豚がつづる読書ブログ
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★★★★
女名前を許され、7代目店主として江戸に出店した幸。
帯の巻き方も着物の柄の好みも、上方とは違う江戸のやり方に幸たちはとまどう。
しかし、「帯結び指南」という新しい試みをはじめたり、伝手をたどって歌舞伎役者の弟子の稽古着を仕立てたりと、少しずつ商いを軌道に乗せていくが…。
とうとう江戸に進出したものの、常識も考え方もまるで違う江戸での商いは順風満帆というわけには行かず、いろいろ試行錯誤していく幸たち。
知恵を絞って商いの工夫をするのはもちろんのこと、ひとつひとつの小さな商いも疎かにせず誠意を持って対応していく中で、その誠意が次の大きな商売につながる様子がじっくりと描かれていきます。
後継者問題や、五代目惣次の影が再び登場したりと、不穏な空気がちょっと姿を見せていますが、終盤、新しい挑戦が大きな波に乗りそうなところで次巻へと続く展開になります。
今回、何度も目頭が熱くなりました~。
糸から布を織り、型付け、染めなどの途方もない工程を経て一つの着物が作られること、そしてそれに関わる職人たちの矜持が語られ、その凄みには鳥肌が立ちました。
そして、智蔵が引き寄せてくれた富五郎との縁…。
死んでもなお、縁を繋いでくれて幸を支えている智蔵。
他人の心にとどまり続けているうちは、肉体は滅びても生きてるのと一緒ですよね。
そしてそして、個人的に大好きなのは女衆仲間として苦楽をともにしたお竹どんが、幸の片腕として成長していく姿です。
「一生、鍋の底を磨いて過ごす」というただの商家の女衆だったお竹が、帯結び講座で中心となって動いたり、商いのアイディアを出す手伝いをしたりと、きちんとビジネスの前面に立って頑張ってる姿はとっても小気味いい。
幸との信頼関係も読んでて楽しいし、これからの成長が楽しみです。
(2020年7月読了)
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★★★
病で家族を失った幸は大坂天満の呉服商の奉公人として働くようになり、やがて店主の女房として店を支えていくようになった。
しかし江戸進出へ準備を進める中、運命に翻弄されるかのようにまたしても幸は夫を失う。
大坂では「女名前禁止」の掟があり、幸たちは後継問題の対処に思案する。
はたして幸たちは江戸へ店を出すことができるのか―。
一年ぶりの新刊だったので、前巻の衝撃のラストについてすっかり忘れてました…。
このシリーズのジェットコースター展開には慣れてましたが、いやいや、トラブル起こりすぎですって、この店。
次から次へと難題が降りかかってきて、もし自分が主人公だったら精神が振り切れそうになると思います。
まあ、問題が起こらないと話が進まないのですが…。
幸は、夫を失っても悲しみに浸ることもできず、目の前のやるべきことを淡々とこなしていきます。
逆に言うと、あまりのショックに感情が麻痺して茫然自失状態なのかもしれません。
前巻の感想で、幸のことを「ビジネスサイボーグみたいで共感できない」って書いちゃったけど、幸は目の前のことを片付けることで精一杯で、感情を露わにする余裕も時間も無いのかも。
そう思うと、幸が不憫でたまらないですね…。
商売という男社会で生き抜いていくにはあまりにも過酷すぎます。
今も昔も、女性の運命は結婚という変数によって大きく左右されるんですねー。
なんか切ないですが、そんなことにもめげず前進していく幸の姿は頼もしいやら清々しいやら。
今巻では、商売上の工夫(マーケ戦略)のエピソードが少なかったので商売の醍醐味は感じられず少し残念。
商慣習も人の気質も異なる江戸で、幸がどのように「買うての幸い、売っての幸せ」の信条を実現させていくのか、次はどんな試練が待ち受けているのか、一筋縄ではいかない展開に期待大です。
次巻も楽しみ~。
(2019年9月読了)
あきない世傳 金と銀(五) 転流篇 (時代小説文庫) 髙田郁 角川春樹事務所 2018-02-14 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
★★★
大坂天満の呉服商五鈴屋の女衆から店主の女房となった幸は、とうとう三男の智蔵に嫁すことになった。
自身よりも大店の桔梗屋を買収し、新しい支店をうまく回すことに腐心する幸。
だが、そんな幸たちの前に新たな試練が待ち受けていた。
またもや難題が降りかかり、解決しようと幸は知恵を凝らしていきます。
またもや難題が降りかかり、解決しようと幸は知恵を凝らしていきます。
帯地と着物のセット販売やら、歌舞伎座の興業にからめて売り込むマーケティング戦略やら、現代では当たり前のやり方でも当時としては画期的なんでしょうねー。
賢くて美人で商才もある幸ですが、商いに邁進するサイボーグのようであまり共感できません。
賢くて美人で商才もある幸ですが、商いに邁進するサイボーグのようであまり共感できません。
前巻の感想で、「心情が説明されないので幸に共感しにくい」と書いたのですが、今巻の作中でも妹の結から「姉さんは心が無い」と批判されてしまいます。
結が読者の声を代弁してくれた、と思ったのもつかの間、幸のことを周囲がフォローしてくれます。
まあ、人間味あふれる幸のエピソードもたまに差しはさまれるので読むのが辛いほどではないのですが…。
前に進んでも進んでもハードルが待ち構えている展開がパターン化してきてちょっと飽きてきました。
前に進んでも進んでもハードルが待ち構えている展開がパターン化してきてちょっと飽きてきました。
