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豚がつづる読書ブログ
その女アレックス (文春文庫) その女アレックス (文春文庫)
ピエール ルメートル 橘 明美

文藝春秋 2014-09-02

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★★★★★5!

パリで発生した女性の誘拐事件。
誘拐事件にトラウマを抱える警部・カミーユは捜査に乗り出す。
容疑者が見つかり、解決に向かうと思われた事件は一転し…。

事前に情報を得ずに読みましたが、先入観なく読むことができたのは正解でした。

面白かった…が、陰惨で悲しい話でした。
どんなふうに面白くて悲しかったのか、説明すると全部ネタバレになってしまうようでうまく説明できないのですが。

一章から三章までありますが、アレックスという女性への印象がどんどん変わり、話の着地点が見えないことにかなりハラハラさせられます。
物語は進むごとに二転三転し、心理的な推理ドラマとして目を離せない秀逸な出来栄えとなっています。
やがておぼろげに見えてくるのは、一人の女性の数奇で凄惨な人生。
巧妙に隠された伏線に読み手が気づく時、描かれたものにはまったく別の意味が立ち現われてくるのです。

この構成は、お見事。
細部にまでかなり手のこんだミスリードが施されている上に、最終的には全ての謎に説明が付くようにまとめられていて、ほんとに脱帽。 
(まあ、ミステリとしては読者に対して公正な情報を提供していないというルール違反があると思いますが…。)

また、事件を捜査する刑事たちの掛け合いがたまらなく面白い。
彼らの、距離をおきながらも互いを思いあった言動にはじーんときます。
残虐な事件の中、一服の清涼剤となっていました。

読み終えたらまた戻って、アレックスの最後のダンスをもう一度読みました。
差し出された彼女の慟哭を心に深く刻み、素直に涙が出た。
お話の中の人間ですけど、彼女の人生を、わたしは忘れることができないでしょう。

(2015年12月読了)
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ニンジャスレイヤー ネオサイタマ炎上1 ニンジャスレイヤー ネオサイタマ炎上1
ブラッドレー・ボンド フィリップ・N・モーゼズ 本兌 有

エンターブレイン 2012-09-29

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★★★

twitterに連載されたものをまとめた、サイバーパンクニンジャSF小説。

『「イヤー!」「グワー!」ワザマエ!』
『「ザッケンナコラー!通せオラー」酔ったサラリマンが口汚いヤクザスラングを喚き』
『だがこの地獄絵図は、ネオサイタマのストリートにおいてはありふれすぎたチャメシ・インシデントなのだ』

…という調子で話が進んでいくので、何も考えずに楽しめますw

微妙な間違いだらけの日本語がいかがわし過ぎて、読みはじめは「なんじゃこりゃ…」という感じで読んでいたのですが、最後にはそんなB級感がだんだん癖になってきて、「Wasshoi!」の掛け声が出てくると「ニンジャキター!」と、ゾクゾクワクワクしちゃいました。

短編の順番がシャッフルされていたり、あほらしいガジェットが散らばめられていたりと、至るところ遊び心満載でとにかく面白かったです!

読むと「こんなアホらしいの読んだよ!」と思わず人に伝えたくなる、伝播力の高い小説です。

(2013年6月読了)

二流小説家 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)二流小説家 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)
デイヴィッド・ゴードン 青木千鶴

早川書房 2011-03-10


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★★★★

ハリーは複数のペンネームで、ポルノやSFを書くB級作家。
ある日、死刑囚からのファンレターが届きインタビューできる機会を得る。
やがて死刑囚が起こした猟奇的な事件とそっくりな殺人事件が次々と起き、ハリーは巻き込まれていく・・・。

序盤は冗長な描写が続くのでダラダラ読み進めていたのですが、中盤から物語が大きく動き、饒舌な文章に最後までひっかき回され、一気に読んでしまいました。

弱気なダメ男の主人公や脇を固める女性陣のキャラクターが皆いい味出していて、すごく面白かった!

主人公のハリーはポルノ、SF、ロマンス小説を幾つかのペンネームを使い分けて書いている、タイトル通り「二流小説家」なのですが、この「二流」というガジェットが良く効いています。

ミステリの形を借りているけど、人生の意味について思索を重ねている純文学のような感触で、とても読みごたえがありました。

エログロファンタジーや倒錯世界に耽溺する「健全ではない人々」への暖かい目線も、なんだか嬉しい。
続編があったら、ぜひ読んでみたいです。

(2012年8月読了)

火刑法廷 (ハヤカワ・ミステリ文庫 5-1) 火刑法廷 (ハヤカワ・ミステリ文庫 5-1)
ジョン・ディクスン・カー 小倉 多加志

早川書房 1976-05


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★★★

編集者のエドワードは、社の人気作家の書き下ろし原稿を見て愕然とした。
原稿に添えられた十七世紀の毒殺犯の写真は、妻マリーにそっくりだったのだ。
一方、隣家の老人が急死し、その死の直前、老人の部屋で古風な服装の女性が目撃され壁をすり抜けて消えたという…。

一見非合理に見える謎をロジカルに解き明かすという快感を味あわせておきながら、最後に悪夢のような非合理性の中に読者を落とし込む。
しかもその二つの“解”が両立し、なおかつ破綻していないという奇跡のミステリ。

緊張感あふれる謎解きも面白かったのですが(死体消失と壁抜けのトリックは全然見抜けなかった…)、やはり最後の5ページが衝撃でした。
この最終章があるからこそ、70年以上も読まれ続けているのでしょう。

不朽の名作というのも納得の一作でした。

(2012年11月読了)
犯罪 犯罪
フェルディナント・フォン・シーラッハ 酒寄 進一

東京創元社 2011-06-11
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★★★

刑事弁護士の筆者が実際の事件から発想を得て、印象に残る犯罪を抑えた筆致で描いた連作短編集。

短編集とは思えない、濃い話ばかり。
犯人が悪人・善人にかかわらず犯罪がただの犯罪として淡々と陳列されている。
人が罪を犯すかどうかのボーダーには何があるのか、その無駄のない静かな視点で追っている。

予測不可能な奇抜な発想、オチの切れ味の鋭さは素晴らしい。
バラエティに富んだ犯罪の見せ方やリンゴのガジェットなど、読者を飽きさせず一気に読ませてしまう趣向はすごい。

(2012年6月読了)
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sis
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非公開
趣味:
読書
自己紹介:
読むのがすごく遅いけど、小さい頃から本を読むのが大好き。

大好きな作家は、ジョン・アーヴィング、筒井康隆、津原泰水、中上健次、桐野夏生、北村薫、金井美恵子、梨木果歩。

コンプリート中なのは宮部みゆき、恩田陸、松尾由美、三浦しをん、桐野夏生、北村薫。今のところ、多分著作は全部読んでいます。
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