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豚がつづる読書ブログ
f植物園の巣穴f植物園の巣穴
梨木 香歩

朝日新聞出版 2009-05-07
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★★★

植物園の園丁は椋の木の巣穴に落ち、不思議な世界に迷いこむ。
そこで出会ったのは、どこか愛嬌のある物の怪や、いにしえの神々。
主人公が己の失われた記憶を辿り、未来を見すえる覚悟を持つまでの幻想譚。

不思議な世界に浸りたい時にはうってつけの一冊。

どこから現実でどこまでが夢なのか、奥行きのない不穏な空気感をまとう世界にぐいぐい引き込まれてしまいました。
その浮遊感に身を委ねながら読み進めていくと、心の奥底にしまわれた主人公の気持ちがだんだん紐解かれていきます。
そして最後に彼の秘めた思いに気付かされた時、それまでの伏線に驚くとともにしみじみとした感動を覚えるのです。

思わず自分自身の来し方行く末も考えてしまうような、余韻の残る佳品でした。

(2012年7月読了)

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★★★★

近所の外国人屋敷に存在する、秘密の裏庭。
照美が垣間見た「裏庭」の世界を描くファンタジー。

「秘密の花園」的なものを期待して読んだのですが、何だか児童文学とは思えないほど、重苦しくてハードな手ごたえの本でした。

主人公の照美は、裏庭世界を救う冒険の中で自身が受けた傷と向き合い、それを受け入れてゆく。
心地良い偽りの癒しをはねのけ、歩み出す。
それはまた、他人と和解し、受け入れることにもつながってゆく。

照美のその姿は非常に痛々しく、読者を揺さぶり、最後はすがすがしいほどの感動を与えてくれる。
安易なカタルシスを用意しないところがまた、梨木さんらしい。

自分をスポイルしてきた私にはとても恐ろしく厳しい話だった。
翻訳小説のような生硬な手ざわりでちょっと読みにくかったけども、またいつか読み返したい。

(2009年8月読了)

★★★★★5つ!

おばあちゃんのもとで魔女の手ほどきを受ける中学生のまい。
ここでいう魔法とは、人生を十分に生きるための姿勢やコツのようなもの。
十分に死ぬためには十分に生きなければならない、というおばあちゃんの言葉は深く自分に刺さる。

あるがままを受け入れてくれるおばあちゃんと暮らすうちに、まいは多くのことを感じ取り、救われていく。
ラストを読んだ瞬間、目から洪水が溢れだした。
ひどく大切な、温かいものを手渡されたような気持ちになる。

(2007年10月読了)
★★★★★5つ!

「理解はできないが受け容れる。そういうことを観念上のものだけにしない。」、がモットーのウエスト夫人に師事し、ともに生活した英国での日々が綴られたエッセイ。

「日常を深く生き抜く、ということはそもそもどこまで可能なのか」
「相反するベクトルを、互いの力を損なわないような形で一人の人間の中に内在させることは可能なのだろうか」

自分の中でモヤモヤしていたものをはっきりと言語化して提示してくれたようで気持ちよかった。
梨木さんの物語の背景にはこんな思索が積み重ねられていたのか、と小説よりも直裁的に語られている分わかりやすかった。

英国や日本での様々な人との出会いと別れ。
機知に富み一筋縄ではいかないエピソードを読んでいると、梨木さんもまた、出会った人々のあるがままを受け容れていると感じられた。

(2007年9月読了)
★★★★★5つ!

おばあちゃんに市松人形のりかさんをプレゼントされたようこ。
リカちゃん人形が欲しかったようこはがっかりするが、りかさんと会話ができるようになり、彼女を通じて他の人形達の語りに耳を傾けていく。

持ち主の人間の記憶や想いを引き受けて、人形は人間の業を宿す。
そのことが読んでいてひどく怖かったが、本当に怖いのは人形ではなく人間のほうだと気づいた。
蓄積されてきた業を、りかさんとようこがそっとすくい取り解消していく様子には暖かく晴れ晴れとした気持ちになる。

また、おばあちゃんがようこに、様々な価値観の違う人たちが集う世界の捉え方や関わり方を静かに伝えてくれる場面は印象的。

「価値観の同じ人と結婚したって、修行にはならないじゃないか」
「澄んだ差別をして、ものごとに区別をつけて行かなくてはならないよ」そのためには、「まず、自分の濁りを押し付けない。それからどんな『差』や違いでも、なんて、かわいい、ってまず思うのさ」

「からりからくさ」の後日談である「ミケルの庭」も併録。

子どもの病気の話でもあるし、紀久の葛藤は読んでいて重かったが、すがすがしいラストは明るい気持ちで本を閉じることができた。
赤ちゃんのミケルが世界を認識していく描写も素晴らしい。

(2007年9月読了)
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sis
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趣味:
読書
自己紹介:
読むのがすごく遅いけど、小さい頃から本を読むのが大好き。

大好きな作家は、ジョン・アーヴィング、筒井康隆、津原泰水、中上健次、桐野夏生、北村薫、金井美恵子、梨木果歩。

コンプリート中なのは宮部みゆき、恩田陸、松尾由美、三浦しをん、桐野夏生、北村薫。今のところ、多分著作は全部読んでいます。
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