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豚がつづる読書ブログ
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★★★

主人公は、見た目は冴えないが美声を持つラジオパーソナリティの恭太郎。

ラジオの収録後、常連のバー「if」で飲んでいると全身ずぶ濡れの若い女性・恵が現れた。
思いがけず恵を騙すことになってしまったバーの常連たちは、彼女の復讐計画に巻き込まれることになる…。

中盤まで、何となく違和感とちぐはぐさを感じつつ、職業も年齢もバラバラでクセの強いバーの常連たちの軽妙な会話のやり取りが楽しくてどんどん先を読んじゃいます。
テンポの良いコミカルな語り口はページをめくる推進力となったものの、だんだん展開がモタついてきて何だかイヤな予感…。

そして終盤…ちょっとドタバタアクションが冗長で退屈だったけど、怒涛の展開に。

ラストはじわりと涙が出てきましたが…ちょっとズルいよねー。
こんなラストでは泣く人も多いだろうに、取ってつけたようなオチになっていて反則だと思いました。
後出しジャンケンでもいいんだけど、もっと良いやり方があったはず。
最後が唐突すぎて、気持ちよく騙された感じがしないのです。
小説って微妙で絶妙なさじ加減と伏線で成り立っているのだなー、と再認識させてくれました。

嘘や虚構が人を守り救ってくれるというテーマはすごく感動しました。
目に見えないものを信じたっていいよね!

(2019年6月読了)
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★★★

死んだ妻に会うために霊現象探求所を構えている真備。

真備とその助手の凛、売れない作家の道尾が様々な事件を解決していく。

真備庄介シリーズの短編集。
前作のように霊現象を探究するようなエピソードは無いけども、真相から読者の視線を逸らして誤った方向に促し、最後に謎が解かれた時にものがなしい物語が浮かび上がる、というミステリのようなサスペンスのような、「奇妙な味」が冴えわたる短編集となっています。

一番心に残ったのは最後に据えられた「花と氷」。
優しい余韻を残す、作者のまなざしが暖かいお話でした。
弱く哀しい人間心理を鮮やかに紐解いて見せる手腕が見事で、上質なミステリへと昇華させています。

真備庄介シリーズはこの3冊までで、10年も新作が出版されていません。
このシリーズは「探偵と助手が主人公のホラーミステリ」という一定の枠の中で展開するストーリーなので、多分、作者は枠にとらわれない色んなテーマや構成の作品を描きたいから新作が出ないのかな?と思うのですがどうなんでしょうか。
私はこのシリーズが好きなので、いつか続きを読みたいです。

(2019年1月読了)
貘の檻 (新潮文庫) 貘の檻 (新潮文庫)
道尾 秀介

新潮社 2016-12-23

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★★★

精神を病み離婚した辰夫は、息子との面会の帰り、女性が列車に轢かれて死ぬのを目の当たりにする。
その女性は、かつて父親が犯した殺人に関わり、行方不明だった曾木美禰子だった。
32年前に辰夫の父に殺されたはずの彼女がなぜ今更現れたのか。
真実を求めて辰男は息子を連れて故郷を訪れるが、次々と不可解なことが起こり…。

故郷のO村で辰夫は32年前のことを調べようとするのですが、思い出したくない記憶が蘇り、悪夢にうなされることに。
この悪夢の描写や、村を取材しているクセのあるカメラマン、村の閉鎖的な状況などがただならぬ感じをにおわせ、これから起こる事件を否が応でも盛り上げる雰囲気にゾクゾクしました。

あまりにも陰鬱な重い読み心地に中々ページが進まなかったのでちょっと流し読みしてしまったのですが、終盤は一気に展開が進みさくさく読み進められました。

幻想的なシーンを盛り立てる描写力は健在だと思いましたが、オチとしては少し安易に流れた感があり、「普通…」という感想です。

(2017年3月読了)
ソロモンの犬 (文春文庫) ソロモンの犬 (文春文庫)
道尾 秀介

文藝春秋 2010-03

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★★★

大学生の秋内が突然雨に降られて喫茶店に入ると、そこに同級生の京也、ひろ子と智佳が偶然やってきた。
秋内は3人に「この中に人殺しがいるのかいないのかをはっきりさせよう」と告げる。
そして2週間前の事故について語られていく…。

序盤は、恋には奥手でメッセンジャーのバイトをしているごく普通の大学生男子の青春生活が活写されています。
作者にはいつも騙されてばかりなので、伏線が無いかどうか目を皿のようにして読みましたが・・・全然わからず。
大学生にしては幼い主人公には裏があるんじゃないかとか、いまいち何を考えているか底が知れない友人たちの言動をくまなくチェックしたりしましたが、今回もまんまと騙されました…。

作者の卓越したミスディレクションに転がされて今回も真実にたどり着けなかったのですが、論理的には綺麗に解決しているとは言いがたいような…、説得力に欠ける気がしました。

動物の生態をうまく使った点はギミックが効いていて面白かったのですが、トリックありきの謎という印象が強く、登場人物たちの薄っぺらさ同様、あまりそそられませんでした。

あと、道尾さんの作品って〇〇がひどい目に遭う話が多いので、どうにも辛いです。
どうしても慣れない。何とかならないのか…。

(2016年11月読了)
笑うハーレキン (中公文庫) 笑うハーレキン (中公文庫)
道尾 秀介

中央公論新社 2016-01-21

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★★★★

川辺の空き地に住みついたホームレス仲間と助け合いながら、家具の出張修理で日銭を稼ぐ主人公・東口。
家族も経営していた会社も失い、疫病神の幻影が見える彼のもとに弟子入りを希望する謎めいた若い女性が現れる。
彼女の登場により、東口と仲間の生活に徐々に波風が立ち始めるが…。

コミカルな冒頭からホームレス仲間との軽妙洒脱な会話が続き、不遇な状況を楽しむ彼らの明るい雰囲気の中、物語は始まります。
彼らはお互いを優しく思いやり合いながら精一杯日々を送っていますが、社会から脱落した葛藤や疎外に苦しむ様子が窺え、漂うペーソスが切なすぎます。
己を卑下するとともに同じ境遇の仲間を下に見てしまったり、社会とつながっていたくて毎日図書館に通い新聞を読んだり。
自分も同じ立場になったらそうなるだろうなと思わせるリアリティを感じました。

(2016年11月読了)
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プロフィール
HN:
sis
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非公開
趣味:
読書
自己紹介:
読むのがすごく遅いけど、小さい頃から本を読むのが大好き。

大好きな作家は、ジョン・アーヴィング、筒井康隆、津原泰水、中上健次、桐野夏生、北村薫、金井美恵子、梨木果歩。

コンプリート中なのは宮部みゆき、恩田陸、松尾由美、三浦しをん、桐野夏生、北村薫。今のところ、多分著作は全部読んでいます。
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