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豚がつづる読書ブログ
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★★★

小学校の野球チームのエースピッチャーである少女アリスは、「大変だ、大変だ」と大慌てで走る宇佐木(うさぎ)という新聞記者を追いかけて、鏡の向こうの世界に迷い込んでしまう。

そこはすべてが左右逆さまの世界。
アリスの好きな野球も、そこでは負け進んだワースト1を決める試合がTV番組で放映され、嘲笑の的となっていた。
野球が笑われ、見下されることに憤慨するアリスは、地元の最弱チームに参加して状況を変えようとするが…。

講談社のミステリーランドというジュニア向けミステリの描きおろしシリーズの1冊。

ジュブナイルとしては説教臭い言い回しもあるので少年少女が楽しめるかどうかは少し疑問ですが、大人の読み物としてはなかなか面白かったです。
何よりもひたむきでまっすぐなアリスの思いがストレートに読み手の心を打ち、アリスを応援しながら素直に読むことができました。
中学では野球をやめるアリス(女子ゆえに野球部では活躍できなくなるので)が、「これが一生で最後だろう」と思いながらバッテリーの兵頭君に球を投げるシーンは、心に響きました!

読後、アリスの今後が気になりました。
選手じゃなくても野球に何らかの形でずっと関わってほしいし、性差を感じることが無いような違うジャンルでも頑張ってほしいですね~。

(2020年2月読了)
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★★★★

大手出版社・文宝出版に勤める文芸編集者の美希。

美希が会社で起こった小さな出来事や謎を実家に持ち帰ると、定年間際の高校教師の父親がたちまち解決してくれるという安楽椅子探偵もの。

こういうのが読みたかったんだ!としみじみ感動しながら読了。

娘が身の回りの「日常の謎」を中野在住の実家の父に持っていくと見事に解決してくれるという、お決まりのパターンで終わる8編の短編集です。
1話ごとの分量は少なめで、どれも結論がすっきりと端正で美しい。

このお父さん、ほんとに凄いんですよねー。
見た目は地味だしおなかも出てるけど、博識ぶりや洞察力が半端ない。
娘の美希が帰ってくると嬉しくてたまらないみたいで、ちょっと甘やかし過ぎなところもスキがあって可愛い。
そして謎だけではなく、輻輳する人間交差点を見事に解きほぐしてくれ、気持ちもすっきりさせてくれます。
父娘のあたたかな交流を描くとともに、時間の流れを感じさせる無常さが行間からにじんでくる演出もニクい。

ただ、お父さんが博覧強記すぎてついていけないこともありました。
読み手のこちらとしては国文学にすごく造詣が深いわけではないので、高踏な謎解きをされても「ふーん…」で終わることも。
落語や歌舞伎まで話が広がっていく短編「闇の吉原」は、謎じたいが高踏すぎて、やや鼻についてしまいました。
(わたしの教養が無いせいです、すみません…)

美希の編集者の同僚たちも、いい味を出していてどのキャラも良かったです。

同僚の言葉で印象に残ったセリフ。
「事実で説明出来るものって、すっきりはするけど、可能性の翼をたたませるところがある。解釈の冒険って、いかにも人間らしいじゃない」
こういうセリフがさらっと出てくるのが北村薫節ですよねー。好き。

読み終わるのがもったいない、と久しぶりに体感した一冊でした。

(2019年6月読了)

★★★

人生の大切なことは、すべて本とお酒に教わった――女性編集者の都を中心とした、お酒と仕事のお話。
大切な原稿をなくしたり、玄関で寝てしまったり。
彼女と周囲が引き起こす酔っ払い伝説は、枚挙にいとまがない。

二ノ宮知子の「平成よっぱらい研究所」の小説版を読んでいるようで、終始にやにやしながら読みました。
酒にまつわる自分の思い出も蘇ってきて、苦いものがこみあげてきます。

ライトなお話だなあと読み進めていくと、仲良しの男性同僚の結婚を祝う会での、都の同僚の醜態エピソードに心が揺さぶられました。
さらっとした描写なのに、すっと横に来てぐっと心を掴まれる感じ。
作者の抜群のストーリーテリングには、心の柔らかいところを押されっぱなしです。

時には酔いに委ねて、傷みややり切れなさを漏らしながら、明日を生きる活力にしてゆく。
大人のほうがより楽しめるお話でした。

(2011年11月読了)

★★★★★5つ!

財閥令嬢の英子と運転手のベッキーさんが出会う三つの事件を描いた短編集。

昭和初期のレトロで寓話めいた雰囲気が漂う中、周囲で起こる事件の様相を英子は彼女なりに受け止め咀嚼する。
過去が明らかになったベッキーさんを諭す英子の強さに、前作よりも成長の度合いが伺える。

はっとさせられたのが、あの有名な与謝野晶子の詩の解釈。
晶子の弟の立場に注視し、英子の兄に奇麗事だと言わせるあたりが、まさに北村薫らしい眼差しだと思う。

「わたし達が進めるのは前だけよ。なぜ、こんなことになったのか。このことを胸に刻んで、生きていくしかないのだわ」
軍靴の音が近づきつつある不穏な時代、これからの展開が厳しくなりそうな予感の中で、英子のこの言葉が心に残る。

★★★★

ホラーあり、落語調の楽しげな話やじんとくる話あり、彩りあざやかな短編集。
どれも一筋縄ではいかない短編ばかり。

北村さんて、日々の生活ではすぐに埋もれてしまうようなニッチな感情をすくい上げて描写するのがうまいなと思います。

他の作品と同様に、流れる時の中での人の心というテーマが底流を流れていると思うのですが、今回は親子間の情をつづったものが多くて胸が熱くなりました。

(2008年1月読了)

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sis
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趣味:
読書
自己紹介:
読むのがすごく遅いけど、小さい頃から本を読むのが大好き。

大好きな作家は、ジョン・アーヴィング、筒井康隆、津原泰水、中上健次、桐野夏生、北村薫、金井美恵子、梨木果歩。

コンプリート中なのは宮部みゆき、恩田陸、松尾由美、三浦しをん、桐野夏生、北村薫。今のところ、多分著作は全部読んでいます。
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