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豚がつづる読書ブログ
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★★★

お洒落で派手な服でビル掃除をするプロの掃除人キリコが、仕事先で出会う人々のトラブルを解決していくシリーズ
第二弾。

さまざまな職場で働く人を主役に据えた連作短編集。
毎回、キリコの深い洞察力によって事件があざやかに解決されるのですが、それだけではなく、事件に関わる人々の悩みもすっきりさせてくれます。
読んでいるこっちまで気持ちよくなれるし、彼女の仕事に対するプライドやまっすぐな強い意志も心地いいです。
背筋が伸びて、明日も仕事頑張ろう、という気持ちにさせてくれました。

最後の一編はキリコとその家族のお話。
他の短編では隠れていたキリコの心情が垣間見え、彼女が弱い部分も持った一人の人間として立ち上がってきます。
身近な等身大の女性としてたまらなく魅力的でますますファンになっちゃう。

読後感もいいし、すごく好きな短編ですが、仕事を抱え込んじゃうキリコが心配。
介護、仕事、家事に親戚の無理解も加わりキリコはかなり辛い状況。
現実ではよくある話かもしれませんが、なんで夫の祖母の介護を他人である妻がやらなくちゃいけないんだろう。
祖母の息子や娘がやるべきなんじゃないのかなー、とモヤモヤしてしまい、爽やかなラストをいまいち楽しめませんでした。

(2017年7月読了)
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土蛍: 猿若町捕物帳 (光文社時代小説文庫) 土蛍: 猿若町捕物帳 (光文社時代小説文庫)
近藤 史恵

光文社 2016-03-11

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★★★

猿若町捕物帳シリーズ5作目。

長屋の大家に店子の諍いを仲裁して欲しいと千蔭が頼まれていた矢先、大家が殺されてしまうという「むじな菊」、髷を切られるという事件が続発する「だんまり」、中村座の人気役者の弟子が自殺し、そして同時に梅が枝の身請け話が持ち上がるという「土蛍」、人生貧乏くじばかりだった男が頼まれた富くじを買った後死んでしまった謎を解く「はずれくじ」の4編を収録。

くどくどとした描写は全くないのに、人物のさりげない言動や所作から行間を読ませる手法で、その者の特徴や性格を見事に表現するという筆力。
その上、テンポ良く動きのある場面と静謐なそれが物語に緩急のリズムを作っているところも読みやすさを助長しています。

今までのシリーズ同様、事件の裏に垣間見える人間の業の深さにはやるせなくなります。
千蔭にとうとう年の離れた妹ができるのですが、赤ちゃんの無垢な様子が事件と対比していて、人間の欲望の果てしなさがより際立っていると思いました。

ほんとに、必要以上に求める人の飽くなき欲望っていらぬ苦しみを招く悪の元だなーとしみじみ考えさせられました。
いっとき欲望が満たされて満足しても、すぐに足りなくなってまた欲求が止められなくなるという人間の本能的なサガが怖くなります。
足るを知るって大事だよな・・・と読後に痛感しました。

(2017年2月読了)
ねむりねずみ (創元推理文庫) ねむりねずみ (創元推理文庫)
近藤 史恵

東京創元社 2000-11

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★★★

突然、ものの名前がわからないという記憶障害に冒された歌舞伎役者・中村銀弥。
悩む夫をいたわりながらも妻の一子は夫と気持ちを通じ合わせることができず、別の男性との逢瀬に通う。
一方、探偵の今泉と役者の瀬川小菊は歌舞伎役者の婚約者の謎の死を追う。
二つの謎が交差する時、美しくも壮絶な真相が明らかとなる――。

歌舞伎の世界を題材にしたミステリ。

歌舞伎作品の筋書きや所作の意味については、ストーリーとうまく絡めて丁寧に説明されるのでこの世界に詳しくなくても問題なく読めます。

歌舞伎の死と闇の気配が濃厚に浮かび上がってくるようなあやうい雰囲気に酔いつつ、繊細な登場人物の卓越した心理描写に惑わされました。

芝居という虚構と現実の奇妙な二重写しに目を眩まされましたが、役者の舞台にかける執念や芝居の中でしか生きられない役者の業が凄まじく、心を撃たれました。

トリックは納得できないし、犯人を絞り込んでいく過程での推理の醍醐味が味わえないのでミステリとしては今一つなのですが、不可思議な人間模様を楽しむには絶品のお話でした。

