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豚がつづる読書ブログ


★★★

馴染みの太夫から勧められ、深川の芭蕉庵に向かった絵師兼幇間の暁雲は、そこで琉球の装束姿の謎の女と出会う。

折しも芭蕉庵では、琉球の芭蕉布に包まれた脅迫状らしい投げ文が見つかり大騒動が起きていた。
芭蕉の一番弟子・其角と意気投合した暁雲は、成り行きから二人で謎解きに乗り出すが…。

前作「酔ひもせず」の前日譚。
前作は二人の最後の事件を描いたものでしたが、こちらは出会いから無二の親友になるまでを描いています。

豪放磊落だけれども細やかな観察眼を持つ暁雲と生真面目だが空気が読めない其角は、ウマが合うのか最初からいいコンビで、心地よく読み手を事件の謎解きに没頭させてくれます。

前作同様、事件の深奥には理不尽に翻弄された人の悲しみや無力感が横たわっていて、心をかき乱されました。
薩摩藩に支配された琉球の「江戸上り」についても恥ずかしながら知らなかったので、新鮮で面白かったです。

真相にあまり驚きは無かったものの、そこに至るまでの展開やコンビの会話が楽しく、また次作が楽しみなシリーズになりました。

(2019年7月読了)
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酔ひもせず: 其角と一蝶 (光文社時代小説文庫) 酔ひもせず: 其角と一蝶 (光文社時代小説文庫)
田牧 大和

光文社 2017-11-09

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★★★

芭蕉の高弟である俳諧師の其角は、絵師の多賀朝湖(後の一蝶)の魅力にひきつけられ、9歳年上の彼と友だち付き合いをするようになる。
朝湖は狂雲堂と名乗るたいこもちでもあり、吉原では知られた存在だった。
ある日、吉原の遊女がもらった屏風に描かれた子犬が動き、それを見た遊女が次々と消える事件が起きた。
謎を追う二人は事件の真相に迫るが…。

其角と一蝶のコンビが良いです。
頭は切れるが不器用な其角と、理屈ではなく情で動く豪放磊落な一蝶。
蕉門のまとめ役ながらも周囲に溝を感じて屈託のある其角は、人を惹きつけるがそれでいて心にどこか暗闇を抱えている一蝶と一緒にいると、自然と振舞うことができ本当の自分になれる。

ブロマンス風の二人の絆には少しモヤモヤしますが、このお話の見どころは遊女たちの哀しい生きざま。
苦界に身を沈めた遊女たちの儚くも美しい恋や外への憧れ、そして諦観。
ささやかな幸せを求めながらもお互いを思いやる遊女たちの姿は胸につかえ、深い余韻を残します。

そして、謎がきれいに解かれ、次巻ではまた二人が事件を解決していくのかと思いきや…後日談は唐突であっさりしすぎていて不満が残ります。
暁雲が背負う過去の解決は膨らませれば一冊にはなるのに、数頁で終わってしまってもったいない。
もっと、二人が酒を飲みながらわちゃわちゃして事件に遭遇するお話が読みたかった!

二人が友人になるまでの前日譚が刊行されているようなので、そちらも読んでみようと思います。


(2018年7月読了)
鯖猫(さばねこ)長屋ふしぎ草紙 (PHP文芸文庫) 鯖猫(さばねこ)長屋ふしぎ草紙 (PHP文芸文庫)
田牧 大和

PHP研究所 2016-11-09

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★★★

ある江戸深川の貧乏長屋でいちばん幅をきかせているのは、なんと猫だった。

人呼んで「鯖猫長屋」。
猫の絵ばかり描く売れない絵師の拾楽(飼い主)と猫のサバが、長屋の人々の間に起きた様々な騒動を解決していく。

長屋に謎めいた女性が引っ越してきてからさまざまな騒動が起こり、平穏だった長屋の連中の間に不穏な空気が立ち込めていきます。

連作短編集なのですが、各章の冒頭に「問わず語り」という何者かの独白がはさみこまれ、背後に隠された一つの大きな謎がだんだん明らかになっていきます。
その裏側の謎を推理していきながら短編のちょっとした騒動も楽しむという、一粒で二度おいしい構成になっていて、お得感がありました。
でも背後の大きな謎はバランス良く配置されているので、本筋を邪魔することはありません。
その配合具合がとても読みやすく、作者のさりげない手腕を感じました。

