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豚がつづる読書ブログ
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お引っ越し (角川文庫) お引っ越し (角川文庫)
真梨 幸子

KADOKAWA 2017-11-25

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★★★

引越しをテーマにした連作ホラー短編集。

コンビニにある実話系怪談雑誌に書いてありそうな話をふくらませて小説にした印象。
悪く言えばありがちな話だけど、ありがちさのディティールを積み重ねることによってリアルさがより増長され、夜中に読んだら非常に怖かったです。

ホラーテイストが強く、いつもの真梨幸子のイヤミス小説とはまた別の怖さに満ちています。

避難口(非常扉)に入ると中からは出られないとか、隣人の騒音を通報したら報復にあったとか、本当に経験するかも、と誰もが感じてしまう恐怖の煽りのテクニックが巧み。
登場人物たちは脈絡も無くいきなり(もしくはじわじわと)恐怖のどん底に落とされるのですが、「理由も無く」「避けられない」っていう点がほんと怖いんだよねえ。

ダイナミックやカタルシスを楽しむという観点からはほど遠い小説ですが、ちょこっと現実から逃避したい時にお勧めです。

(2018年4月読了)
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あの女 (幻冬舎文庫) あの女 (幻冬舎文庫)
真梨 幸子

幻冬舎 2015-04-22

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★★★

同時期にデビューした売れっ子作家・珠美としがないOL兼業作家・桜子。

珠美の成功を妬ましく思う桜子の運命は、珠美がマンションから転落した日から逆転したかと思われたが…。
所沢のとある高級マンションの心理的瑕疵物件である『四〇一二号室』で繰り広げられる悪意の饗宴。

本の帯に「イヤミス」とありましたので覚悟して読みました。

「阿部定」を名乗る老婆、植物状態の女性の虚実入り混じる悪夢、四〇一二号室購入者の殺人事件、本物の死体が出てくるという謎の自主製作映画、編集者の執拗な妻、珠美の転落事故の真相…。
散発する気味の悪いエピソードに気分が悪くなりながらも読むのがやめられない。

終盤ではかなりとっちらかった話になり、どうやって話の風呂敷をたたむのか…と心配しましたが、思わぬどんでん返しに「おお…!!」と感嘆しました。
読者が推理していくミステリーというよりも、女同士のマウンティングを楽しむサスペンスといった感じです。

登場する女性はみな、見栄やエゴで塗り固められた虚像を作者の手で露わにされていきます。
そんなむき出しになった女性の嫉妬心や虚栄心に心ざわつくのも良し、浅ましいと嫌悪するのも良し。

わたしはこういう女性同士のドロドロ話が好きなのですが・・・真梨さんの他のテイストももっと読んでみたいです。(ちょっと飽きた…)

(2017年7月読了)
ふたり狂い (幻冬舎文庫) ふたり狂い (幻冬舎文庫)
真梨幸子

幻冬舎 2017-02-17

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★★★

小説の主人公と同姓同名の男が妄想に囚われ、著者を刺してしまう。
それに端を発し起こるデパ地下総菜売場での異物混入事件、企業中傷ネット祭り、郊外マンション殺人。
クレーマー、ストーカー、ヒステリーなど、日常に潜む狂気を描いた短編集。

一つ一つは独立した話ですが、各エピソードや登場人物が繋がっている連作短編集となっています。
それぞれの話がうまくリンクされ、時系列もシャッフルされており、複雑に凝った構成です。
どの話にも狂気と正気のはざまを行き来する誇大妄想に囚われた人たちが出てきて、読み進めるうちに気持ちがイガイガしてきます。

タイトルの「ふたり狂い」は作中の説明によると、妄想を持つ人の近くにいるうちに正常な人まで妄想を共有してしまう感応精神病のことをいうらしいのですが、まさに読み手までにも伝染するような狂気のほとばしりに、こちらの精神もやられそうになります。

永遠に続くような狂気の万華鏡を見せられているようで、気分が悪くなるほど面白かったです。

ちょっと凝りすぎてて、ラストがわかりにくかった・・・。

(2017年5月読了)
深く深く、砂に埋めて (講談社文庫) 深く深く、砂に埋めて (講談社文庫)
真梨 幸子

講談社 2011-08-12

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★★★

かつて一世を風靡した美貌の女優・野崎有利子。
奔放な彼女に魅了された男たちは彼女の為に浪費し朽ち果てる。
そんな男たちの一人が、殺人と詐欺の容疑で逮捕された。はたして有利子は悪女か、それとも聖女なのか…?

あいかわらず、どろどろの人間関係を錯綜させる真梨幸子劇場の通常営業です。

絶世の美女の有利子に翻弄される周囲の人たちの視点で話は進んでいきます。
有利子にかかわると周りの人間はほぼ全員人生のバランスを欠き、どこか歪んでいってしまいます。
人を狂わす磁場のような有利子なのですが、彼女視点の語りは無いので真の思惑がわからず、結局彼女が無自覚だったのか悪女だったのか謎のまま。
女の不自由な生きざまが哀しく、侘しい。

終盤は展開が急すぎて、なんだか雑。
つっぱしる筆の走りに読者が置いてけぼりに。

先に『女ともだち』を読んでおかないと意味不明な部分があるらしく、まだ未読だった私は残念でした。

(2016年11月読了)
カンタベリー・テイルズ (講談社文庫) カンタベリー・テイルズ (講談社文庫)
真梨 幸子

講談社 2015-11-13

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★★★

4編からなる連作短編集。
パワースポットをモチーフに据えた短編集ですが、どの登場人物もパワーをもらうのではなく逆にパワーを奪われ誰も幸せにならないという、著者らしい毒がちりばめられたブラックな趣向となっています。
パワースポットなのにマイナスの効用があるという非常に後味の悪い短編集です。

各短編はキャラクターやエピソードがリンクしており、そのつながりに気づいた瞬間はイヤな汗をかきました。

一番印象に残ったのは表題作の「カンタベリー・テイルズ」。
イギリスのカンタベリー・テイルズに行く電車のホームで会った四人の日本人観光客が、成り行き上、到着までにそれぞれのとっておきの話をするというお話。
彼らが披露する怪談話や都市伝説めいた話はなんだかリアルで、日常から逸脱した狂気に不安を覚えながらもワクワクしてしまいました。

ラストの短編「シップ・オブ・テセウス」も良かったです。
作中の登場人物が書いたという作中作なのですが、いつもの女性たちの醜いドロドロ話ではなく、少年達が遺伝子操作に翻弄されるというSF仕立ての短いお話になっています。
諦念と虚無感にふちどられた抒情の豊かさがとても意外で、真梨さんってこんなお話も描くんだなあと新鮮でした。
こんな、気持ちが逆撫でされない真梨作品をまた読んでみたいです。

(2016年8月読了)
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プロフィール
HN:
sis
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趣味:
読書
自己紹介:
読むのがすごく遅いけど、小さい頃から本を読むのが大好き。

大好きな作家は、ジョン・アーヴィング、筒井康隆、津原泰水、中上健次、桐野夏生、北村薫、金井美恵子、梨木果歩。

コンプリート中なのは宮部みゆき、恩田陸、松尾由美、三浦しをん、桐野夏生、北村薫。今のところ、多分著作は全部読んでいます。
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