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豚がつづる読書ブログ
★★★★

主人公は、官能漫画家の母にアクアマリンと名付けられ、閉塞的な寂れた地方都市で人生を諦めたように暮らす男子高校生。
ある日商店街の仕立て屋のショーウィンドウに突然飾られた美しいコルセットに心を奪われ、そのコルセット(コール・バレネ)で革命を起こしたいと考える老店主に共鳴するアクア。
その計画に加担することで、彼の日常は思いもよらぬ方向へと転がっていく――。

最高に面白かった!
最初は伊三郎とアクアの二人で計画を練っていきますが、だんだんスチームパンク趣味の同級生少女や商店街のクセ強めの老人たちを巻き込み協力者を増やしていき、極上の化学反応を起こしていきます。
それぞれの特技や才能を持ち寄り、コルセットとその背後の世界観をブラッシュアップしていく流れは、魅力的な商品開発ストーリーや鮮やかなマーケティング手法を見ているようでドキドキワクワクさせられました。
また、メインの少年成長物語だけでなく、地方再生の生々しい実情、貧困母子家庭を取り巻く周囲の偏見など、社会性のある骨太テーマも絡み合い、読み応えバツグンでした。

不全感で縮んだ少年が自己肯定してゆく過程を丁寧に描き、世界に踏み出す力を得ていく彼に爽やかな感動をおぼえました。
読んでて元気を貰えました!

(2023年12月読了)
PR

★★★

東京都の小さな離島で、ミイラ化した若い女性の遺体が発見された。
通常とは異なる遺体の状態に法医昆虫学者の赤堀に出動要請が入り、彼女の世話係の警視庁の岩楯も島に向かう。
解剖医は自殺と断定し、死亡推定月日は3ヵ月以上前と判明するが…。

遺体に群がる虫の痕跡から事件を紐解いていく昆虫学捜査官・赤堀涼子を主人公にしたシリーズももう五作目。
毎回異なるパターンの虫や現場が出てくるので、飽きない作品です。

今回はミイラ化遺体ということで、大量のウジ虫ちゃんが出てこないのでそんなにグロくなく、物足りない感じ。
私は別にグロいのが得意なわけではないのですが、このシリーズを読んでいるうちに耐性ができてしまったようです。

昆虫相から死の真相を調べる赤堀と、被害者の周辺の聞き込みによって捜査していく岩楯たち警察。
同時並行の推理がやがて一つの真実に辿り着き、集約していく様子はスリリングで、圧倒的なカタルシスを感じることができます。

女性の多い職場ならではの陰湿なやり口でいじめられ、家族からも忌避され、最後は離島を観光で盛り立てようとする地元の野心家たちの餌食になり、死んでいった被害者。
そんな暗い影を落としていた被害者をめぐる状況と不気味な虫たちの生態が二重写しにされ、より一層の陰惨さを際立たせています。
ちょっと薄暗い話ですが…でも、最後に二人の登場人物(兵藤と由紀)が事件を通して少し前向きになり、かすかに明るい兆しがもたらされるのは良かったです。
また、赤堀と岩楯の、仕事への自負とバディとしての信頼感が感じられるラストも読後感が最高でした。

次巻が楽しみ~。

(2019年8月読了)


★★★★

東京都西多摩でバラバラ死体が発見され、岩楯警部補は山岳救助隊員の牛久とペアを組み捜査に加わった。
捜査に協力する法医昆虫学者の赤堀涼子は、死体に付いたウジの生育状況から死亡推定日を割り出す。
しかしそれは司法解剖医が出した推定日と食い違っており、否定されてしまう──。

法医昆虫学捜査官シリーズ四作目。
今作も前作と同様に、死体に付いた虫のわずかな手掛りから事件の糸口を見出し、解決に導いていくという異色の警察サスペンスです。

ちょっぴりエキセントリックな言動で周囲を困惑させる赤堀ですが、まだ警察捜査方法として確立・信頼されていない法医昆虫学を認めてもらうために、地道で膨大な作業をこなし、仮説と検証を繰り返す様子には学者としての意地と底力を見せつけられたようで、感心しました。

一方で、岩楯警部補は現場の村で聞き込みを始めるわけですが、怪しい人物がいるものの終盤まで被害者の身元も犯行動機も特定できません。
そんな、捜査が遅々として進まない様子がリアルな臨場感を演出しており、迫力がありました。
いつものように岩楯と赤堀の掛け合いも楽しく、抜群の安定感でした。

また、終盤明らかになる、余人の想像を絶する苛烈な真相には思わず戦慄。
常人の理解を寄せつけない歪んだ欲望には、非道な世界への拒絶と愛する者への帰依を感じます。
一線を越えてしまった人間の狂気と執着をまざまざと見せつけられ、何とも言えない後味の悪さが残りました。

ただただ、面白かったです!

