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豚がつづる読書ブログ
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★★★★

大手出版社・文宝出版に勤める文芸編集者の美希。

美希が会社で起こった小さな出来事や謎を実家に持ち帰ると、定年間際の高校教師の父親がたちまち解決してくれるという安楽椅子探偵もの。

こういうのが読みたかったんだ!としみじみ感動しながら読了。

娘が身の回りの「日常の謎」を中野在住の実家の父に持っていくと見事に解決してくれるという、お決まりのパターンで終わる8編の短編集です。
1話ごとの分量は少なめで、どれも結論がすっきりと端正で美しい。

このお父さん、ほんとに凄いんですよねー。
見た目は地味だしおなかも出てるけど、博識ぶりや洞察力が半端ない。
娘の美希が帰ってくると嬉しくてたまらないみたいで、ちょっと甘やかし過ぎなところもスキがあって可愛い。
そして謎だけではなく、輻輳する人間交差点を見事に解きほぐしてくれ、気持ちもすっきりさせてくれます。
父娘のあたたかな交流を描くとともに、時間の流れを感じさせる無常さが行間からにじんでくる演出もニクい。

ただ、お父さんが博覧強記すぎてついていけないこともありました。
読み手のこちらとしては国文学にすごく造詣が深いわけではないので、高踏な謎解きをされても「ふーん…」で終わることも。
落語や歌舞伎まで話が広がっていく短編「闇の吉原」は、謎じたいが高踏すぎて、やや鼻についてしまいました。
(わたしの教養が無いせいです、すみません…)

美希の編集者の同僚たちも、いい味を出していてどのキャラも良かったです。

同僚の言葉で印象に残ったセリフ。
「事実で説明出来るものって、すっきりはするけど、可能性の翼をたたませるところがある。解釈の冒険って、いかにも人間らしいじゃない」
こういうセリフがさらっと出てくるのが北村薫節ですよねー。好き。

読み終わるのがもったいない、と久しぶりに体感した一冊でした。

(2019年6月読了)
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読書
自己紹介:
読むのがすごく遅いけど、小さい頃から本を読むのが大好き。

大好きな作家は、ジョン・アーヴィング、筒井康隆、津原泰水、中上健次、桐野夏生、北村薫、金井美恵子、梨木果歩。

コンプリート中なのは宮部みゆき、恩田陸、松尾由美、三浦しをん、桐野夏生、北村薫。今のところ、多分著作は全部読んでいます。
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