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豚がつづる読書ブログ
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退出ゲーム (角川文庫) 退出ゲーム (角川文庫)
初野 晴

角川書店 2010-07-24

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★★★★★5つ!

高校一年生のチカとハルタは、弱小吹奏楽部でフルートとホルンを担当している幼馴染。
二人は廃部の危機を救うため練習と部員集めに奔走する日々を送っているが、それゆえに時々学校で起こる出来事の謎を解くはめに。そんな二人の活躍を描いた連作短編集。

すごく良かった!
学園ミステリの体裁を取りながら意外にも社会派要素を含んだ謎もあり、ハードテイストな印象。
変人たちの集まる文系部活の面々がコミカルに話を進めていくのですが、謎はきっちりと論理で解決します。

ミステリがメインですが、青春群像劇、恋愛物語などの面を持った物語でもあり、それらがお互いを損なうことなく自然に融合しているのが素晴らしい。

それぞれがちゃんと必要不可欠な要素として物語に絡み、自然にストーリーが流れていくというのは中々稀有なことだと思います。

4つの短編で一番印象に残ったのは、表題作の「退出ゲーム」。
中国系アメリカ人の生徒・マレンの入部を巡って吹奏楽部と演劇部が「退出ゲーム」という即興劇を演じるお話。
この話の凄いところって、相手側のアドリブによって芝居の中で追加されていくルールをロジックの枷にしているところ。
制約された状況下でどんどん解決のハードルを上げていくわけですから、解決に至った時のカタルシスが半端ないんですよね。

しかも、芝居の結果にハラハラするとともに、劇を通して複雑な家庭で育ったマレンの心を解きほぐしていく、という・・・。
鮮やかなラストは忘れがたい印象を植え付けてくれました。

最後のお話「エレファント・ブレス」もとても良かったです。
変人兄弟が発明した、見たい夢が見られるという『オモイデマクラ』の校内での販売を阻止するためにチカとハルタが協力し・・・というアホらしい冒頭からは想像もつかない結末。

前半のアホらしさがある分、後半の現実のシビアな部分が際立って感じられるのかもしれません。

ユーモラスな外装に包まれた苦い味わいがたまらない、癖になりそうな話ばかりでした。

(2016年5月読了)
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読書
自己紹介:
読むのがすごく遅いけど、小さい頃から本を読むのが大好き。

大好きな作家は、ジョン・アーヴィング、筒井康隆、津原泰水、中上健次、桐野夏生、北村薫、金井美恵子、梨木果歩。

コンプリート中なのは宮部みゆき、恩田陸、松尾由美、三浦しをん、桐野夏生、北村薫。今のところ、多分著作は全部読んでいます。
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