豚がつづる読書ブログ
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★★★
元警察犬のジャーマンシェパードを飼うことになった共働きの池上夫婦。
初めて犬を飼う夫婦の日常と、周囲で起きるさまざまな事件を描いたミステリ連作短編集。
躾もきちんとされてて賢いけど、人懐っこくてちょっと臆病な元警察犬のシャルロットがとにかく可愛くて、わんこかわいい~愛しい~!って読んでたらすぐ読み終わっちゃいました。
もちろん可愛いだけではなく、飼い主同士の暗黙のルールや犬の習性を理解した上でのしつけの重要さ等々、犬を飼ったことのない私には初めて知ることばかりで、新鮮でした。
動物を飼うことの責任の重さや、動物を利用し改良してきた人間の歴史などなど、人間のエゴについて考えさせられるエピソードも多かったです。
「飼う」ことはどういうことなのか、人間はどうすべきなのか、正解はひとつでは無いでしょうし、考え続けていかなきゃいけない問題なのでしょう。
子育てとは似て非なるものなんでしょうね~。
自分の想像の及ばぬ世界を垣間見ることのできる…小説を読むことって、やっぱ楽しいな。
(2020年7月読了)
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★★★
流行のファッションに身を包むキリコは清掃の仕事のついでに事件も人の心もクリーンにしてしまう――。
お掃除ミステリ第五弾にして最終巻。
四篇の連作短編集ですが、最初の二話は英会話学校、三話目はコワーキングスペースで起こった事件のお話。
例によって、掃除の派遣で働くキリコの深い洞察力によって事件とそれに関わる人の心を解きほぐしていきます。
軽く読める肩の凝らないミステリですが、真相の裏に隠された悪意や嫉妬の熱量は結構重みがあり、認知の歪みやいじめでは済まされないビターな内容でした。
特に三話目の「重なり合う輪」の女性が受ける悪意のない嫌がらせは、胸がつまり苦しくなります。
その上、自分の見たい世界しか見えていない人間に対して仕返ししても被害者は楽になることができず、やるせなくなりました。
そして最後の四話目「ラストケース」では、いつもは他人の問題を解決してきたキリコが自身の問題に悩み、旅に出てしまい…というお話。
キリコが万能な人間ではなく、人並みに傷つき揺らぐ女性として描かれているのがとてもいい。
彼女が他人の感情に人一倍敏感なのは、そうならざるを得ない環境で育ったから…ということが行間から垣間見えるのが悲しい。
賢く人の気持ちに敏感なキリコは、見えすぎるゆえに思わぬ行き違いを起こしてしまう。
しかも弁解の機会は二度と訪れないとなると、本当に切ない。
でも今はキリコには大介がいる、そのことが読んでいて救いになりました。
最初の頃の大介はもっと頼りなかった気がするけども、巻を重ねて夫として成長したのか、キリコを立派に支えていて目頭が少し熱くなりました。
大介は問題を見て見ぬふりをしないし、キリコを信頼して、彼女のやることについて一緒に責任を取ってくれるでしょう。
このシリーズは二人が出会ってから強い絆で結ばれるまでの長い話だったのかも、と思うとイイハナシダナー、と感慨深いです。
終わっちゃうのは寂しいですが、このラストだったら納得。
また近藤作品の別シリーズを楽しみたいです。
(2019年9月読了)
★★★★
歌舞伎役者の父が急逝し、残された7歳の少年・秋司の後見人になったのは中堅役者の萩太郎。
萩太郎にも同学年の息子・俊介がいたが、全く歌舞伎に興味が無い様子。
秋司の踊りを見てその才能に驚いた萩太郎は、俊介と秋司の初共演に秋司に難しい役をやらせることにする。
しかし、秋司の急病のため、彼の役を俊介に変更したことにより、秋司とその母親との関係がこじれていく…。
歌舞伎の子役に焦点を当てて描かれた長編物語。
梨園の特殊で独特な世界の仕組みがわかりやすく描かれているので、すんなりと作品世界に入っていけました。
歌舞伎を全く観たことのない方も興味のない方も問題なく読めると思います。
役者たちの日常や等身大の悩みも垣間見られるし、世襲制が基本の梨園で後見人の父を失うことがどれほどのことなのか、すべて読んでいるうちに理解できました。
役者同士の仲が良くても基本的にはライバルだし、中でも御曹司はスタートから異なり、配役にも差があるらしい。
人に見られる華やかな業界だけど、内実は一般社会とそんなに変わらないんですね。
同様に、親が子を、子が親を思いやる気持ちは誰でも一緒なんだと、読んでいてつくづく思います。
