが打ち上げ失敗の責任を負って会社を辞め、実家の中小企業を継いだ佃航平。
しかし大企業による突然の取引停止に苦しめられるだけではなく、特許侵害で訴えられ、佃製作所は倒産の危機に瀕していた。

面白かった!!
大企業を相手に中小企業の佃製作所が死力を尽くして戦っていくというオーソドックスな勧善懲悪ストーリーですが、手に汗握る展開にとんでもなく胸が熱くなりました。

今回のお話は「特許」が軸となっていますが、知的財産権という分野はわたしは全くの無知だったので知らないことがいっぱいでした。
せっかくの知的財産を有効に活用しないと、他社から悪質な侵害を受け、訴えられたら社会的信用を失い資金繰りにも困るとか…勉強になりました。

様々な立場の者たちの思惑や権謀術数に巻き込まれつつも、佃社長が理詰めと情でそれらをねじ伏せていくさまはまさに痛快。

大企業から高額の特許譲渡を迫られたとき、ものづくり魂に燃えた佃は自社生産による部品提供を望むのですが、社内の反対に合います。
そのとき、愚直な佃と経理部長の意地と情熱に周囲は揺さぶられ、賛同していく様子が説得力を伴って描かれています。
やはり、人を動かすものは給料や安定よりも仕事に「夢」を感じさせてくれる情熱なのでしょうか。

理想を理想で終わらせないために、たゆまない努力を重ねる佃社長と周辺の人々の姿には涙が止まりませんでした。

(2016年6月読了)
民王 (文春文庫) 民王 (文春文庫)
池井戸 潤

文藝春秋 2013-06-10

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★★★

ある日、総理大臣の武藤と息子の翔の人格が突然入れ替わってしまう。
原因を探りながらも、とりあえずは入れ替わりの状態で過ごすことを余儀なくされる二人。
翔はろくに漢字も読めず国会答弁に苦労する一方、父親も息子の就職活動で面接官を論破してしまい苦闘する日々を送るが…。

今まで読んだ池井戸作品は全てリアル路線だったので、人格入れ替わりという話に最初はとまどいました。
池井戸さんもこんなSFみたいの書くんだ~、とすごく意外でした。

軽い政治エンタメ小説の体裁を取りながらも、社会や政治へのメッセージがストレートに込められた熱いお話です。
武藤のような、保身に走らず民意に耳を傾ける政治家がどれくらいいるんだろう…と考えると寒気がしますね。

(2015年7月読了)
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sis
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趣味:
読書
自己紹介:
読むのがすごく遅いけど、小さい頃から本を読むのが大好き。

大好きな作家は、ジョン・アーヴィング、筒井康隆、津原泰水、中上健次、桐野夏生、北村薫、金井美恵子、梨木果歩。

コンプリート中なのは宮部みゆき、恩田陸、松尾由美、三浦しをん、桐野夏生、北村薫。今のところ、多分著作は全部読んでいます。
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