(2015年2月読了)
寒椿ゆれる―猿若町捕物帳 (光文社時代小説文庫) 寒椿ゆれる―猿若町捕物帳 (光文社時代小説文庫)
近藤 史恵

光文社 2011-03-10

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★★★★

猿若町捕物帳シリーズ4作目。

猪鍋屋で食中毒事件が起こり、その後死人まで出てしまうという「猪鍋」、巴之丞が娘に襲われ犯人を捜す「清姫」、北町の堅物同心・大石が金貸を襲った一味の仲間と疑われる「寒椿」という3編を収録した連作短編集。

男前だが女心に疎い堅物の同心玉島千蔭、人気女形役者の巴之丞、聡明できっぷのいい吉原の花魁・梅が枝、千蔭の義母お駒などなど、前作までに登場した人が今作でも総動員し、それぞれ活躍しています。
どのキャラも脇とはいえないくらい存在感があふれていて、かつ物語も高いレベルで安定しているので安心して読み進めることができました。

どの短編も事件が起きてその謎を解く、という流れなのですが、横軸に千陰の見合い話が配置されており、こちらの縁談もどう転がっていくのかとても気になりながら読みました。

今度の縁談相手は、合理的すぎる風変わりな性格のため婚期を逸した女性・おろく。
変わっているけど素直で聡明なおろくと千蔭はお似合いのような気がして、ほほえましい。
応援したくなるけど梅が枝との関係は・・・と、読者としてはやきもきしちゃいました。

出色の出来は、最後の短編「寒椿」。
ただ一度会い、少しの言葉を交わしただけなのに相手を忘れられず、想い続ける。
恋とか愛などの言葉を使わず、簡潔な描写で登場人物の心情を表現してみせる作者の力量は見事。

おろくの想いの切なさ、千蔭の温かさが心に残る味わい深いお話でした。

(2016年12月読了)
にわか大根―猿若町捕物帳 (光文社時代小説文庫) にわか大根―猿若町捕物帳 (光文社時代小説文庫)
近藤 史恵

光文社 2008-03-12

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★★★★


猿若町捕物帳シリーズ3作目。

前作までの長編とは違い、今回は「吉原雀」「にわか大根」「片陰」の3編収録の中編集。

どの話もどこか心に引っかかりが残り、苦い味わいがたまらないです。
吉原の花魁、女形の役者といった一見華やかな世界で生きる人々が見せる哀切や鬱屈の凄みに魅せられます。
謎の背景にある人間関係を丁寧に明らかにしていくことで見えてくる悲しい真実に、心を揺さぶられました。

どのお話も良かったのですが、最初のお話の「吉原雀」が好みでした。
吉原で3人の遊女が相次いで死に、連続の死に不審を抱いた同心の千蔭は死因も異なるそれに関連性を見出すことはできず。
しかし、彼女たちを結ぶ「雀」というキーワードにやがて千蔭は気がつき、真相にたどりつく…というお話です。

吉原という特殊で閉鎖的な空間でしか起こりえない真相の意外性には驚かされます。
読み手をミスリーディングに導く手腕もさることながら、男性優位の社会に生きる現代の女性にも通じる「籠の中の鳥」というままならぬ悩みを描いており、うまく現代を照射していると思いました。
こうした点は前作の「ほおずき地獄」にも見られたので、今後も複雑な縒り合された謎解きを楽しむとともに、様々な事情を抱えた女性キャラクターたちの心情の変遷を描いてくれるものと思われます。
わたしは女性なのでそういう展開が大好物なのです。次巻も楽しみです。

それにしても、カタブツの千蔭が新たな女性キャラに毎度振り回されておろおろしてるのは読んでて楽しいですね~。
次巻でも新たな恋?のお相手が現れるんでしょうか。。

(2016年11月読了)
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プロフィール
HN:
sis
性別:
非公開
趣味:
読書
自己紹介:
読むのがすごく遅いけど、小さい頃から本を読むのが大好き。

大好きな作家は、ジョン・アーヴィング、筒井康隆、津原泰水、中上健次、桐野夏生、北村薫、金井美恵子、梨木果歩。

コンプリート中なのは宮部みゆき、恩田陸、松尾由美、三浦しをん、桐野夏生、北村薫。今のところ、多分著作は全部読んでいます。
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