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豚がつづる読書ブログ
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写楽百面相 (文春文庫) 写楽百面相 (文春文庫)
泡坂 妻夫

文藝春秋 2005-12

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★★★

江戸の本屋の若旦那二三(にさ)は、馴染みの芸者卯兵衛の部屋で見たことのない斬新な役者絵
を目にする。
いったい誰が描いたのか。浮世絵師の正体を追っていく中で、二三は怪事件に巻き込まれていく。

謎の絵師・写楽の正体探しをするうちに、その背景に広がるより大きな事件に肉迫していくと
いう構成に唸らされます。

当時の人々の暮らしや写楽の周辺の状況を克明に描くことで「写楽」の謎へのアプローチを
しているので、空前の文化統制を受けながら芸術家たちが活躍した寛政期になぜ写楽が
出現し消えたのか、自然と納得することができました。

最後まで読むとすべての絵解きがぴたりと嵌って、カタルシスを感じることが出来ました。

(2014年2月読了)
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【映画化】完全なる首長竜の日 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ) 【映画化】完全なる首長竜の日 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)
乾 緑郎

宝島社 2012-01-13

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★★★

植物状態の患者とコミュニケートできる医療器具「SCインターフェース」と使って、自殺未遂で
意識不明となった弟に対話を働きかけ続けている少女漫画家の淳美。
弟との接触を繰り返しているうちに淳美の周囲で不可思議なことが次々と起こり、
次第に夢と現実の境界が曖昧になっていく・・・。

安定の文章力や緻密な構成、難解すぎない内容はバランス良く仕上がっており、
「読ませる技術」は素晴らしいと思いました。

ただ、全体を覆う既知感はいかんともしがたく、ありがちな予想通りの展開に
満足な読後感は得られませんでした。

「このミス大賞」ということですが、ミステリーを期待して読むと肩すかしをくらいます。

(2014年8月読了)
城を噛ませた男 城を噛ませた男
伊東 潤

光文社 2011-10-18

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★★★★

戦国時代を舞台にした5篇の短篇小説集。

今までなんで読まなかったんだ、と後悔するぐらい面白かった!

いずれも主人公は今まであまりスポットライトがあたらなかったマイナーな人物がほとんど
(有名なのは真田昌幸ぐらい)。
過酷な戦国時代を生き延びるため、知略謀略を駆使する武将たちの活躍を見て来たかのように
活写する作者の剛腕に、感服しました。

「見えすぎた物見」
全方向土下座外交で生き延びてきた弱小勢力の佐野氏は、その先を見通す能力ゆえに滅びる
という皮肉なお話。
まずこの最初の短編でグワーッとダイナミックな戦国絵巻に惹きこまれてしまいます。
え、こんな熱くて濃いネタを短編に使っていいの?長編小説でなくて?
なんて贅沢な・・・序盤からこの勢いだと後の話はどんだけ面白いの…とわくわくしながら
次のまた違う熱いかたまりのお話へと、ページをめくる手が止まりません。

「鯨のくる城」
これも面白かった。
伊豆の海で捕鯨をする小大名が、秀吉勢の水軍に仕掛けた大反撃。
時代に翻弄されず飄々と生きる漁師達のたくましさは痛快。
この話が一番面白かったかも。

「城を噛ませた男」
武勲を立てたいがために謀略をはかる真田昌幸。
爽快な話の後に、かなり冷徹で後味の悪い話が来たので身がぐっと引き締まりました。

野心に囚われ功を焦る者と同様、自分も野心に囚われていると自覚する昌幸には、単なる
ダーティーな暗い話に終わらせない力強さを感じました。

また、この昌幸の謀略は史実だと自然に思いこんで読んだのですが、後で作者の説だと知って
驚きました。
他の短編も全てそうですが、史料がほとんど残っていないのにもかかわらず、史実の隙間を
奇想で膨らませるその想像力は凄いと思います。

「椿の咲く寺」
家康によって滅ぼされた今福家の娘・初音は、出家することによって命は助かった。
家族の菩提を弔うつもりでいたがそこに父と兄が現れ・・・というお話。
尼僧が主役なので今までのお話とは異なる雰囲気でしたが、これもまた人間の哀しさが横溢する
見事なストーリーを魅せてくれました。

「江雪左文字」
北条・徳川に仕え、戦国の世をうまく渡り歩いた板部岡江雪斎の話。
関ヶ原の合戦と子ども時代の喧嘩を絡めて展開するという、見せ方にちょっとした心憎い工夫が
あってうまいなあと思いました。
この演出によって、生きるか死ぬかの時代に生きる江雪の命をかけた人生がより際立って
見えてくる気がします。
最後にふさわしい、淡々としながらもどこか明るさも感じられるたたずまいのお話でした。

(2014年8月読了)
本にだって雄と雌があります 本にだって雄と雌があります
小田 雅久仁

新潮社 2012-10-22

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★★★★

本棚に本を並べていたら間に本が増えていた―。
大阪の四代にわたるある一族の、幻書にまつわる荒唐無稽なファンタジー。

本にだって雄と雌があり、交尾をすれば相性のいい本の間には子どもが生まれる…なんていう人を喰った与太話が、クセがある文体で長々と饒舌に語られ、もうおなかいっぱい!というほどに楽しめました。

中盤までは主人公の一族のエピソードが四代にまたがって延々と語られ、ちょっとダレてしまうのですが、後半は怒涛の圧倒的展開となり、ここに至ってやっと前半の無駄だと思った部分が生きてきます。

私たちは何のために生まれ、どこへ行こうとしているのか。
一冊の本のように私たちの人生もまた常に誰かの物語の続きであり、それは円環の中で生き続け、やがては永遠へとつながっていく。
そんな深い思索へと読者をいざなっていきます。

そしてこの本も、数々の名作の中から生まれてきた――生まれるべくして生まれてきた本なのだと気づかされるのです。

著者の書物への愛情が随所に感じられる、本好きにとってはたまらなく愛おしい物語だと思いました。

(2013年11月読了)

イニシエーション・ラブ (文春文庫) イニシエーション・ラブ (文春文庫)
乾 くるみ

文藝春秋 2007-04

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★★★★

代打で急遽出席した合コンの席で、僕はマユに出会った。
付き合い始めた二人は就職で遠距離恋愛を余儀なくされ、やがてはだんだんとすれ違いだす…。

驚きの結末という噂を耳にし、伏線が無いか目を皿のようにして読んでみたのですが、見事に騙されました!

物語は2パートに別れていて、学生の僕とマユの物語がA面、社会人になった僕とマユの物語がB面となっています。
全くミステリーテイストが無い、何てことない80年代ならではのありふれた青春恋愛小説という感じ。
軽くいらつきながら最終ページに入ったところで「あれ?」と思い、最後の2行で「え?ええ~!?」と叫んでしまいました(心の中で…)。

もちろん再読し、解らないところはネットで答え合わせをする始末。

ほんと、良くできています。
よくこんなことを考え付くなあ…。

女性ってこわい。

(2013年6月読了)
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プロフィール
HN:
sis
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非公開
趣味:
読書
自己紹介:
読むのがすごく遅いけど、小さい頃から本を読むのが大好き。

大好きな作家は、ジョン・アーヴィング、筒井康隆、津原泰水、中上健次、桐野夏生、北村薫、金井美恵子、梨木果歩。

コンプリート中なのは宮部みゆき、恩田陸、松尾由美、三浦しをん、桐野夏生、北村薫。今のところ、多分著作は全部読んでいます。
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