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豚がつづる読書ブログ


★★★

実家が讃岐うどん屋で調理師免許を持つ編集者・柳楽尚登は社長から解雇を言い渡され、吉祥寺にある立ち飲み屋で働くことに。

その店の息子であり、うずまき専門の写真家・雨野秋彦は、立ち飲み屋をエスカルゴ料理のレストランにリニューアルしようとしていた。
なりゆきで松阪でエスカルゴ料理修行をすることになった尚登は、伊勢うどん屋の娘に一目ぼれ。
秋彦一家に振り回されながらも、尚登は店を軌道に乗せることができるのか――。

幻想的でとんがった作品をものする津原作品も大好きですが、前身の津原やすみを思い出させてくれるコメディ調も大好物。
この作品は後者に当たり、 敷居が低く気軽に読めます。

真面目で粘り強いけれども、優しく気弱な青年が料理人として成長していくストーリーはザ・王道って感じで、本当に津原作品か?と最初は思いました。
でも、ボケにボケを被せていく漫才のような会話はオフビートでとぼけた独特の雰囲気を形作っていて、いつもの津原作品と同じでした。
しかもたたみかけられていく会話はハイブロウで軽妙洒脱、読んでいてとんでもなく心地よいのです。

魅力的で賑やかなキャラクターたちが次から次へと登場して主人公をブン回していく展開もたまらなく面白いし、雨野一家と尚登が連帯感を持ち疑似家族めいた関係性になっていくのも感涙モノだし、どこを切っても楽しいお話でした。

疑似家族の嘘っぽくなりがちなところを絵空事でないようにリアルに寄せているのも上手く、全体に細かいところまで良く目配りされた印象を受けました。

料理描写が多いので空腹時は辛かった…。
気持ちの上では満腹になれましたが。

(2019年10月読了)
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爛漫たる爛漫: クロニクル・アラウンド・ザ・クロック (新潮文庫)爛漫たる爛漫: クロニクル・アラウンド・ザ・クロック (新潮文庫)
津原 泰水

新潮社 2012-11-01
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★★★

人気ロックバンド"爛漫"のボーカルのニッチが変死し、音楽ライターの娘・くれないが、ニッチの兄の鋭夫とともにその謎を探っていく。

ミステリとしても青春小説としてもライトなタッチで、インパクトに欠ける気がしましたが、作者ならではの一筋縄ではいかない文章と雰囲気を楽しみました。

思いがけず、赤羽根菊子に久しぶりに会えたので嬉しかった。次はゴガツかな。
続篇でのどんでん返しが楽しみです。

(2012年12月読了)

アクアポリスQアクアポリスQ
津原 泰水

朝日新聞社 2005-01-12
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★★★

海上都市アクアポリスを舞台とした近未来SF。
Q市のアクアポリスで育ったタイチは街の存亡を巡る陰謀に巻き込まれ、Jと名乗る謎の女とともに牛鬼、濡女を追う。

同じ世界観・設定を共有した複数作家によるプロジェクト「憑依都市」に連なる物語だそうで、用語や設定の詳細な説明が省かれています。
なので、少し読みにくかったです。

印象のみのイメージ先行型描写が多く、頭の中で点と点をつなぐように補完しながら読み進めていくので、物語の筋を追うのに必死でした。

ハイブロウでトリッキーな文章が織りなす独特の世界観に魅せられましたが、自分の貧困な想像力が恨めしかったです。

(2010年2月読了)

琉璃玉の耳輪琉璃玉の耳輪
津原 泰水 尾崎 翠

河出書房新社 2010-09-10

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★★★★

尾崎翠の未発表シナリオを、津原泰水が遺族の許可を受け小説化した長編。

琉璃玉の耳輪をつけた三姉妹の捜索を依頼された、女探偵・岡田明子。
彼女が手掛かりを追う先々では、変態性欲を持つ男、女掏摸、売笑婦、貴族の放蕩息子、男装の麗人などの多彩な面々がそれぞれの思惑の下に暗躍する。

昭和初期の濃厚な雰囲気の中でめくるめく幻想的な世界が立ちあらわれ、冒険活劇が繰り広げられる。
伝統的な探偵小説の味わいもあり、予断を許さない展開と独特の語り口にはぐいぐい引き込まれます。

物語がアナーキーに転がっていく楽しさが満ち満ちていて、原作を活かしながら小説化する作業は難しいけど楽しかっただろうなあと想像できます。
尾崎翠の脚本を換骨奪胎し、何とか世に送り出してやろうとする著者の気迫が随所に感じられました。

ラストはちょっと力技でしたが、著者が手綱を緩めたような感じの、静かな余韻を堪能できました。

(2011年12月読了)

★★★★★5つ!

零細商店を継いだ女性が、腕利きの職人に助けられながら人形修復店を経営してゆくお話。

人形という少し不気味で神秘的なモチーフに、時折ブラックな笑いが散りばめられた、程よく衒学的な文章が良く合っている。

自己を投影する鏡として、身近な恋の相手として、いろんな思いを重ねられる人形という存在意義に迫りながらも、短くさっぱりとした小品に仕上がっている。
それは、一語一句の著者の巧みな取捨選択によって練り上げられた結果の軽みであり、実はとても密度の濃い文章だと思う。

読んでいるうちに異界へと連れて行ってくれるような独特の世界観が、気持ちいい。

(2010年1月読了)
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プロフィール
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sis
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非公開
趣味:
読書
自己紹介:
読むのがすごく遅いけど、小さい頃から本を読むのが大好き。

大好きな作家は、ジョン・アーヴィング、筒井康隆、津原泰水、中上健次、桐野夏生、北村薫、金井美恵子、梨木果歩。

コンプリート中なのは宮部みゆき、恩田陸、松尾由美、三浦しをん、桐野夏生、北村薫。今のところ、多分著作は全部読んでいます。
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