豚がつづる読書ブログ
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あきない世傳 金と銀(四) 貫流篇 (時代小説文庫) 高田郁 角川春樹事務所 2017-08-09 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
★★★
シリーズ第四弾。
天満呉服商の五鈴屋の女中奉公をしていた幸は商才の片鱗を認められ、四代目徳兵衛の妻となったが夫は不慮の事故で亡くなる。
その後、弟の惣次に嫁したが、徐々に幸の商才を疎むようになった惣次はある事件をきっかけに著しく誇りを傷つけられ、出奔してしまう。
二度と戻らないという惣次の決意を知ったお家さんの富久は、意外な決断を下すが…。
理解ある夫を得て、とうとう幸は自らビジネスアイディアを次々と実行していきます。
モノが売れない当時の江戸時代、知恵を絞って商売の戦国時代を渡っていく武将の如き幸の姿はとっても頼もしい。
委託販売による販路拡大、ノベルティ配布などの効果的な宣伝方法、M&Aなどなど、現代と同じような商法を展開していきます。
それだけでは飽き足らず、新しいビジネスモデルの模索まで始めちゃって、幸はどこまでいくの?とドキドキしちゃいますね。
最終的にはビジネス構造改革でも成し遂げるんでしょうか・・・。
このお話はビジネスについて多角的に学べるのですが、組織やマネージメントに関しても今回は興味深かったです。
次男の惣次は有能で、非常に鋭い経営センスを持っているのですが、人の使い方が下手。
賢すぎるがゆえに自分で何でもできてしまうから、他の人がバカに見えてしまうんですよね。
だから他人の意見も取り入れず、無駄に他人を傷つけ、部下や取引先と軋轢ができてしまう。
有能なプレイヤーだけど有能なマネージャーではない、というのは今も良く見る光景ですよね。
まあ、ビジネス観点から眺めると面白いのですが、1巻からずっと、ストーリー自体にいまいち面白みを感じません。
前作の「みをつくし~」は面白かったのになんでかな?と考えてみたのですが、多分、主人公の幸の心情がはっきり描かれないので共感しにくいのだと思います。
幸は情よりも知的好奇心を満たすことに重きを置いているように見えます。
商いに興趣を感じている彼女にとっては、店の商売を存続させることが一番なんですね。
もちろんこの時代の彼女の立場では当然のふるまいなのですが、現代の恋愛小説に慣れた読者にとっては淡白に見えちゃうんだと思います。
今回のお話でも、幼いころ好意を持った智蔵ととうとう一緒になれるという、少女漫画だったら最高に盛り上がる場面でも幸の心は平静です。
父を亡くしたことで下女奉公しなくてはならなくなり、兄弟と三度も結婚させられる。
そんな運命を受け入れざるを得ない彼女には、もはや静かな諦観を持って全てを受け入れるしか術がないのでしょう。
現代の感覚で「淡白でつまんない」と判断するのは間違っているかもしれませんが、小説なのでもっと心情とストーリーが絡み合って盛り上がる展開を作ってほしいです…。
(2018年2月読了)
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自己紹介:
読むのがすごく遅いけど、小さい頃から本を読むのが大好き。
大好きな作家は、ジョン・アーヴィング、筒井康隆、津原泰水、中上健次、桐野夏生、北村薫、金井美恵子、梨木果歩。
コンプリート中なのは宮部みゆき、恩田陸、松尾由美、三浦しをん、桐野夏生、北村薫。今のところ、多分著作は全部読んでいます。
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