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傍聞き (双葉文庫) 長岡 弘樹 双葉社 2011-09-15 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
★★★
救急隊員、女性刑事、更正施設の施設長や消防士を主人公とした人情ミステリ短編集。
ちょっと特殊な職業につく人々を描いたお話なのですが、その仕事ならではの真相に至るキーワードが上手に随所にちりばめてあり、人情に絡めながらテンポよく進んでいくのでとても読みやすかったです。
ミステリと言うよりは、ひねりの効いた人間ドラマという感じ。
読後には心の底にほのかにぬくもりが残り、なかなかの佳作に仕上がっていると思いました。
大きな盛り上がりやカタルシスはあまり無いので、重厚な物語の合い間にさらさらと読めてしまいます。
そこらへんが、物足りないと思う方もいるかもしれません。
(2013年4月読了)
七つの海を照らす星 七河 迦南 東京創元社 2008-10 売り上げランキング : 124856 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
★★★★
七不思議が言い伝えられている児童養護施設「七海学園」。
複雑な事情を抱えて学園に入所している子どもたちを巡ってこの七不思議にまつわる事件が起こり、それを職員の北沢春奈がベテラン児童相談員の海王さんの力を借りて、優しく解きほぐしていく。
児童養護施設が舞台なのですが、行政や社会的な問題に迫るような視点は希薄で、あくまでも物語としてのテイストは日常の謎系ミステリ。
もちろん事件の背景には児童虐待などの重い問題が見え隠れしているのですが、穏やかな雰囲気の中、過度な悲観さも無く物語が進行するので読みやすいです。
ミステリとしてはちょこっとご都合主義的でアナグラムに凝りすぎの感はあったけど、複数の糸が最後に一本につながる構成は絶妙でした。
さりげなく置かれた伏線の回収が見事で、遊び心の企みに満ちているので、読んでいてすごく楽しかった。
次回作も楽しみ。
(2012月8月読了)
くちびるに歌を 中田 永一 小学館 2011-11-24 売り上げランキング : 12921 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
★★★
五島列島の中学校合唱部を舞台とした、青春物語。
合唱部員のナズナと人付き合いが苦手なサトルの、二人の視点から、コンクールまでの合唱部員たちの心の動きを描く。
南の島の柔らかな情景描写に織り込まれた、十代の心が抱える居場所の無いよるべなさや将来への漠然とした不安。
作者はそれらを丁寧に掬いあげ、いとおしみながら彼らの日常を描いてゆきます。
巧みなストーリーテリングが、読み手の映像イメージを膨ませてくれます。
思わず中学生の頃を思い返して懐かしくなりました。
ラストでは、皆で声を合わせることで心がつながっていく歌の持つ大きな力が伝わってきて、彼らの歌声が聞こえてくるかのような錯覚を覚えました。
読み終えた後で気持ちが明るくなる、とても素晴らしいお話だったのですが、いかんせん読み手(私)の心がまっすぐでないせいか…、ちょっと気恥ずかしくて、がっつり感動できませんでした。
(2012年5月読了)
九月が永遠に続けば (新潮文庫) 沼田 まほかる 新潮社 2008-01-29 売り上げランキング : 14172 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
★★★
佐和子の一人息子・文彦がゴミを捨てに行ったまま、突然失踪した。
息子の友人や前夫、その妻と娘を訪ねて行方を捜す中、次々と起こる謎の出来事。
人間関係が複雑に絡まりあう、サスペンス長編。
生理的に気持ち悪い話で、読んでる最中、ぞくぞくしっぱなし。
読むに耐えないような描写も多々あり、不愉快な読書時間を提供してくれました。
歪んだ登場人物たちや緊迫したシーンの多い中、隣人の服部はズレまくった言動とこてこての関西弁で、唯一、出てくるたびにほっとしました。
彼の存在のおかげで、おぞましい場面と日常のコントラストも強くなり、立体的な効果を生んでいます。
文章力も構成力も高く、吸引力のある物語。
ぐいぐいストーリーに取りこまれあっという間に読めて面白かったけど…読み返すことは無いと思います。
(2012年2月読了)
ユリゴコロ 沼田 まほかる 双葉社 2011-04-02 売り上げランキング : 3421 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
★★★
亮介が実家で偶然見つけた、誰が書いたのか分からない謎の手記。
それは殺人に取り憑かれた人間の告白文だった。
書かれていることは真実なのか、これを書いたのは誰なのか。
やがて明かされた真実は、亮介の人生を一変させるものだった―。
物語の前半部分は、狂気に満ちたおぞましい殺人の告白がつぶさに綴られていく。
後半は真実を知った亮介の現在と手記が交差し、スリリングな展開の末、衝撃の真相に導かれます。
平穏な日常が、家族の病気や不吉なノートを見つけたことによってガラガラと音をたてて崩壊していく怖さがリアル。
物語の緩急のつけ具合も絶妙に上手く、人物造形にもっと説得力が欲しかったなと思うものの、そんな細かいところを気にする暇もなくぐいぐいと一気に読了してしまいました。
先の展開もすぐにわかってしまいミステリとしてのサプライズも無くスラスラ読めてしまうのですが、耳障りのいい「ユリゴコロ」の語感や不穏な雰囲気があいまって、妙に心に残るお話でした。
(2012年1月読了)
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大好きな作家は、ジョン・アーヴィング、筒井康隆、津原泰水、中上健次、桐野夏生、北村薫、金井美恵子、梨木果歩。
コンプリート中なのは宮部みゆき、恩田陸、松尾由美、三浦しをん、桐野夏生、北村薫。今のところ、多分著作は全部読んでいます。