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木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか(上) (新潮文庫) 木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか(上) (新潮文庫)
増田 俊也

新潮社 2014-02-28

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木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか(下) (新潮文庫) 木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか(下) (新潮文庫)
増田 俊也

新潮社 2014-02-28

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上巻★★★
下巻★★★★

不世出の柔道家、木村政彦の忘れられた生涯を書いた評伝。
木村政彦の生涯を丁寧に描きつつ、戦前から戦後にかけての柔道史、総合格闘技やプロレス界の歴史も紐解き、その知られざる真実についてつまびらかにしていく。

上巻は、師匠の牛島の鬼の指導の下で猛練習を重ね、天覧試合を制し日本最強の柔道家になり、そして戦後、プロ柔道に参加し海外へ活躍の場を求めるまでが描かれています。
下巻はブラジルでのグレイシーとの伝説の戦いを経て、帰国してプロレスに転向し、「昭和の巌流島」と言われた力道山との試合とその後の生について語られていきます。

柔道もプロレスも全く興味が無かったので、木村政彦の名や柔道の歴史等々、初めて知ることばかり。
そんな自分でも心を掴まれ、むさぼるように一気に読んでしまう骨太のノンフィクションでした。

上巻は猛練習と試合の描写が執拗に続き、どれだけ木村が強かったのか繰り返し強調され、少し単調に感じてしまいました。
が、その執拗な描写が生きてくるのは下巻に入ってから。

上巻の冗長的な説明があるからこそ、力道山との対戦時の木村の立ち位置や周辺の状況、その試合が彼にとってどのような意味を持ち、そしてその後の人生にどう影響したのか、見えてくるんですね。

「力道山に負けた男」として、75歳までの「余生」を生きた木村。
柔道の試合に臨む際は負けたら死ぬことを覚悟していたという木村が、どのような気持ちでその後の生を生きたのか、作者の筆によって克明にあぶり出されていきます。

木村の汚名返上のため、資料収集と取材に18年もの歳月を費やしたという作者の執拗で真摯な姿勢に圧倒されるばかりでした。

(2014年10月読了)
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盤上の夜 (創元日本SF叢書) 盤上の夜 (創元日本SF叢書)
宮内 悠介

東京創元社 2012-03-22

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★★★★★5つ!

中国を旅行中にさらわれ、四肢を失った灰原由宇は生き延びるために囲碁を覚え、元棋聖であった相田と知り合って地獄の境遇から脱出する。
彼女は日本でプロの棋士となり活躍するが、囲碁盤を感覚器とするようになった彼女の力は限界に近づいていた。
ある日、囲碁の世界からも相田の前からも由宇は忽然と姿を消す。

囲碁、将棋、チェッカー、麻雀、将棋など、卓上遊戯(ボードゲーム)を題材にした短編集。
それら全てのルールがわからない身としては、読んでも理解できるだろうかと不安だったのですが、ルールを知らなくとも盤上で繰り広げられる激しい人間ドラマに息を飲む、というタイプの小説だったので、すごく楽しんで読みました。

エッジの効いた抑えた語りはテンポ良く、 疾走感があり、盤の向こうに見えてくる、抽象と具象が交わる初めての景色に読み手を連れて行ってくれます。

小説って面白いものだった、と改めて再発見させてくれた気がしました。

(2013年12月読了)

凶鳥の如き忌むもの (講談社文庫)凶鳥の如き忌むもの (講談社文庫)
三津田 信三

講談社 2012-10-16

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★★★

怪異譚を求めて全国を回っている作家・刀城言耶は、秘儀を取材するため瀬戸内にある鳥坏島へと渡る。
前回の儀式では、儀式を行う巫女を含め七名が行方不明となっていた。
そして今回も、巫女の朱音が密室状態の拝殿から姿を消し、他の面々も一人また一人と消失してゆく―。

