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豚がつづる読書ブログ
ジェントルマンジェントルマン
山田 詠美

講談社 2011-11-26

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★★★

全ての人に対して優しく、スポーツも勉強もでき、非の打ちどころのない美貌のジェントルマン、漱太郎。
完全無欠の人生を送っているその裏には、人の心と身体を弄ぶ背徳的な犯罪者の顔があった。
夢生はある日漱太郎のそんな一面を知ってしまい、一気に彼の虜になってしまう。

人を愛することによってむきだしになる、人の脆さや狡猾さ。
それらを冷静に明らかにしてゆく手腕に圧倒され、心を揺さぶられました。

どこまでも利己的な悪漢・漱太郎の面目躍如に好奇心をそそられ、グロテスクに膨張する愛情をかかえて身も心も酔いしれる夢生の切実さに共感。

愛に似たぬるま湯を愛と信じて生きる鈍感な漱太郎の妻なんかより、愛する者へ帰依することのできた夢生が、羨ましい。

でも、手垢のついた題材に、以前に比べるとキレのない文章…詠美さんどうしちゃったのかな?ちょっと残念でした。

(2012年12月読了)

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学問 学問
山田 詠美

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★★★★★5つ!

学校では決して学べない学問、「自らの欲望を真摯に追求すること」をテーマとしたお話。

登場人物の4人は、それぞれ人間の原始的欲望(食欲、睡眠欲、支配欲、性欲)に忠実な「愛弟子」である。
主に、主人公の仁美の性欲に焦点を当てて、仲良し4人組の小学生から高校生までが描かれている。

仁美と心太の、男女の関係にコンポートされない関係がすてき。
二人の合間に横たわっているのものは恋愛ではなく、いびつでインモラルで、主従とも違う何か。
互いを拠りどころとし、代替のきかない存在として描かれていて、何だか羨ましいような、哀しいような。

それにしても、茫漠と広がる青春の瞬間を切り取ってみせる筆致の鮮やかさ。
いつもながら、感服しました。

各章には冒頭に登場人物たちの死亡記事が掲載されているのだけど、ラストを読んでから冒頭の章の仁美の死亡記事を読み返してみると、ちょっとした仕掛けにぐっとくる。
最後まで仁美は心太に囚われ、彼の愛弟子であったのだなあ、と切なくなった。

(2011年8月読了)

タイニーストーリーズ タイニーストーリーズ
山田 詠美

文藝春秋 2010-10-28
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★★★★

コミカルな一編やネガティブな感情渦巻く一編もある、テイストのまったく異なる21のお話がつまった短篇のアソート。

詠美さんの生みだすお話は、相も変わらず対人関係のさまざまな形を表現するのが上手。
言葉もじつに精確なので、読んでいてかゆいところに手が届くかのように、読み手の心の鉱脈を掘り当ててくれる。

「LOVE 4 SALE」の、食い詰め者が見いだす愛とお金の関係性にぐっときたり。
「宿り木」は、SMはまさに信頼関係の確認作業だよなあ、と納得。
「予習復讐」の、憎しみに対して勤勉になれない主人公に親しみを感じたり。

中でも印象に残ったのは、湾岸戦争前後のアメリカ軍人との恋愛をスケッチした連作の「GIと遊んだ話」。
死や別れが孕む空気の中で様々な恋のかたちが描かれ、恋の甘さと苦さを教えてくれる。
恋というものに苛立ちながらもずっと救われてきたであろう登場人物達に、共感できる一瞬が、誰でも必ずある筈。

(2012年2月読了)

★★★★★5つ!

恋愛なんて長すぎる人生の暇つぶし。

死が二人をつなぎとめるスパイス、なんて心の貧しい人の阿片だよね。
って思ってたけど、読み進めていくと、死が恋愛のスパイスではなく、恋愛は死生が包括的に含む一要素なんだ、ってわかった。

何よりも大切な人間をその心に刻んだ時、立ち上がってくる感情にうまく対処できないかも、私は。

(2007年5月読了)
★★★★★星5つ!

絶妙な文章で綴られる恋愛小説短編集。
相変わらず巧みな文章にはひきこまれる。

タイトル通り、味わい深い恋の話。
ままならない人生だからこそ、風味がある。

なぜ主人公が肉体労働者ばかりなのかとか、最近の山田詠美はマンガのような話ばかりとか、思うところはあるけど楽しめました。絶佳。

(2006年4月読了)
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sis
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趣味:
読書
自己紹介:
読むのがすごく遅いけど、小さい頃から本を読むのが大好き。

大好きな作家は、ジョン・アーヴィング、筒井康隆、津原泰水、中上健次、桐野夏生、北村薫、金井美恵子、梨木果歩。

コンプリート中なのは宮部みゆき、恩田陸、松尾由美、三浦しをん、桐野夏生、北村薫。今のところ、多分著作は全部読んでいます。
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