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豚がつづる読書ブログ
深山の桜 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ) 深山の桜 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)
神家 正成

宝島社 2016-03-04

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★★★

南スーダンの自衛隊宿営地で連続する盗難事件を調査するよう命じられた、退官間近の亀尾准陸尉と部下の杉村陸士長。
日本から特別派遣されてきたオネエの警務官・植木一等陸尉も調査に加わるが謎の脅迫状や小銃弾の紛失という事件が次々と起こり、事態は予想のつかない展開となる…。

前半は自衛隊内部の階級や独特の習慣や言葉に引っかかることが多く、読み進めるのに苦労しました。
冗長と思えるほど隊員たちの日常生活や装備などの描写が細かく、それも読みにくい原因かも。
でも、ディティールが描写されることによってリアルな説得力のある世界が形作られ、現在の自衛隊が抱える問題をより明確に浮き彫りにしていて、物語に奥行きを与えていると感じました。
描かれる隊員たちの人間関係も日常もかなり緊張感のある厳しいものですが、未知な世界を知ることができて新鮮でした。

中盤から、オネエ言葉で喋りまくり、物語をガンガンかきまわす植木一尉がかなり目立ってます。
最初は異色すぎて違和感を感じたのですが、物語の展開がハードになるにつれて、彼の存在がオアシスのように感じられ、ホッとするようになりました~。

現行の法律や政治が抱える問題や矛盾、現場の隊員たちの矜持についてもわかりやすく描かれ、改めて考えさせられました。
作者は元自衛官だそうですが、メッセージ性の強い問題提起もちゃんとエンタメに昇華され、完成度の高い作品になっています。

抒情的なラストシーンは美しすぎて…涙腺がゆるんじゃいました。

(2018年7月読了)
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コーヒーが冷めないうちに コーヒーが冷めないうちに
川口俊和

サンマーク出版 2015-12-07

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★★

とある喫茶店。
そこでは、店の片隅の席に座るとコーヒーが冷めるまでの時間、過去に戻ることができるという不思議な都市伝説があり、
噂を聞いた者たちが次々とやって来る――。

泣けると評判だったので読んでみましたが、全く泣けない。
自分の感性がおかしいのかと思いましたが、アマゾンのレビューを読んだら自分と同じ人がたくさんいるので安心しました。

なんか、いろいろ下手です。
タイムリープという設定も活かしきれていないし、文章・情景描写も下手。
登場人物が店内にいるのか店の奥にいるのか、いつの間にか移動していてどこにいるのかさっぱりわからない。
発言しているのがどの人物かもわからない。
どの登場人物にも共感できず、泣きポイントも見当たらない。

優しい空気感の流れるいいお話だと思うのですが、設定と描写がツッコミどころ満載で、陳腐で薄っぺらく感じてしまう。
申し訳ないんですが、私には良さがわかりませんでした…。

(2017年6月読了)
なぎなた (創元推理文庫) なぎなた (創元推理文庫)
倉知 淳

東京創元社 2014-01-29

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★★★

ノンシリーズの作品を集めたミステリ短編集。

猫好きはより楽しめる「眠り猫、眠れ」と「猫と死の街」、倒叙ものの「運命の銀輪」、日常の謎を追う「ナイフの三」など、七つのお話。

取り立てて派手さのない普遍的な雰囲気に安堵しながらページを繰
っていくと、不穏な空気を膨らませて物語を盛り上げていく手腕が素晴らしく、一気に読みました。
ただ、お話の雰囲気作りはうまいのですが、
真実を隠すために偽装を重ねる犯人の話が多く、その偽装があり得なさすぎて本格ミステリとしては腑に落ちない読後感でした。

どの短編もひねった作りなのは、悪への警鐘とか社会への糾弾といった作者の強いメッセージ性が込められているからなのかと思いましたが、そういうわけでもなさそうです。

後書きも蛇足って感じで・・・倉知さんのノリは自分には合わないみたいです。

(2017年2月読了)
日曜の夜は出たくない (創元推理文庫―現代日本推理小説) 日曜の夜は出たくない (創元推理文庫―現代日本推理小説)
倉知 淳

東京創元社 1998-01

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★★★

神出鬼没の探偵・猫丸先輩が活躍する7編のミステリ短編集。

猫丸先輩というキャラ設定が秀逸。
小柄で猫のようなまん丸の目をしていて、30歳過ぎで職業不詳。
好奇心旺盛で人を煙に巻くのが得意、神出鬼没で毎回意外な所から突然現れては鮮やかに謎を解いてくれるのです。
船頭から役者までなんでもこなす変人で、とにかく不思議な人です。

そんな猫丸先輩が関わる事件はバラバラで統一性がなく、短編ごとに作風が違うので、猫丸先輩が出てこなかったら同じシリーズの小説だとは思えないほどです。

昔話の解釈が新鮮な「海に棲む河童」、少女とおじちゃんの穏やかな時間が切ない「約束」、劇中の殺人という心理を上手く使っている「一六三人の目撃者」などなど、バラエティに富んでいるので飽きずに楽しめました。

また、最後にちょっとした趣向が凝らされています。
これが何というか・・・作者によるネタばらしで、メタ構造になっていることが最後にわかるのですが、奇をてらい過ぎていて後味もよくないし、白けるので蛇足だと個人的には思いました。
まあ、たまにはこういう趣向もいいか・・という感じでした。

(2017年1月読了)
アリス殺し アリス殺し
小林 泰三

東京創元社 2013-09-20

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★★★★

大学院生の栗須川亜理は最近、「不思議の国のアリス」の世界の夢ばかり見ることに気付く。
夢の中でハンプティ・ダンプティが塀から落ちて死亡すると、現実の世界でも玉子のような体型の大学研究員が墜落死したという。
夢と現実とのリンクを確信した亜理は、同じことに気付いた同級生の井森と現実世界と夢の両方で犯人探しを開始するが・・・。

ルイス・キャロルの「不思議の国のアリス」をモチーフとした作品。
原作通りの一筋縄ではいかない世界観、登場人物達のナンセンスな言動が巧みに再現されており、キャロルが描く「不思議の国の殺人事件」といった感じでした。

謎は二つあって、連続殺人の真犯人は誰かという謎と、二つの世界のキャラクターのリンクの謎(夢の世界と現実世界の誰が同じ人物なのか)の二つを推理していくわけです。
不思議の世界では出てくるキャラのほとんどが「信頼できない語り手」ばかりでアリバイや証言が適当なので、一見まっとうな推理は不可能に見えます。

でもそんないい加減な世界でも論理的な推理が構築され、一本の細い筋を辿るように真実が浮かび上がってくるというのがまさに目からウロコ、びっくりでした。
容易に真相へたどりつけないように工夫されていますがごく自然な感じで、騙されました。

不思議の世界のかみ合わない冗長な会話にいらいらさせられるのと、目を覆いたくなるおぞましい描写が多い点を除けば、パーフェクトな作品だと思いました。

(2014年4月読了)

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プロフィール
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sis
性別:
非公開
趣味:
読書
自己紹介:
読むのがすごく遅いけど、小さい頃から本を読むのが大好き。

大好きな作家は、ジョン・アーヴィング、筒井康隆、津原泰水、中上健次、桐野夏生、北村薫、金井美恵子、梨木果歩。

コンプリート中なのは宮部みゆき、恩田陸、松尾由美、三浦しをん、桐野夏生、北村薫。今のところ、多分著作は全部読んでいます。
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