豚がつづる読書ブログ
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★★★
流行のファッションに身を包むキリコは清掃の仕事のついでに事件も人の心もクリーンにしてしまう――。
お掃除ミステリ第五弾にして最終巻。
四篇の連作短編集ですが、最初の二話は英会話学校、三話目はコワーキングスペースで起こった事件のお話。
例によって、掃除の派遣で働くキリコの深い洞察力によって事件とそれに関わる人の心を解きほぐしていきます。
軽く読める肩の凝らないミステリですが、真相の裏に隠された悪意や嫉妬の熱量は結構重みがあり、認知の歪みやいじめでは済まされないビターな内容でした。
特に三話目の「重なり合う輪」の女性が受ける悪意のない嫌がらせは、胸がつまり苦しくなります。
その上、自分の見たい世界しか見えていない人間に対して仕返ししても被害者は楽になることができず、やるせなくなりました。
そして最後の四話目「ラストケース」では、いつもは他人の問題を解決してきたキリコが自身の問題に悩み、旅に出てしまい…というお話。
キリコが万能な人間ではなく、人並みに傷つき揺らぐ女性として描かれているのがとてもいい。
彼女が他人の感情に人一倍敏感なのは、そうならざるを得ない環境で育ったから…ということが行間から垣間見えるのが悲しい。
賢く人の気持ちに敏感なキリコは、見えすぎるゆえに思わぬ行き違いを起こしてしまう。
しかも弁解の機会は二度と訪れないとなると、本当に切ない。
でも今はキリコには大介がいる、そのことが読んでいて救いになりました。
最初の頃の大介はもっと頼りなかった気がするけども、巻を重ねて夫として成長したのか、キリコを立派に支えていて目頭が少し熱くなりました。
大介は問題を見て見ぬふりをしないし、キリコを信頼して、彼女のやることについて一緒に責任を取ってくれるでしょう。
このシリーズは二人が出会ってから強い絆で結ばれるまでの長い話だったのかも、と思うとイイハナシダナー、と感慨深いです。
終わっちゃうのは寂しいですが、このラストだったら納得。
また近藤作品の別シリーズを楽しみたいです。
(2019年9月読了)
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読書
自己紹介:
読むのがすごく遅いけど、小さい頃から本を読むのが大好き。
大好きな作家は、ジョン・アーヴィング、筒井康隆、津原泰水、中上健次、桐野夏生、北村薫、金井美恵子、梨木果歩。
コンプリート中なのは宮部みゆき、恩田陸、松尾由美、三浦しをん、桐野夏生、北村薫。今のところ、多分著作は全部読んでいます。
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