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豚がつづる読書ブログ
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邂逅の森 (文春文庫)邂逅の森 (文春文庫)
熊谷 達也

文藝春秋 2006-12
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★★★★

大正の初め、東北の寒村に生まれたマタギの富治。
身分違いの恋が原因で故郷を追われ、その後鉱山で働くものの山と狩猟への思いを断ち切れず、再びマタギとして生きようとするのだが―。

久しぶりに出会った、重厚で力強い、圧巻のストーリー。
ごりごりの男の世界を堪能しました。

全ての音を吸いつくす一面の銀世界、獲物をひたすら待ち続ける時の息づかい、熊と対峙した時の全身の緊張感…まるで自分もそこにいるかのような臨場感。
当時のマタギの生活や狩りをよく調べて克明に描いており、自分の現実の人生とは違う人生を疑似体験できるという小説の醍醐味を存分に味わうことができました。

自然界の掟と卑小な人間の営みまでも超克し、最後の熊との一騎打ちに至るまでの波乱に満ちた富治の人生に、自然と涙が出てしまいます。

こんな、自在に物語られる筆さばきとお話の強度とを兼ね備えた小説ってなかなか無いと思う。
今まで読まなかったことをほんと、後悔。

(2012年6月読了)

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悪の教典 上 悪の教典 上
貴志 祐介

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悪の教典 下 悪の教典 下
貴志 祐介

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★★★

高校教師の蓮見は、学校が抱えるトラブルを手際よく解決し、外見も良く、魅力的な授業と態度で多くの生徒から慕われている。
しかし、人望の厚い彼の裏の顔は、共感能力がゼロという生まれながらのサイコパスだった。
蓮実は教師や生徒を意のままに操り、学校を支配することで満足を得ていたが、度重なる事件に疑いの目を向ける者も現れはじめ…。

他人を利用し、自分に都合の悪い邪魔者を排除するために次から次へと殺人を犯してゆく。
上巻では、そんな蓮見の姿に共感はできずとも、どこか爽快感をおぼえている自分に気付き、後ろめたいやら楽しいやら。
殺人方法も用意周到な手口で、読んでいて面白かった。

でも、下巻では一転、一つの殺人によって生じた綻びを繕うため、というあまりにも単純な動機で、善人の擬態をかなぐり捨てジェノサイドに走る蓮見。
蓮見も作者も、チマチマ殺してゆくのが面倒くさくなったのか?というくらい雑な展開にびっくり。
モラルのない冷血漢なのにどこか人間くさい蓮見の人間像も、なんだか小物臭くてちょっと萎えてしまった。
これだけの事件を起こすんだから、往生際の良い、魅力的な巨悪でいてほしかったな。

とはいえ、目を覆いたくなるおぞましい描写や、多数のキャラクターを動かす手腕、たたみかけるような終盤の疾走感はすごかった。
読み返したくはないけど…、続編があったら読んでみたい。

(2011年8月読了)
ふがいない僕は空を見た ふがいない僕は空を見た
窪 美澄

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★★★★

高校生の斉藤卓巳は、主婦とのコスプレセックスに夢中。
ずっと好きだったクラスメイトに告白されたのに、頭の中は不倫相手のことで頭がいっぱい。
章立てごとに視点が変わり、不妊症の主婦、同級生の友達、助産院を経営する母など、卓巳を中心に展開される連作短編集。

最初の短編はどうってことのないありふれた話で、「この本、ハズレかな…」と思ったけど、読み進めていくとあれよあれよという間に登場人物の気持ちに入りこんでしまい、最後の二篇には目頭が熱くなってしまった。

鬱屈とした閉塞感やままならぬ人間関係に悩み、もがき苦しむさまを丁寧に描いている。
主要人物のすべてが、それぞれに愛情を抱えて必死に生きているその姿に、心が締め付けられた。

人と関わるということは、自分の価値観が崩されたり、不安と孤独感に苛まされたりする。
それはつらくて残酷だけど、でも、こんなにも美しくてすばらしい。

青春の眩しさにも、それを見守り支える立場の喜びや痛みにも、どちらも感じ入ることができるのは、歳を重ねた者だけの特権だなあ。

大人になったほうが、より楽しめる一冊でした。

(2012年2月読了)
廃用身 (幻冬舎文庫) 廃用身 (幻冬舎文庫)
久坂部 羊

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★★★

高齢者の回復の見込みのない手足を切断し、介護者・老人双方の負担の軽減を図る「Aケア」。
この画期的な新医療を思いついた漆原医師は、患者たちの同意を得て次々に実践するが、かぎつけたマスコミがスキャンダラスに報道する。
はたしてAケアは過酷な介護現場を救う画期的な医療なのか。

現在の介護医療の抱える問題を鋭くえぐった衝撃作。

中盤以降の怒濤の展開には驚きの連続で、のめりこむようにして読んだ。
あまりにリアルな描写は説得力があり、ノンフィクションの体裁をとっているので本当にあったことだと勘違いしたほど。

悪趣味なAケアは倫理的に問題があると思うけど、読み進めていくうちに何が正しいと言えるのかわからなくなってくる。

人間を人間たらしめているものとは何なのか、将来必ず直面する介護問題について、強く考えさせられる。

(2011年6月読了)
★★★★

突如現れ、地球への侵攻を開始した謎の地球外異星体ジャム。
戦闘機「雪風」とともに、孤独な戦いを続ける特殊部隊所属の深井零。
彼の任務とは、味方を犠牲にしてでも敵の情報を持ち帰るという非人間的なものだった。

機械と人間の相克をテーマとしたSF作品。
人間が機械から必要とされなくなったらどうなるのか?と考えさせられます。

空戦シーンは専門用語ばかりで何が起こっているのかさっぱり理解できません…。
幼稚な感想ですが…なんだかよくわかんないけど、とにかくカッコいいです。

(2011年5月読了)
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プロフィール
HN:
sis
性別:
非公開
趣味:
読書
自己紹介:
読むのがすごく遅いけど、小さい頃から本を読むのが大好き。

大好きな作家は、ジョン・アーヴィング、筒井康隆、津原泰水、中上健次、桐野夏生、北村薫、金井美恵子、梨木果歩。

コンプリート中なのは宮部みゆき、恩田陸、松尾由美、三浦しをん、桐野夏生、北村薫。今のところ、多分著作は全部読んでいます。
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