(2018年12月読了)
水底の棘 法医昆虫学捜査官 (講談社文庫) 水底の棘 法医昆虫学捜査官 (講談社文庫)
川瀬 七緒

講談社 2016-08-11


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★★★★

東京荒川の中州で発見された変死体。
損傷が激しく身元特定は困難を極め、他殺か自殺か事故かどうかもわからない。
解剖医と鑑識の判定に法医昆虫学者の赤堀涼子は異論を唱え、独自に調査を開始する。
捜査本部の岩楯警部補たちと連携し、彼女が見極めた事件の真相は――?

法医昆虫学捜査官シリーズ三作目。
毎度毎度、遺体に残されたウジやわずかに付着した虫や微生物から緻密な赤堀の捜査が始まるわけですが、今回は水中の生き物たちの生態も描かれていて、赤堀先生の守備範囲の広さには驚きました。
海の虫の描写も気持ち悪いったら・・・思わずウェブで虫たちを画像検索しましたが、ほんともう、見るんじゃなかった・・・大後悔です。

刑事たちは被害者の刺青から真相に迫っていくのですが、赤堀と刑事たちの捜査が交わる時、終盤の半端ないデッドヒートに突入。
最後は一気読みでした。

ミステリって、「誰が」殺したのかという点を推理する話は多いと思うのですが、この作品では容疑者どころか、被害者の身元は半分以上読み進めても不明のまま。
被害者が「どこで」死んだのか、それだけを愚直に突き詰めていく。
被害者が明らかになりさえすれば、「誰が」「いつ」殺したのか自ずと明らかになるだろうという考えのもと、自分のできることをひたすら掘り下げていく赤堀。
そして彼女を信頼して彼女の情報をもとに捜査していく刑事たち。
3作目にして登場人物たちの関係が以前よりも強固になり、信頼のコールアンドレスポンスがきちんと作用していることに何だか安心感をおぼえ、いつの間にか彼らから目が離せなくなっていることに気づくんですねー。
私にとって、いつまでも読んでいたいシリーズになってしまいました。

乾燥アリのフェロモンを赤堀と岩楯が並んで吸引するシーンは・・・とてつもなくおかしい。
こういうユーモアや皮肉っぽいエピソードがちょいちょい入ってるのもたまらない!

(2017年2月読了)
桃ノ木坂互助会 (徳間文庫) 桃ノ木坂互助会 (徳間文庫)
川瀬 七緒

徳間書店 2016-01-07

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★★★

新しく桃ノ木坂町に越してきた住民たちによるトラブルや町の平穏を乱す行動に悩む桃ノ木坂互助会(老人会)の会長・光太郎。
元海自曹長でもある彼は、町に害を及ぼす住民たちを仲間たちとともにあらゆる手を使って町から追放するため、暗躍している。
次のターゲットは、大家とトラブルを起こしていた男、武藤。しかし自分たち以外にも武藤を狙っている存在があることに気付き・・・。

最初は老人たちの世直し隊の勧善懲悪モノかなーと思いきや、読み進めていくと第三者が参戦し、三つ巴のサスペンスめいた様相を呈す展開に。
話の着地点が見えず、どうなっちゃうんだろう??とページを繰る手が駆り立てられました。

終盤で予想もつかない展開に。
隠されていた秘密は物語をよりスリリングにして、読み手を混乱の渦に導いてくれました。
それでいて読後感は悪くなく、何となく清涼感を味わえる作者の手腕は素晴らしいと思います!

(2016年8月読了)
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sis
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趣味:
読書
自己紹介:
読むのがすごく遅いけど、小さい頃から本を読むのが大好き。

大好きな作家は、ジョン・アーヴィング、筒井康隆、津原泰水、中上健次、桐野夏生、北村薫、金井美恵子、梨木果歩。

コンプリート中なのは宮部みゆき、恩田陸、松尾由美、三浦しをん、桐野夏生、北村薫。今のところ、多分著作は全部読んでいます。
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