禍々しくて濃厚な雰囲気の、きっちりとした世界観ができあがっているので話に入りやすくて、すらすら読めました。
民俗ホラーっぽいのですが、意外に緻密な謎解きにかなりのページを割いています。
怪異の見せ方も巧みで、怪異とミステリの絶妙なバランスが素晴らしいです。

読者にさまざまな想像を促すラストは、怪異とミステリのアンサンブルの妙を感じることができました。

読むと、日常からちょっとはみ出した気分になれる小説です。

(2013年8月読了)

ビブリア古書堂の事件手帖4 ~栞子さんと二つの顔~ (メディアワークス文庫)
ビブリア古書堂の事件手帖4 ~栞子さんと二つの顔~ (メディアワークス文庫)三上 延

アスキー・メディアワークス 2013-02-22


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★★★

ビブリア古書堂4作目。
乱歩フリークの旧客からの依頼は、所有している乱歩のコレクションを譲る代わりに、金庫を開けてほしいという謎めいたもの。
調査を開始した栞子たちの前に姿を現したのは、十年ぶりの再会となる栞子の母・智恵子だった。

今までは短編集でしたが、今回は江戸川乱歩にじっくり焦点を当てた長編。
ストーリー自体も乱歩作品をうまく取り入れており、乱歩ファンには堪らない出来になっています。
個人的に乱歩の大人向け短編が大好きなので、乱歩の不思議な世界と一緒に謎が展開されることによって新たな乱歩作品を読んでいるように感じ、すごく楽しめました。

副題の「二つの顔」とは、『うつし世はゆめ よるの夢こそまこと』という乱歩の言葉にもあるように、コレクターの鹿山や栞子の母の二面性を示しているのでしょう。
栞子の母は欲しい本はどんな手段ででも手に入れるという、「一線を越えてしまった人」と捉えていたのですが、終盤では普通の母親らしい面も見せ、多面的な、人間らしい立体感を持った像として心に残りました。

本を間に挟むことでしか他者との関係を成立させられなかった栞子のじれったい恋模様も大きな動きがあり、読みどころが多かったです。

「物語はそろそろ後半戦」だそうなので、次回作も楽しみです。

(2013年8月読了)

ビブリア古書堂の事件手帖3 ~栞子さんと消えない絆~ (メディアワークス文庫) ビブリア古書堂の事件手帖3 ~栞子さんと消えない絆~ (メディアワークス文庫)
三上 延

アスキー・メディアワークス 2012-06-21

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★★★★

ビブリア古書堂3作目。
古本屋の仕事に少しずつ慣れてきた大輔。
出奔した母に対する栞子の気持ちを気づかい、静かに支えていけたらと願うようになっていた。
今回も古書にまつわる様々な事件に巻き込まれ、母親がしたように栞子はそれらを解決していく。
 

このシリーズを読むと、取りあげられた本が読みたくなるのでどんどん積読本が増えてしまいます。
今回も古書にまつわる薀蓄や古書業界の内情が興味深く、あっという間に読み終えました。

特に、坂口夫妻や「春と修羅」のお話が面白かったです。
本というのは、それを通じて今はいない人と触れ合うことが出来る装置なのかもしれません。
一つの本から、時間を超えて無限の笑いや悲しみが生まれているんだと、作者が教えてくれてる気がします。

少しずつ明かされていく栞子の母親の謎は次巻に持ち越し。
次も楽しみです。

(2013年4月読了)

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プロフィール
HN:
sis
性別:
非公開
趣味:
読書
自己紹介:
読むのがすごく遅いけど、小さい頃から本を読むのが大好き。

大好きな作家は、ジョン・アーヴィング、筒井康隆、津原泰水、中上健次、桐野夏生、北村薫、金井美恵子、梨木果歩。

コンプリート中なのは宮部みゆき、恩田陸、松尾由美、三浦しをん、桐野夏生、北村薫。今のところ、多分著作は全部読んでいます。
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