また、本書の魅力は個性的な登場人物たちのテンポのいい会話にもあるのですが、一番の見どころは猫のサバのふてぶてしいけど存在感あふれるキャラクターです!
普段はやたらと偉そうなのに長屋の危機にはちゃんと人間たちを守るように立ち回っていて、ツンデレ度合がかわいい。
猫に対してそんなに興味のない私でも萌えたので、猫好きにはたまらないだろうな~。

またサバと絵師の拾楽のコンビ探偵を読みたいので続刊を読む予定です。

(2017年9月読了)
とんずら屋請負帖  仇討 (角川文庫) とんずら屋請負帖 仇討 (角川文庫)
田牧 大和

KADOKAWA/角川書店 2013-12-25

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★★★

とんずら屋シリーズ第二弾。

女であることを隠して船頭として弥生が働いている松波屋。その裏稼業はとんずら屋だった。
松波屋に新しく雇われた女中の鈴は、武家の出自のようだった。
一方、身分を隠して松波屋に長逗留している各務丈之進は、国許からの「仇討の助太刀をせよ」との要請に頭を悩ませていた。

今回は仇討のお話。
時代小説では仇討のお話はそう珍しいものではありませんが、ひとたび田牧さんの手にかかれば、様々な者の思惑が絡み合い、幾重にもかくされた真実には読み手はなかなか辿り着くことができません。
一筋縄ではいかない展開にまどろっこしさを感じますが、その分読み応えがありました。

前作よりも存在感を増した主人公の弥生には成長が感じられ、親戚のような気持で読みました。
やっぱり主人公に安定感があると安心して読めますね(前作が結構不安定だったので・・・)。

お家騒動は終息の方向で進んでいると思ったのですが、今後は弥生が切り札となって一波乱ありそうな展開になってきたので続刊が待ち遠しいです。

(2016年5月読了)
数えからくり: 女錠前師 謎とき帖(二) (新潮文庫) 数えからくり: 女錠前師 謎とき帖(二) (新潮文庫)
田牧 大和

新潮社 2013-09-28

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★★★

女錠前師・緋名を主人公とした「緋色からくり」の続編。
大門屋の美人姉妹の妹が殺されるが、仲の良かった姉が姿を現さない。
一方、緋名は、旗本の気が触れた娘を幽閉するための座敷牢の錠前仕事を依頼される。
この娘・彩がたびたび牢を抜け出し、手を血で染めた状態で見つかるという。
彩が出られないような錠前を作るように依頼されるが、緋名は彩が正気であることを
疑い、錠前に特別な仕掛を施すが・・・。

前回の話と比べると、重くて薄暗いストーリーでした。
読んでいて楽しい感じではないのですが、先が気になって一気に読みました。

中盤、込み入った話となるので、話の筋と登場人物たちの動きを頭の中で整理する必要があり少し混乱しました。
誰が殺されて誰が生きているか、こんがらがってくるんですよねー。

神隠しの謎、そして旗本の三井家や大門屋の姉妹の秘密が明かされる時、悲しい真実が浮き彫りとなります。

理不尽な仕打ちに耐え、痛みで心が壊れかける時、正気を保って生きるのは困難なこと。
善い心や邪悪な心、どちらにも同じくらい惹かれるのは哀しき人間のサガ。
清濁併せのんで抱えていくのが人間の業というものでしょうか。

幼馴染の甚八や同心の康三郎など、おなじみの面々の活躍も安定ですが、
飼い猫の大福の大活躍にはほっこりしました。

(2015年9月読了)
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sis
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非公開
趣味:
読書
自己紹介:
読むのがすごく遅いけど、小さい頃から本を読むのが大好き。

大好きな作家は、ジョン・アーヴィング、筒井康隆、津原泰水、中上健次、桐野夏生、北村薫、金井美恵子、梨木果歩。

コンプリート中なのは宮部みゆき、恩田陸、松尾由美、三浦しをん、桐野夏生、北村薫。今のところ、多分著作は全部読んでいます。
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