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豚がつづる読書ブログ
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薔薇を拒む (講談社文庫) 薔薇を拒む (講談社文庫)
近藤 史恵

講談社 2014-05-15

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★★★

両親を亡くし、施設で暮らす17歳の博人。
人里離れた洋館で住み込みで3年間働けば大学の学費と生活費を負担してくれるという仕事に惹かれ、同い年の樋野とともに屋敷で博人は働き始める。
屋敷の娘・小夜に博人は恋心を抱き、穏やかな生活を送るが、殺人事件が起こる。

なぜ暗い過去を持つ少年二人が集められたのか、屋敷の人々が持つ秘密は何なのか、物語が進むごとに少しずつ明かされていきます。
非日常の世界に漂う不穏な空気はとってもスリリングで、ページをめくる手が止まりません。

ミステリーとしてはちょっとありがち。
謎の論理的帰着に納得するというよりも、物語の退廃的な雰囲気にときめきながら読むという方向で楽しみました。

むしろ理詰めの思考はいらないかも。
それは物語の優美な雰囲気を遠ざけてしまうかもしれません。

(2016年11月読了)
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ほおずき地獄―猿若町捕物帳 (光文社時代小説文庫) ほおずき地獄―猿若町捕物帳 (光文社時代小説文庫)
近藤 史恵

光文社 2009-06-11

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★★★★

猿若町捕物帳シリーズ第2弾。
幽霊騒ぎに乗じて茶屋の主人夫婦が殺された。下手人は夫婦を恨んでいる幽霊だと噂が立つ。
幽霊が出た後には必ず縮緬細工のほおずきが落ちているという。
女性が苦手な“二枚目同心”玉島千蔭はじゃじゃ馬娘との縁談話に悩む傍ら、事件の解決に乗り出すが…。

人の昏い部分に光を当てた、心を抉ってくる話ですが、とても良かったです。

前作同様、通常の千蔭の捜査とお玉という少女のモノローグの二つの物語が同時並行で進み、それらがひとつに融合した時に見えてくる悲しい真実に胸が締め付けられました。

お玉の一途に慕う想いの向かう先に恋の成就はなく、『安珍清姫』の清姫の心境になぞらえたお玉の胸中を思うとやるせなく、悲しくなってきます。

過酷な運命に翻弄されながらも前を向いて生き抜く彼女の姿には女性の強さを感じましたが、そうせざるを得なかった彼女の状況は残酷すぎて、暗澹とした気持ちになりました。

それしにてもちょいちょい挟まれる千蔭の縁談話のエピソード、面白かったです。
この縁談話のオチにはいい意味で膝がガクッとしました・・・。

(2016年11月読了)
巴之丞鹿の子―猿若町捕物帳 (光文社時代小説文庫) 巴之丞鹿の子―猿若町捕物帳 (光文社時代小説文庫)
近藤 史恵

光文社 2008-12-09

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★★★

江戸で若い娘だけを狙った連続殺人が起きるが、被害者は皆、人気の女形・巴之丞の名を冠した鹿の子の帯締めを身に着けていた。
同心・玉島千陰はその帯締めを縁に巴之丞と出会う。
下手人の狙いは一体何なのか。調べが進むなか新たな被害者が―。

ミステリーなのですが、キャラクター設定が個性的で際立っていて読みやすかったです。
同心の玉島千蔭は男前なのに遊びに興味のないカタブツで、それとは対照的に歌舞伎役者の巴之丞や花魁の梅が枝は妖艶で謎の多い人物として配置されています。
また、遊び人で砕けた性格の千蔭の父や、生真面目で不器用な部下の八十吉など、脇を固めるキャラも魅力的。
シリーズ第一作目ですが、どの人物もキャラがしっかり立ち上がっていると思いました。

千蔭が追う事件の流れが本筋ですが、その合間に、お袖という町娘のエピソードが盛り込まれています。
最終的にお袖の話と事件が繋がり鮮やかな解決に導くという手法で、ミステリーとしては常道なのですが、作者特有の湿気を含んだ淫靡な雰囲気や女性のたくましさが読んでいて心地良かったです。

背徳的だけれども狂おしいほどに一途な愛を描いていて、心が揺らされました。
真っ当すぎる千蔭がそんな事件に関わるのが、皮肉めいていてこれまた面白かったです。

(2016年10月読了)

