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豚がつづる読書ブログ
変調二人羽織 (光文社文庫) 変調二人羽織 (光文社文庫)
連城 三紀彦

光文社 2010-01-13

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★★★★★5つ!

初期の本格ミステリを5編収録した短編集。 


どの作品も論理と叙情を両立させたクオリティの高い短編です。
物語の着地点を予想させない、読み手の意表をつくテクニックが群を抜いていて、犯人当てを楽しむよりもただただ作者の描く豊饒な物語を堪能するばかりでした。

心に残ったのは表題作「変調二人羽織」と「六花の印」の2作。

まずは「変調二人羽織」。
東京の夜空に珍しく一羽の鶴が舞った夜、一人の落語家・伊呂八亭破鶴が殺された。
舞台となった密室にいたのはいずれも破鶴に恨みを抱く関係者ばかり。捜査で続々と発覚する新事実。そして、衝撃の真相は―。

出だしから絵画を観るような、格調高い文学的な香りのする文章に引き込まれます。
何気ない描写にも全てに必然性があり、魅力的な謎と人間ドラマが有機的に結びついているのが素晴らしい。

「六花の印」。
明治時代と現代を交互に描いた物語。
夫に呼び戻される名家の妻を駅に出迎えた人力車の車夫と、アメリカから帰国した男を出迎えたお抱え運転手。
車夫と運転手は、彼女と彼が拳銃を隠し持っていることに気づき…。

過去と現在を行き来する流れに最初は戸惑いますが、行き来するたびに次第に増幅される緊張感がスリル満点。
最後には二つの話が合流するのだろうと予想はつきますが、やはり予想の上をいく鮮やかな真相に感服。
夫人が一瞬見せた緋色の布に包まれた拳銃や雪の中をポツポツと舞う提灯行列の光など、幻想的なまでに美しい情景が印象的でした。

巧みなトリックに騙されながらめくるめく美文を味わえるという、なんとも贅沢な時間を過ごすことができました。

(2018年3月読了)
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読むのがすごく遅いけど、小さい頃から本を読むのが大好き。

大好きな作家は、ジョン・アーヴィング、筒井康隆、津原泰水、中上健次、桐野夏生、北村薫、金井美恵子、梨木果歩。

コンプリート中なのは宮部みゆき、恩田陸、松尾由美、三浦しをん、桐野夏生、北村薫。今のところ、多分著作は全部読んでいます。
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