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豚がつづる読書ブログ
僕はもう憑かれたよ (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ) 僕はもう憑かれたよ (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)
七尾 与史

宝島社 2017-03-04

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★★★

25歳の誕生日、自分の部屋で一人で過ごしていた真知のところに見知らぬ男が部屋を訪ねてきた。
美門玲二と名乗るその男性は、なぜか真知のことをいろいろ知っていた。
その後、治療のため訪れた歯医者で真知と美門は、偶然再会するが―。

タイトルの出オチ感が半端ない小説。

事故で恋人の裕三を失った真知と、裕三に憑りつかれた美門の二人の視点が交互に描かれながら話が進んでいきます。
二人はお互いの事情を知らないので相手の真意を計りかね、すれ違う展開となるのですが、読んでいるこちら側としてはそのややこしさにヤキモキしました。

真相は結構シンプルでしたが、そこに至るまでの真知と美門のすれ違いやそれぞれ別々に行動し謎に迫っていく様子がまだるっこしくてテンポが悪かったように思います。

また、解説にも書いてあったようにこの「脱力タイトル」はちょっといただけないかも。
話の内容はちゃんとシリアスなので、まじめなタイトルにすれば良かったのになー、と残念です。
このタイトルだとコミカルな内容だと思って手に取らない人もいるんじゃないかな。
「憑かれた」と「疲れた」をかけていると思うのですが、ギャグタイトルとしてもこのセンスはどうかと思います…。

(2017年4月読了)
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出版禁止 (新潮文庫) 出版禁止 (新潮文庫)
長江 俊和

新潮社 2017-03-01

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★★

映像作家と愛人女性との心中事件が発生した。男は死に、女は一命をとりとめた。
本当は、誰かに殺されたのではないか?
7年後、偽装心中を疑うライター・若橋呉成は生き残った女性に取材し、「カミュの刺客」という題で原稿を書いたが、しかし、そのルポは封印された―。

取材を重ね、真相に迫っていくうちに狂気にダイブしていくライターの猟奇っぷりに怯えながら読みました。

真相は藪の中、ということで若干モヤモヤしましたが、作中の暗示や仕掛けの意味がわからなかったので考察をネットで検索したら、いろいろ腑に落ちました。

作者はフェイク・ドキュメンタリーを得意とする、結末を読み手(観客)に委ねるタイプの映像作家なんですねー、全然知らなかった!
結末を読者に委ねる小説は結構好きですが、この本はちょっと委ねすぎじゃね?と思いました。
もうちょっと示唆に富んだどんでん返しが有るほうが好みです。

(2017年3月読了)
方舟は冬の国へ (双葉文庫) 方舟は冬の国へ (双葉文庫)
西澤 保彦

双葉社 2016-08-04

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★★★

再就職先がなかなか決まらない和人が依頼された仕事は、ある別荘にこもって擬似家族を演じることだった。
初対面の女性と少女と共に、家族として別荘で滞在を始めると不思議な現象が次々と起きる。3人は次第に愛を深めていくが、この仕事の裏には壮大な計画が隠されていた。

家族を題材にしたヒューマンドラマでもあり、日常の謎を扱うミステリでもあり、また途中からはSFに寄せたアプローチがあるという、いろんな面が混在した不思議な感触の物語でした。
いろんな要素が詰まっているのにちぐはぐさは無く、絶妙なバランスを保っていて、全てうまく同居しています。

そういった構成なので物語の着地点が見えてこず、結末まで予想不可能。
最後まで心地よい緊張感の中、魅せられました。

切なく優しい余韻を残すお話でした。

(2016年10月読了)

崩れる 結婚にまつわる八つの風景 (角川文庫) 崩れる 結婚にまつわる八つの風景 (角川文庫)
貫井 徳郎

角川書店(角川グループパブリッシング) 2011-03-25
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★★★

結婚にまつわる男女の感情のもつれを描いた短編集。
 
結婚生活についてかなりブラックかつシニカルに色んなパターンを描いているので、未婚者は背筋が凍るかもしれません(笑)。
 
わずかな感情の食い違いから起こる悲劇にリアリティを与えているのは、作者の人間観察眼による描写力の高さ。
ママ友や妊娠についての描写は、作者は女性かと思うくらい女性心理がよく描き出されていると思いました。
 
ストーカーやママ友の公園デビュー、女性同士のマウンティングなど、ありがちな題材の話が多いなと感じましたが、どれも約20年前に書かれた作品だと解説に書いてあり、びっくり。
今やニュースでもおなじみの題材ですが、桐野夏生がママ友の話を書くよりもはるか前に
「女性独特の閉塞感」というテーマに目をつけるなんて、作者の嗅覚には驚かされます。
貫井さんは初読みだったのですが、他の作品も俄然読みたくなってきました。
 
しみじみ思ったのは、今も昔も、女性の幸福には結婚という変数が欠かせないということ。
昔よりも女性は経済的に自立できる時代となっていますが、その部分はいつまでも変わらないのかもしれません。
(2016年4月読了)
怖い絵  (角川文庫) 怖い絵 (角川文庫)
中野 京子

角川書店 2013-07-25
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★★★★

よく知られた名画にひそむ、心胆寒からしめる恐怖の物語―。
絵が描かれた時代背景や画家のエピソードを紹介し、その絵に描きこまれた真実の意図を読み解くというスタイルの本。

「本書を読めば、絵画の見方が変わります。」という煽りにつられて読んでみました。
一見何の変哲もない名画も、作者のフィルターを通して再度見てみると、あら不思議、どの絵も不安感あふれる「怖い絵」となります。

今までの絵画の見方に違う視点を与えてくれるので、大いに知的好奇心を刺激されました。
絵画の素晴らしさもさることながら、読者を絵画の世界に惹きこむような著者の文章力にも圧倒されます。

人間の本質に迫ろうとする時、それに触れる者は不安に思い、恐怖にかられるのかもしれない、と思いました。

(2013年12月読了)

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プロフィール
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sis
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趣味:
読書
自己紹介:
読むのがすごく遅いけど、小さい頃から本を読むのが大好き。

大好きな作家は、ジョン・アーヴィング、筒井康隆、津原泰水、中上健次、桐野夏生、北村薫、金井美恵子、梨木果歩。

コンプリート中なのは宮部みゆき、恩田陸、松尾由美、三浦しをん、桐野夏生、北村薫。今のところ、多分著作は全部読んでいます。
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