天使はモップを持って (文春文庫) 天使はモップを持って (文春文庫)
近藤 史恵

文藝春秋 2006-06

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★★★★

オペレータールームに配属された新入社員の梶本大介。
この会社には一風変わったキリコという女性の清掃作業員がいた。
ミニスカートや、ピアスをいくつもつけた派手な外見。
それでいて彼女の掃除後には塵一つ残らないという一流の腕。
彼女は社内で起きた様々な謎を次々と解決していくが・・・。

ホームズ役のキリコとワトソン役の大介が、オフィスで起こる様々な事件をキリコの職業柄身についた洞察力と情報収集力で次々と解決していくという、テンポの良い流れに乗ってさくさく読めちゃうミステリ短編集です

謎も小粒で一見ライトなのですが、その動機や背景にはシビアで重いものが隠されています。
女性社員活躍を阻む保守的な会社組織、不倫、セクハラ疑惑、摂食障害、マルチ商法などなど、見本市のごとく女性社員を巡るありとあらゆるトラブルが陳列されています。

女性が働く上でのトラブルが事件のカギとなっているのですが、キリコを通してあらわになる作者の女性たちへの視線は優しく、さりげないエールを贈ってくれているようで温かい気持ちになれました。

やはり会社組織って未だに男性中心の論理で動いているので、女性はその中で働いていると
思うようにいかないことも多く忸怩たる思いを抱えたり諦めも感じることも多いんですよね。
すごくわかります。
その上、女性同士の僻み嫉みにさらされ、ままならない状況につき動かされて事件を起こしてしまったり歪みを他人にぶつけてしまうこともあるかもしれない。そんな気持ちもわかります。

でも作者は、単純明快な解決には至らないものの僅かでも希望の道筋を登場人物たちに用意してくれるのです。
受け止めてくれる安心感をもって読むことができました。

(2016年10月読了)
エデン (新潮文庫) エデン (新潮文庫)
近藤 史恵

新潮社 2012-12-24

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★★★

白石誓はたった一人の日本人選手として、世界最高峰のレース、ツール・ド・フランスの舞台に立っていた。
しかし所属チームのスポンサー撤退が決まり、チーム内に不穏な空気が流れる。
監督が選手たちにある工作を持ち掛ける中、レース上でも事件が起こり・・・。

自転車ロードレースの世界を描いた「サクリファイス」の続編。

7年前に読んだ「サクリファイス」の内容を忘れてしまったので一応読み返しましたが、正解でした。
続編ですが独立したお話なので前作を読まなくても話についていけますが、主人公の思いや過去を踏まえた上での今作なので、やはり前作を読んだほうが楽しめましたね。

今回はミステリというよりも、読者もロードレースをそのまま体感できるスポーツ小説となっています。
ツール・ド・フランスという大舞台で実況中継のように主人公のチカがどういう戦略で走っていくのか、ロードレース選手としての今後の道を模索しどのような覚悟を決めるのか、詳細に語られていく展開となっています。

前作でも思いましたが、ロードレースって奥深い競技で、一筋縄ではないレース展開が本当に興味深い。
さまざまな戦略・駆け引きや暗黙のルールがあり、敵同士でも利害が一致したら共同戦線を張ることもある。
レース外でも、チーム存続のための裏取引やドーピング問題が常に横たわっており、興業スポーツの内幕というレースとは違った様相を見せてくれます。
ただ速さを競うだけではない面白さがあり、知れば知るほど惹かれるスポーツです。

アシストに徹するチカが最終的に選んだ決断。
迷いが消えた彼の成長には大いに拍手を送り、見守っていきたいと思わせる迫力がありました。

(2016年7月読了)
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プロフィール
HN:
sis
性別:
非公開
趣味:
読書
自己紹介:
読むのがすごく遅いけど、小さい頃から本を読むのが大好き。

大好きな作家は、ジョン・アーヴィング、筒井康隆、津原泰水、中上健次、桐野夏生、北村薫、金井美恵子、梨木果歩。

コンプリート中なのは宮部みゆき、恩田陸、松尾由美、三浦しをん、桐野夏生、北村薫。今のところ、多分著作は全部読んでいます。
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