忍者ブログ
豚がつづる読書ブログ
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

城を噛ませた男 城を噛ませた男
伊東 潤

光文社 2011-10-18

Amazonで詳しく見る by G-Tools

★★★★

戦国時代を舞台にした5篇の短篇小説集。

今までなんで読まなかったんだ、と後悔するぐらい面白かった!

いずれも主人公は今まであまりスポットライトがあたらなかったマイナーな人物がほとんど
(有名なのは真田昌幸ぐらい)。
過酷な戦国時代を生き延びるため、知略謀略を駆使する武将たちの活躍を見て来たかのように
活写する作者の剛腕に、感服しました。

「見えすぎた物見」
全方向土下座外交で生き延びてきた弱小勢力の佐野氏は、その先を見通す能力ゆえに滅びる
という皮肉なお話。
まずこの最初の短編でグワーッとダイナミックな戦国絵巻に惹きこまれてしまいます。
え、こんな熱くて濃いネタを短編に使っていいの?長編小説でなくて?
なんて贅沢な・・・序盤からこの勢いだと後の話はどんだけ面白いの…とわくわくしながら
次のまた違う熱いかたまりのお話へと、ページをめくる手が止まりません。

「鯨のくる城」
これも面白かった。
伊豆の海で捕鯨をする小大名が、秀吉勢の水軍に仕掛けた大反撃。
時代に翻弄されず飄々と生きる漁師達のたくましさは痛快。
この話が一番面白かったかも。

「城を噛ませた男」
武勲を立てたいがために謀略をはかる真田昌幸。
爽快な話の後に、かなり冷徹で後味の悪い話が来たので身がぐっと引き締まりました。

野心に囚われ功を焦る者と同様、自分も野心に囚われていると自覚する昌幸には、単なる
ダーティーな暗い話に終わらせない力強さを感じました。

また、この昌幸の謀略は史実だと自然に思いこんで読んだのですが、後で作者の説だと知って
驚きました。
他の短編も全てそうですが、史料がほとんど残っていないのにもかかわらず、史実の隙間を
奇想で膨らませるその想像力は凄いと思います。

「椿の咲く寺」
家康によって滅ぼされた今福家の娘・初音は、出家することによって命は助かった。
家族の菩提を弔うつもりでいたがそこに父と兄が現れ・・・というお話。
尼僧が主役なので今までのお話とは異なる雰囲気でしたが、これもまた人間の哀しさが横溢する
見事なストーリーを魅せてくれました。

「江雪左文字」
北条・徳川に仕え、戦国の世をうまく渡り歩いた板部岡江雪斎の話。
関ヶ原の合戦と子ども時代の喧嘩を絡めて展開するという、見せ方にちょっとした心憎い工夫が
あってうまいなあと思いました。
この演出によって、生きるか死ぬかの時代に生きる江雪の命をかけた人生がより際立って
見えてくる気がします。
最後にふさわしい、淡々としながらもどこか明るさも感じられるたたずまいのお話でした。

(2014年8月読了)
PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
カレンダー
12 2025/01 02
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
フリーエリア
最新TB
プロフィール
HN:
sis
性別:
非公開
趣味:
読書
自己紹介:
読むのがすごく遅いけど、小さい頃から本を読むのが大好き。

大好きな作家は、ジョン・アーヴィング、筒井康隆、津原泰水、中上健次、桐野夏生、北村薫、金井美恵子、梨木果歩。

コンプリート中なのは宮部みゆき、恩田陸、松尾由美、三浦しをん、桐野夏生、北村薫。今のところ、多分著作は全部読んでいます。
バーコード
ブログ内検索
カウンター
アクセス解析

Copyright © [ 豚は無慈悲な夜の女王 ] All rights reserved.
Special Template : 忍者ブログ de テンプレート
Special Thanks : 忍者ブログ
Commercial message : [PR]