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豚がつづる読書ブログ
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★★★


明治天皇崩御に際し、渋沢栄一ら政財界人は神宮を帝都に創建すべしと主張するが、林学者の本郷高徳らは風土の適さぬ土地に森を造るのは不可能と反論し、大激論となる。
大衆紙の記者瀬尾亮一は神宮造営を調べる同僚に助力するうち、取材にのめり込んでいく・・・。

明治神宮造営という観点から明治時代がどのような時代だったかを紐解いていく物語。
かなり堅苦しい主題ですが、さすがは朝井まかてさん。
一般市民の記者という神宮造営の「外」の視点から専門的なことも噛み砕いてやわらかく語られていくので、読み手も興味をつないでどんどん読み進めていくことができます。

しかもこの主人公の亮一という男、記者という立場を利用して、醜聞をネタに金持ちから金を巻き上げるチンピラみたいな奴なのです。
帝大を中退し大手新聞社をトラブルで辞め三流紙に落ちぶれたという経歴のせいか、仕事のモチベも失い何だかやさぐれている。
そんな亮一が、同僚の活発な女性記者に触発され、神宮造営を取材していくうちに記者魂が目覚めていく。
次第に激動期の日本を支えた明治天皇の生涯に思いを馳せ、独自取材を進めていくようになります。
このへんの描写が非常に巧みで、亮一の心情変化には違和感なく自然に納得できました。

天皇を精神的支柱として敬い親しんできた民衆の思い。
そして、近代国家へと変貌する時代の流れに添い、前例のない天皇としての役割を課され、苦悩しながら模索していく明治天皇の姿。
天皇とは何か、日本人にとって天皇の存在はどういうものなのかという、現代においても問いかけられる命題に真正面から取り組み、その正体をあらわにしていく作者の手腕には鳥肌が立ち、言葉にならないほどの感銘を受けました。

明治神宮という美しい森が歴代の人々の努力と熱意によって作り上げられた事と同じように、今の日本人の根幹も同じ経緯でを築かれたのだと、気づかされました。

(2020年8月読了)
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読むのがすごく遅いけど、小さい頃から本を読むのが大好き。

大好きな作家は、ジョン・アーヴィング、筒井康隆、津原泰水、中上健次、桐野夏生、北村薫、金井美恵子、梨木果歩。

コンプリート中なのは宮部みゆき、恩田陸、松尾由美、三浦しをん、桐野夏生、北村薫。今のところ、多分著作は全部読んでいます。
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