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豚がつづる読書ブログ
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★★★

生まれながらの聴き屋体質にして名探偵の柏木と、彼を取り巻く愉快で風変わりなT大学芸術学部の面々が推理を繰り広げる連作集。


「聴き屋」シリーズ第2弾。

相談に乗るのではなく、ただ人の愚痴や悩みを聞くだけという聞き上手の柏木が、結果的に謎解きを行い悩みを解決するというシリーズの短編集です。
ただ、聴き屋という属性がうまく発揮されていない話もあり、芸術系大学生が主人公の日常ミステリもの、という体裁の話になっています。

いずれも人のささいな言葉や行動を深堀りし、豊かな想像力に根差した論理的思考により推理していく手法を取っています。
その他人への深い洞察が明らかにする人の機微の細かさが見事で、静かな感動をおぼえます。
また、読み手の固定概念をひっくり返される展開に毎回気持ちよくだまされました。

印象に残ったのは、子役の少年の謎の行動の理由を探る「世迷い子と」というお話。
有名子役の良介はロケの撮影中に突然何かに怯えて池に飛び込み、撮影中止となってしまう。
良介は怯えた理由を言おうとせず、聴き屋の柏木がそれを探ることに。

変わり者として孤立感を抱えた良介の心に寄り添い、丁寧に解きほぐしていく柏木の優しさが沁み入ります。
自分の価値観に合わない、共感できないことに対して「あなたって変わってるよね」と決めつけすぐ排除しようとする人、どこにでもいますよね。
私も何百回も同じ目に遭っているので、その孤独感、わかります・・・。
生き辛さを覚える<変人>に対する柏木の眼差しがあたたかく、何だか嬉しくなりました。
<変>というのも一つの個性なのだと多様な価値観を提示してくれ、物語の奥行きがぐっと広がったように思いました。

次巻も楽しみ。早く出てほしい!

(2019年5月読了)
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読書
自己紹介:
読むのがすごく遅いけど、小さい頃から本を読むのが大好き。

大好きな作家は、ジョン・アーヴィング、筒井康隆、津原泰水、中上健次、桐野夏生、北村薫、金井美恵子、梨木果歩。

コンプリート中なのは宮部みゆき、恩田陸、松尾由美、三浦しをん、桐野夏生、北村薫。今のところ、多分著作は全部読んでいます。
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