また、才能や運命とは何なのか、考えさせられました。
生まれつきの天才だけではなく、努力を重ねて芸を磨き続けることができるという才能もある。
才能が人を不幸にすることだってあるし、才能の有無が人の幸不幸を左右するわけではないのです。
秋司の運命は一見悲劇のようにも見えるが、歌舞伎から離れた十数年は彼にとって運命を甘受し、耐え忍ぶ雌伏の時だったかもしれない。
この離別は母を守るため、そして人生をより良く生きるための力を涵養していた、子どもなりの生存戦略だったのかも。
配られたカードで勝負するしかない人生の残酷さと、そのカードをうまく使って運命を乗り越えようとする意志の強さ。
案外、人間って強いものだし、前を向いていかざるを得ない本能を持った生き物なのかな、と思います。
これを悲劇とか運命とか、どう呼ぶかは他人が決めることじゃないよね。
(2017年6月読了)
★★★
ある日キリコは、見知らぬ女性から「夫の浮気を調査してほしい」と頼まれる。
その越野真琴という女性によると、夫の友也は残業は無いのに毎日遅く帰ってくるという。
調査を始めたキリコと大介だったが、ある日友也が交通事故で記憶喪失になり問題は思わぬ方向に…。
清掃人探偵キリコシリーズの第4弾。
シリーズ初の長編。
シリーズ初の長編。
今回は初めてキリコと夫の大介が協力して謎の解決に取り組んでいます。
久しぶりに大介の視点から物語が進んでいくのですが、キリコとの日常生活が初めて描かれていて、何だかほっこりします。
二人の仲が良すぎて、羨ましくなるほど。
肝心の謎解きは正直…微妙でした。
肝心の謎解きは正直…微妙でした。
途中で結末が何となく予測できちゃうし、謎の規模が短編並。
短編でもいいお話を、無理に長編に引き伸ばした感が有り。
でも、真相自体は切なくも考えさせられるものでした。
でも、真相自体は切なくも考えさせられるものでした。
恋情や愛情を感じることはできなくても、他人と寄り添って生きていくことはできる。
夫婦や人間関係のかたちなんていうものは人の数だけあるのかもしれません。
キリコと大介のイチャイチャがやたらと描かれたのは、真琴と友也の夫婦関係との対比だったのか…といま気づきました。
キリコと大介のイチャイチャがやたらと描かれたのは、真琴と友也の夫婦関係との対比だったのか…といま気づきました。
(2018年11月読了)
★★★★
流行のファッションに身を包むキリコは清掃の仕事のついでに事件も人の心もクリーンにしてしまう──というお掃除ミステリ。
「女清掃人探偵」シリーズの第3弾。
今回は4編の短編が収録されていますが、一番読みごたえがあったのが他の短編よりも長い中編の「第二病棟の魔女」というお話。
小児病棟で噂される魔女騒動。新人看護師が遭遇した魔女の正体とは。
そして少女の入退院の理由とは…。
いつものようにキリコが探偵役と思いきや、中盤でキリコが謎の中心に据えられています。
読者をミスリーディングさせて煙に巻き、真相に至るまでのスリリングな展開に至らしめる手腕は見事で(ちょっと強引だけども…)、先の読めないワクワク感を味わえました。
前作と同様、仕事や人間関係に悩み立ち止まる人間がメインに描かれています。
他人との距離をはかりかねている新人看護師だったり、妹との確執に悩む女社長だったり。
彼らに対しキリコは対処方法を示唆し、その上、できるだけ相手に寄り添おうとしてくれます。
そんな彼女の真摯な気持ちが自然と伝わり、登場人物たちも読者も皆、キリコのことを好きになってしまいます。
ままならないことも多い世の中だけど、苦しい時や悲しい時はキリコがいてくれる、そう思うだけで何とかやっていけそう。
大袈裟ですけどそんな気持ちになれます。
作者は人の悪意がむき出しになる瞬間の描写がうまく、毎回ぞっとしますが、人の持つ善良な部分とそうでない部分を読み手につきつけ、いろいろなことを確認させてくれているのかも…と思います。
(2017年7月読了)
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読書
自己紹介:
読むのがすごく遅いけど、小さい頃から本を読むのが大好き。
大好きな作家は、ジョン・アーヴィング、筒井康隆、津原泰水、中上健次、桐野夏生、北村薫、金井美恵子、梨木果歩。
コンプリート中なのは宮部みゆき、恩田陸、松尾由美、三浦しをん、桐野夏生、北村薫。今のところ、多分著作は全部読んでいます。
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