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豚がつづる読書ブログ
製鉄天使 (創元推理文庫) 製鉄天使 (創元推理文庫)
桜庭 一樹

東京創元社 2012-11-29

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★★

『赤朽葉家の伝説』のスピンアウト作品。
製鉄会社の長女として生まれた小豆が、荒ぶる魂に突き動かされるように、伝説のレディース〈製鉄天使〉総長として中国地方を統一してゆくお話。

赤朽葉家~だけで完結すればよかったのに…はっきりいって、蛇足感は否めないと思います。

作者の筆が滑りすぎちゃって、どう受け取っていいのか…これ、笑っていいの?
鉄の羽を背負って飛びまわったり、バイクが勝手に走ったりとか、やたらと大仰なセリフ回しとか。
とんでもなくぶっ飛んだコメディとして読んでいいのかどうか、最後まで判断できませんでした。

ヤンキー世代ではないので共感はできなかったものの、気恥ずかしくなるほどの青春話に何だか妙に切なさに胸が締め付けられてしまう、不思議な読後感でした。

お気に入りのセリフいくつか。
「風になりてぇんだよ。えいえんの国に行きたいんだ」
「あたしのことは、ハイウェイの、夜の、風になったと思ってくれよ……」
(これからどこへ行くのかと聞かれて)「バーロー、決まってるだろ…えいえんの国、さ」

(2013年2月読了)

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ばらばら死体の夜 ばらばら死体の夜
桜庭 一樹

集英社 2011-05-02
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★★★

古本屋の二階に住む美しい女性、沙漠。
その砂漠と関係を重ねる吉野は、資産家の娘と結婚するも、隠れて借金の返済を続けている。
吉野の友人の女性は、定職を持っているのに学生時代から生活水準が向上しない。
金にまつわる人間の姿をそれぞれの視点から丁寧に描き出した、爛れた人間関係模様。

嘘や借金を重ねながら一時の快楽を求めて怠惰に生きる、砂漠という女性の造形がリアル。
どこかちぐはぐな雰囲気というか、存在自体が揺らいでる感じの彼女は、救いようがなくてぞっとする。

閉塞した世界を紡ぎ出す作者の手腕はお見事だけど、登場人物が抱える闇の重みが足りなくて、中途半端な印象を受けた。
まあ、共感できない登場人物ばかりだけど、彼らの抱える空虚は何となくわかる。

(2011年12月読了)

★★★

江戸に跋扈する人と犬の子孫「伏」を狩る猟師の少女、浜路の冒険活劇譚。

作中作の「贋作・里見八犬伝」が作品の半分近くを占めるという無茶苦茶な構成で、話に入り込めないまま読了。
本篇も作中作もどちらも中途半端な印象を受け、あまり楽しめなかった。
全ての物語が輻輳しこれから面白くなりそう、というところで終っちゃうし。

どちらか一つだったらバランスも良く面白かったと思う。
狩る者・狩られる者が一瞬通じ合うシーンや、作品から濃厚に浮かび上がる死と闇の気配はとても良かったのに、残念。

(2011年10月読了)

★★★

恋愛小説家の父を持つ荒野の、中学から高校までの成長物語。
中学の入学式に向かう電車の中で、荒野は一人の少年に助けられる。
やがて荒野の家庭にやって来た新しい家族は、その少年だった。

恥ずかしくなるほどの青春ストーリーなんだけど、遥か昔を思い出して切なさに揺さぶられた。

初めて一人で喫茶店に入った時の気持ちから、少女から大人に変わる時期のよるべなさまで、余すところなく描かれている。

少女時代の瑞々しく揺れ動く気持ちが、ダイレクトに伝わってきた。

(2010年9月読了)

★★★★★5つ!

圧倒的な筆致に蓄えられた物語ののびしろはどこまでも遠く、この物語は自分をどこまで連れて行ってくれるのか、片道切符を渡されているような感じで不安になりながらも読み始めたが最後、身も心も持っていかれます。

もはや物語の筋よりも、これを描きたい、伝えたいという作者の気迫に押され、強権発動的な物語の力で納得させられてしまうのです。

強烈な読書体験でした。
二年くらい前に読んだ小説ですが、忘れることができません。

(2008年1月読了)
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sis
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非公開
趣味:
読書
自己紹介:
読むのがすごく遅いけど、小さい頃から本を読むのが大好き。

大好きな作家は、ジョン・アーヴィング、筒井康隆、津原泰水、中上健次、桐野夏生、北村薫、金井美恵子、梨木果歩。

コンプリート中なのは宮部みゆき、恩田陸、松尾由美、三浦しをん、桐野夏生、北村薫。今のところ、多分著作は全部読んでいます。
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