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豚がつづる読書ブログ
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螢坂 (講談社文庫) 螢坂 (講談社文庫)
北森 鴻

講談社 2007-09-14

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★★★★

三軒茶屋の裏路地にあるビアバー「香菜里屋」シリーズ第三弾。


前作同様、陰影が深く、余韻が残るお話が多かったです。
真実に気付いたマスターが謎解きをする際、言い淀む場面も多かった気がします。

表題作の「螢坂」は、やはり一番完成度が高い佳作。
16年ぶりに三軒茶屋を訪れた有坂は、昔の恋人・奈津美と歩いた道を辿るうちに「香菜理屋」に着く。
そこで有坂は彼女の秘められた思いを知る事に…。

捨て去った過去と対峙した時、初めて残酷で悲しい真実を知る。
有坂が罪を贖い続けることでいつまでも奈津美は彼の心に存在し続けるのでしょう。
有坂や奈津美の心中を思うと、想像を絶する真実の重みに自分なら耐えきれないかも…。
でも、踏み込まないけど離れない位置で見守ってくれるマスターの態度がとても温かく、安心して本を閉じることができました。

ベタだけど「孤拳」もすごく良かったです。
「孤拳」という幻の焼酎を捜し求めていた谷崎真澄。
彼女の話を聞いたマスターは、悲しくも切ない真相を語る…。

このお話にも「螢坂」同様、相手に対して自分のことを忘れてほしくない人の気持ちが描かれています。
死を悲しんでほしくはないけれど、自分のことを忘れてほしくない・・・そんな相反する人の複雑な感情を明らかにしてみせ、傷つけずに生者に伝えるマスターの手腕が秀逸。
ありきたりだけど、忘れない限り心ではいつも一緒なんですよね。

「香菜里屋」のカウンターに座るだけで抱えている心の澱が解きほぐされていく…こんなお店現実にあったらいいのにな~。

どのお話でも平凡な人生の悲喜こもごもが味わえました。
若いころに読んだらこの作品の良さは存分に味わえなかったと思うと、そういう意味では大人になって良かったな~!と思います。

(2018年1月読了)
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自己紹介:
読むのがすごく遅いけど、小さい頃から本を読むのが大好き。

大好きな作家は、ジョン・アーヴィング、筒井康隆、津原泰水、中上健次、桐野夏生、北村薫、金井美恵子、梨木果歩。

コンプリート中なのは宮部みゆき、恩田陸、松尾由美、三浦しをん、桐野夏生、北村薫。今のところ、多分著作は全部読んでいます。
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