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豚がつづる読書ブログ
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★★★★★5つ!

母親を事故で亡くしてから、静かに孤独に暮らす燈真。
ある日ニュースで作家である父の死を知るが、認知もされていない自分には関係ないことだと思っていた。
正妻の子である異母兄から父の遺稿探しを依頼され、渋々引き受けたが――。

電子書籍化不可能という前評判は聞いていたけど、あまり詳細な情報を入れずに読んでみたところ、終盤で明かされた仕掛けに「おお!!!!」と唸ってしまいました。  
全然仕掛けに気付かなかったので、作者にとっては騙しがいのある良い読み手じゃないだろうか、私って…。

仕掛けが話題になっているけども、ストーリー自体も読みごたえがありました。
父の関係者に話を聞いてまわる内に、愚かだけど魅力的な人物像が明らかになっていく。
主人公の父に対する気持ちが変化していく様が、読み手の心も温かくさせてくれる。
霧子さん、母の恵美、編集者など、本に携わる登場人物たちの、本への熱烈な愛情と好奇心も共感できるし、何だか嬉しい気持ちになる。
遠くからしか示せなかった愛情と、継がれていく、祈りにも似た営み。切ない。

読み終わって、色んな思いを受け取った感じがする。

読んでみて!と周囲にお勧めしたくなるお話でした。

(2024年6月読了)
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盤上のアルファ (講談社文庫) 盤上のアルファ (講談社文庫)
塩田 武士

講談社 2014-02-14

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★★★

性格の悪さが災いし、県警担当記者から文化部に左遷されてしまった新聞記者の秋葉隼介。
失意の秋葉は行きつけの飲み屋でアマチュア将棋指しの真田と偶然出会う。
その日から秋葉と、人生の起死回生をかけて三段リーグ編入試験に挑む真田との奇妙な共同生活が始まった。

リーダビリティが高く、最後まで一気呵成に読んでしまいました。
信じる道しか進むことのできない男の熱い想いに魂が揺さぶられ、生きる力のほとばしりに火照ってしまいました!
登場人物たちの話す関西弁のリズムもテンポの良さを助長していて、緊張感の中に漂う適度なユーモアが読んでいて楽しかったです。

ただ、あっという間に読み終えた時は気づかなかったのですが、ちょっと構成のバランスが悪かったように思います。
秋葉が左遷されて慣れない文化部の記者として戸惑うくだりと、真田の悲惨な少年時代の回想シーンだけで小説の半分が費やされます。
前半はやたらと密度が濃いので後半はどんな怒涛の展開となるのだろうと期待してしまうのですが、真田が苦しみながら将棋に真剣に向き合うという、意外に常識の枠組みをはずれない王道展開に少し物足りなさを感じました。

(2016年9月読了)
君の膵臓をたべたい 君の膵臓をたべたい
住野 よる

双葉社 2015-06-17

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★★★

主人公の「僕」は他人と深く関わろうとしない孤独を好む高校生。
そんな彼が病院でノートを拾ったことからクラスメイトの咲良と関わることになる。
ノートには咲良が膵臓の病気を患い余命が長くないことが書かれており、その日から「僕」が咲良に振り回される日々がはじまった。

ライトな語り口で軽妙に交わされる会話がラノベっぽくて慣れなかったのですが、案外このノリが良かったです。
書きようによっては深刻で暗い話になるところを、このライトさが救っていてテンポよくお話が進んでいきます。

病気のことを家族以外の他人には明かしていない咲良にとっては、わざとらしく同情を寄せたりしない「僕」にはどんどん信頼をおくようになり、「僕」も「僕」で、華やかな咲良は苦手だけども少しずつ自分の領域に入ってくる彼女を無視もできず意識してしまい・・・という、なんとも不思議で微妙な関係性がたまらなくツボです。

そして、二人に訪れる意外な結末。
彼らの気持ちが通じ合い、成長をもたらすという点ではハッピーエンドだと思いました。

人は計らずともいろんな人との関わりの中で生きているのだというラストの情景が秀逸。
新しい世界へ若者が飛び立っていく姿は清々しく、感動的です。

(2016年6月読了)
ケシゴムは嘘を消せない (講談社文庫) ケシゴムは嘘を消せない (講談社文庫)
白河 三兎

講談社 2014-01-15

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★★★

離婚が成立し、自宅でひとりやけ酒をあおる男の元に姿の見えない女が現れた。
男は「暇なら飲まないか」と誘い二人は意気投合する。
女は大きな「組合」に追われていると言い、男は彼女を匿い、守ることにした。
奇妙で不思議な同棲生活の行方は・・・。

白河作品はどの作品も、なんだか地に足がついていないようなふわふわとした読み心地がします。
たぶんそれは、終盤に明かされる真実を隠すために、わざと登場人物達の心の動きが読めないようにしているせいなんだと思います。
それが、登場人物たちのつかみどころのないちぐはぐな言動に現れ、独特のフェイク感を醸し出してるんですよね。
面白くないこともないのですが、他の作品も毎回そんな感じなのでちょっともやっとします。

親子の愛情、仕事と自己実現などといった誰もがぶつかるテーマを描いているので読みごたえもあったのですが、透明人間の設定がどうしても緊迫感を削ぐというか、コメディっぽく感じられて集中できませんでした。

(2015年12月読了)
リバーサイド・チルドレン (ミステリ・フロンティア) リバーサイド・チルドレン (ミステリ・フロンティア)
梓崎 優

東京創元社 2013-09-11

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★★

カンボジアで親に捨てられ、親のいない同じ境遇の少年たちと川沿いの小屋で暮らす日本人のミサキ。
彼らはごみ捨て場でペットボトルやビニールを拾い集め、1日1ドルにも満たない現金に換えて暮らしている。
警官から逃げまわり、食べ物を手に入れることに追われる日々の中、仲間が一人、また一人と殺されていく──。

前作「叫びと祈り」と同様に、日本人の感覚では測れない異国の世界観の中での殺人を取り扱っています。
本作では、日本では馴染みのないストリートチルドレンたちの日常や彼らを取り巻く状況について丁寧に描写を重ね、説得力のある事件の背景を見事に描き出しています。
それゆえ、犯人の動機が納得できるものとなり、世界の貧困問題に切実に読者を直面させることに成功していると思いました。

前を向こうとする少年たちの姿には、社会のあり方について思いを巡らす時、深い示唆を与えてくれます。

ミステリ的なロジック構成の巧さや抒情的な文章も素晴らしかったのですが、腑に落ちない点もいくつかあり(主人公のミサキが親に捨てられた理由や、取ってつけたかのような旅人の存在など)、ちょっとピンとこないところもありました。

(2014年1月読了)

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プロフィール
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sis
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非公開
趣味:
読書
自己紹介:
読むのがすごく遅いけど、小さい頃から本を読むのが大好き。

大好きな作家は、ジョン・アーヴィング、筒井康隆、津原泰水、中上健次、桐野夏生、北村薫、金井美恵子、梨木果歩。

コンプリート中なのは宮部みゆき、恩田陸、松尾由美、三浦しをん、桐野夏生、北村薫。今のところ、多分著作は全部読んでいます。
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