あからさまに伏線が張ってあるので先の展開が読めてしまい白けます。
次巻では女でも店主となれる江戸にとうとう出るのかな。
次巻では女でも店主となれる江戸にとうとう出るのかな。
(2018年7月読了)
あきない世傳 金と銀(四) 貫流篇 (時代小説文庫) 高田郁 角川春樹事務所 2017-08-09 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
★★★
シリーズ第四弾。
天満呉服商の五鈴屋の女中奉公をしていた幸は商才の片鱗を認められ、四代目徳兵衛の妻となったが夫は不慮の事故で亡くなる。
その後、弟の惣次に嫁したが、徐々に幸の商才を疎むようになった惣次はある事件をきっかけに著しく誇りを傷つけられ、出奔してしまう。
二度と戻らないという惣次の決意を知ったお家さんの富久は、意外な決断を下すが…。
理解ある夫を得て、とうとう幸は自らビジネスアイディアを次々と実行していきます。
モノが売れない当時の江戸時代、知恵を絞って商売の戦国時代を渡っていく武将の如き幸の姿はとっても頼もしい。
委託販売による販路拡大、ノベルティ配布などの効果的な宣伝方法、M&Aなどなど、現代と同じような商法を展開していきます。
それだけでは飽き足らず、新しいビジネスモデルの模索まで始めちゃって、幸はどこまでいくの?とドキドキしちゃいますね。
最終的にはビジネス構造改革でも成し遂げるんでしょうか・・・。
このお話はビジネスについて多角的に学べるのですが、組織やマネージメントに関しても今回は興味深かったです。
次男の惣次は有能で、非常に鋭い経営センスを持っているのですが、人の使い方が下手。
賢すぎるがゆえに自分で何でもできてしまうから、他の人がバカに見えてしまうんですよね。
だから他人の意見も取り入れず、無駄に他人を傷つけ、部下や取引先と軋轢ができてしまう。
有能なプレイヤーだけど有能なマネージャーではない、というのは今も良く見る光景ですよね。
まあ、ビジネス観点から眺めると面白いのですが、1巻からずっと、ストーリー自体にいまいち面白みを感じません。
前作の「みをつくし~」は面白かったのになんでかな?と考えてみたのですが、多分、主人公の幸の心情がはっきり描かれないので共感しにくいのだと思います。
幸は情よりも知的好奇心を満たすことに重きを置いているように見えます。
商いに興趣を感じている彼女にとっては、店の商売を存続させることが一番なんですね。
もちろんこの時代の彼女の立場では当然のふるまいなのですが、現代の恋愛小説に慣れた読者にとっては淡白に見えちゃうんだと思います。
今回のお話でも、幼いころ好意を持った智蔵ととうとう一緒になれるという、少女漫画だったら最高に盛り上がる場面でも幸の心は平静です。
父を亡くしたことで下女奉公しなくてはならなくなり、兄弟と三度も結婚させられる。
そんな運命を受け入れざるを得ない彼女には、もはや静かな諦観を持って全てを受け入れるしか術がないのでしょう。
現代の感覚で「淡白でつまんない」と判断するのは間違っているかもしれませんが、小説なのでもっと心情とストーリーが絡み合って盛り上がる展開を作ってほしいです…。
(2018年2月読了)
あきない世傳 金と銀〈3〉奔流篇 (時代小説文庫) 髙田 郁 角川春樹事務所 2017-02-14 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
★★★
大坂天満の呉服商「五鈴屋」に女衆として奉公する幸はその聡明さを買われ、店主徳兵衛の後添いとなるが不慮の事故で夫を失う。
四代目の弟の惣次は「幸を娶ることを条件に、五代目を継ぐ」と宣言。
果たして幸はどのような運命を選び取っていくのか。
前作から怒涛の展開で物語は進み、これからどうなるんだろう、と気をもみながら読みました。
幸の美貌と商才に惚れこむ惣次は、幸の結婚相手としても商売のパートナーとしてもこの上ない相手だと思いましたが、途中から暗雲たちこめる展開に。
自分を上回る妻の才能に嫉妬する夫・惣次の姿には既視感あふれるものを感じました。
こういう器の小さい男は現代にもいっぱいいますよね~。
会社で仕事のできる女性に嫉妬して、女性の足を引っ張る男性を見たことがあります。
現代にも通じる男女のパワーバランスに、大いに頷きました。
ただ、毎回ジェットコースター展開にはわくわくさせられるのですが、主人公の幸の商才と美貌が毎回称賛され強調される展開には少し飽きてきました。
前作『みをつくし料理帖』の澪は逆境にもめげず毎回努力している様子が語られたので、都合の良い展開でもあまり疑問を持たなかったのですが、『あきない世傳』の幸は境遇に流されるばかりでまだ本人の努力が見えないので出来すぎな展開にもやもやしちゃいます。
でもこれから幸の本領が発揮されると思うので!また次巻を楽しみにしてます。
(2017年9月読了)
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自己紹介:
読むのがすごく遅いけど、小さい頃から本を読むのが大好き。
大好きな作家は、ジョン・アーヴィング、筒井康隆、津原泰水、中上健次、桐野夏生、北村薫、金井美恵子、梨木果歩。
コンプリート中なのは宮部みゆき、恩田陸、松尾由美、三浦しをん、桐野夏生、北村薫。今のところ、多分著作は全部読んでいます。
大好きな作家は、ジョン・アーヴィング、筒井康隆、津原泰水、中上健次、桐野夏生、北村薫、金井美恵子、梨木果歩。
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