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豚がつづる読書ブログ
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★★★

推理作家の香月史郎はある事件がきっかけで霊媒師の城塚翡翠と出会う。

彼女はその能力により殺人事件の犯人を特定できるが、何の証拠もない。
香月は根拠となる論理と証拠を後付けで補い、二人は事件を解決していくが──。

何を書いてもネタバレになってしまいそうなので感想を書くのが難しいです。

小説を読みなれている人なら連続殺人事件の犯人は序盤でわかると思います。
最初から伏線がわかりやすく散りばめられているので、それを拾っていけばおのずと犯人はわかってしまいます。
ですが、はっきり言ってこの作品ではそれは主眼ではありません。

第一話から第三話まで各事件が解決された後、最終話にして真の種明かしが始まります。
一度完成させたパズルが違う形で再構築されていく、これもまた快感と言えば快感。
これを楽しめるかどうかで、この作品の最終的な判断が変わってきます。
わたしは…割と嫌いじゃなかった。ノンストップで読むほどのめりこめなかったけど。

ひとつの物語の美しい集合と離散を余すところなく楽しめる、娯楽作品でした。

(2020年3月読了)
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★★★

高校の写真部に所属する4人の女子高生のそれぞれの視点から語られる短編集。

ハタから見るとキラキラして悩みや葛藤も無さそうな少女たちですが、容姿に自信が持てなかったり、学校や家の居心地が悪かったり、自分らしさを見失ったり、人知れず悩みを抱えています。

人は誰もが悩みを抱えて生きていますが、彼女たちはその若さゆえ、悩みに直面した時、立ちすくんでしまうのです。
自分の悩みが他人より深刻に感じてしまったり。
お互いに思いやる気持ちはあるのにうまく届かず、行き違いが生じてしまったり。
幸せになりたいのに、悩みを自分で作り出してしまう自家中毒な面もあったりして。

そんな彼女たちの繊細な心の動きを、カメラの性質や作用を利用した謎解きに沿って、優しく紐解いていきます。
謎としてはそんなに意外性は無いのですが、少女たちの心の機微の変化には感じ入るものがありました。
自分の気持ちに向き合い、それを受け入れることで、同時に他人の感情の蓋をゆるめることができるのかもしれないな、と思いました。

(2019年12月読了)
マツリカ・マハリタ (角川文庫) マツリカ・マハリタ (角川文庫)
相沢 沙呼

KADOKAWA/角川書店 2016-08-25

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★★★

学校近くの廃墟ビルに住みつき、望遠鏡で学校を観察している謎の美少女・マツリカ。

彼女に命じられ、高校生の柴山は学校の怪談を調べていた。
『一年生のりかこさん』という、過去に飛び降り自殺をしたという少女の霊にまつわる噂を追いかけるうちに、柴山はある真実に辿り着く・・・。

前作同様、学校の怪談を調べていく中で出会う「日常の謎」をマツリカと柴山が解決するという話の流れになっています。

謎自体は小粒で、何気ない謎なのですが、真相には誰かのままならない思いがつまっていて、それが明らかになるたびにどうしようもない切ない気持ちに駆られました。
他人を羨む自信の無い自分に自己嫌悪を感じたり、楽しそうな周囲に入っていけず疎外感や引け目を感じたり。
そんな葛藤や逡巡は誰もが覚える感情だと思いますが、読んでいて胸が締め付けられました。

また、傷つきたくないあまりに他人と距離を置いてしまう自意識過剰な柴山が、謎の真相につまった誰かの気持ちに触れるたびに少しずつ変わっていきます。
自分が周囲に受け入れられていると感じたり、他人も同じような孤独や悩みを抱えているんだと理解できると、おのずと自分から心を開いて他人を受け入れるようになるんですね。
そうなると友人と呼べる人間関係が彼の周りにできるようになって、逆にマツリカの存在感が前作よりも弱くなりました。
マツリカは虚像めいていて、柴山の妄想というか、孤独の象徴をあらわしているので、柴山に友人ができると造形が薄くなるんですね。
しかも、今までマツリカに助けられるばかりだった柴山が、最後の章ではマツリカを助ける側となり、彼の成長がより明確なものとなりました。
柴山の成長と相反するマツリカの存在意義。
そんな二人の関係がどうなっていくのか、次作が楽しみです。

相変わらず柴山の性的妄想描写がねちっこくて気持ち悪かったですが・・・それを煽りまくるマツリカさんもどうなんでしょう。
女性に嫌われるタイプの女性なのかなあ。読んでいてあまりいい気持ちはしないよね。

(2018年5月読了)
マツリカ・マジョルカ (角川文庫) マツリカ・マジョルカ (角川文庫)
相沢 沙呼

KADOKAWA/角川書店 2015-03-25

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★★★

学校近くの廃墟に住む女子高生マツリカとひょんなことから知り合った高1の柴山こと「柴犬」。
その名のとおりマツリカにパシリにされながらも、柴山は学校周辺で起こる謎を彼女と解いていく。
人と関わることを避けていた彼の高校生活はマツリカを手伝うことによって一変するが・・・。

高校を舞台にした青春ミステリ。
著者のほかの作品(マジシャンの酉乃シリーズ)に設定がちょっと似ています。
女の子とオドオドした男の子の組み合わせが著者の好みなのでしょうか。

毎回、学校周辺の怪奇現象などを安楽椅子探偵のマツリカが推理していくという流れになっています。
4篇のどれも思春期のほろ苦さが胸を刺す結末ばかりで、胸をえぐられるようでした。

周囲に心を開かず、友達のいない柴山が事件を通じて少しずつ変わっていく、という展開はありがちなのですがほっこりします。

高校生男子の劣情具合が想像以上に気持ち悪くて、女性としては受け入れがたいものがありましたが…読んでるうちに少し慣れました。
綺麗な太もも万歳!

(2016年9月読了)
卯月の雪のレター・レター (創元推理文庫) 卯月の雪のレター・レター (創元推理文庫)
相沢 沙呼

東京創元社 2016-03-22

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★★★

揺れ動く少女たちの心理を巧みに描いた日常の謎短編集。

お互いを思いやる姉妹や女友達同士の葛藤を丁寧に描きながら、すこしだけ切ない謎を加えた5編の短編でした。

何をやりたいのかわからず、模索して立ち止まっている若者の心の動きに魅せられます。

将来に対する不安や懼れなど、簡単にはとても表せない気持ちを取り繕うことなく懸命に前を向いている姿には、自分も通ってきた道なので、懐かしさと尊さと感じますね。

著者は男性だというのはすぐにわかりました。
何となく、女性が女性を描いた時のリアルさが無いんですよねー。
これはこれでいいと思うし、悪いわけではないのですが・・・、うっすら「うーん、違うかなー。惜しいけど。」と感じてしまいました。
少女へのアプローチが、自分の好みと少し違いました。それだけです。

(2016年8月読了)


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sis
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趣味:
読書
自己紹介:
読むのがすごく遅いけど、小さい頃から本を読むのが大好き。

大好きな作家は、ジョン・アーヴィング、筒井康隆、津原泰水、中上健次、桐野夏生、北村薫、金井美恵子、梨木果歩。

コンプリート中なのは宮部みゆき、恩田陸、松尾由美、三浦しをん、桐野夏生、北村薫。今のところ、多分著作は全部読んでいます。
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