忍者ブログ
豚がつづる読書ブログ
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

ふちなしのかがみ (角川文庫) ふちなしのかがみ (角川文庫)
辻村 深月

角川書店(角川グループパブリッシング) 2012-06-22

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

★★★

花子さんやコックリさん、紫の鏡など、誰もが知っているであろう怪談話を土台に、著者らしいミステリ要素を散りばめた、著者初のホラー短編集。

子どもの頃に誰もが知っていた怪談話がモチーフとなっており、懐かしいなあ~とのんきな気持ちで最初は読み始めました。
すると、途中からじわじわと真綿で絞められるかのように怖くなってきて、夜中に読むのを中断してしまいました。(翌日、昼間に読みました…)

恐怖を煽りたてるような文章の雰囲気も怖いのですが、教室内ヒエラルキーに脅かされる子どものよるべなさ、存在への根源的な不安みたいなものが染み入るように伝わってきて、最後は不安感でいっぱいになっちゃいました。

ミステリ的なオチのあるお話もありましたが、私が好きなのは、不条理な、「おとうさん、したいがあるよ」というお話。
理屈では解決できない謎の中に身を委ねる解放感を楽しむことができました。

軽くつついただけで崩れてしまうような、そんなあやうい繊細さを備えた短編集です。

(2014年1月読了)

PR
子どもたちは夜と遊ぶ (上) (講談社文庫) 子どもたちは夜と遊ぶ (上) (講談社文庫)
辻村 深月

講談社 2008-05-15

Amazonで詳しく見る
by G-Tools
子どもたちは夜と遊ぶ (下) (講談社文庫) 子どもたちは夜と遊ぶ (下) (講談社文庫)
辻村 深月

講談社 2008-05-15

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

★★★

米国留学がかかった論文コンクールで、D大学大学院の狐塚と浅葱は最優秀賞候補と目されていた。
しかし、選ばれたのはiという謎の人物で、結局、iは最後まで正体を現さなかった。
2年後、iの正体を探っていた浅葱はiから意外な事実をつきつけられ、殺人ゲームに誘われる――。


長い長いお話。上下巻で、かなりのボリュームです。
登場人物たちの気持ちをとっても丁寧に掘り下げて描いているので、こんなに長くなってしまうんですね。
それがちょっと物語の流れを止めてしまい中だるみになっているのですが、後半になるにつれ、テンポ良く怒涛のごとく話が進行していくので、一気に読んでしまいました。

殺人ゲームに振り回されて狂気に陥っていく浅葱の心理描写がこのお話の一番のキモなのですが、いつまでもこの悪夢のような物語を終わらせない妖しさがあり、読みごたえ抜群でした。

でも、切ないお話ではあるのですが、いっぱいツッコミどころがあると思いますね~。

まず、ミステリだと思って読むとガッカリさせてくれました。
読者に提示される手がかりがフェアではない気がします。(冒頭の1行目。これはアウトでしょ・・・)
ミステリ寄りなサスペンス、って感じです。

また、登場人物達の、若い頃ならではの強烈な自意識や潔癖さが、痛々しくって恥ずかしかった!
タイトルから類推するに、大人になりきれない子ども達の葛藤や切実さを描いているのでしょうが、青春時代が過去のものとなりつつある身にとっては、どうもね。
彼らの気持ちが解る分、恥ずかし過ぎるのよね。
勿論、そのアンバランスさが魅力的なんでしょうけどね。

しかも、リアルなキャラクターならともかく、設定も会話も全くリアルじゃないのでいまいち話に入りこめなかったです。
特に、主人公格の月子が、女子受けしない、友達になりたくない女の子だから、もう…。
「冷たい校舎の~」や「スロウハイツの神様」もそうだったけど、辻村作品の主人公の女の子にまったく共感できません。
そういう読者も結構多いと思うので、余計なお世話かもしれませんが、もったいないと思うなあ…。

(2013年12月読了)

冷たい校舎の時は止まる(上) (講談社文庫) 冷たい校舎の時は止まる(上) (講談社文庫)
辻村 深月

講談社 2007-08-11

Amazonで詳しく見る
by G-Tools
冷たい校舎の時は止まる(下) (講談社文庫) 冷たい校舎の時は止まる(下) (講談社文庫)
辻村 深月

講談社 2007-08-11

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

★★★

ある雪の日、いつものように通学してきたのに時間の止まってしまった校舎の中に閉じこめられてしまった8人の高校生。
開かない扉、無人の教室。不可解な状況の中で、彼らは2ヵ月前の学園祭で自殺した同級生のことを思い出した。
しかし、その顔と名前を誰も思い出せないことに気付き、自殺者が8人の中にいるのではないかと疑い出す。
疑心暗鬼でいっぱいになった彼らは追いつめられていき、そして一人ずつ姿を消していく…。

 

誰かの精神世界という異空間で繰り広げられる、本格ミステリ。
でも、単なるホラー風ミステリにせず、人の心の柔らかい感情に訴える物語にしているところが心憎い。

思春期特有の傲慢さと繊細さの合間に横たわっている、少年少女達の息苦しさ、よるべなさ。
生きることへの根源的な不安がしんしんと沁みわたる。

ただ、キャラクターにあまり感情移入できなかったので、いまいちな印象。
男の子は古い少女漫画に出てくる感じの子ばかりだし、主人公の辻村深月が痛々しすぎる。
この主人公、一言で言うとカマトト(死語)なのですが、こんな被害者意識も甚だしいいけすかないキャラに筆名と同じ名前を与える作者の辻村さんって、不思議。

そんなわけで、特異なフォーマットは面白かったものの、手放しで楽しめた!という感じではありませんでした。

(2013年1月読了)

★★★★

「スロウハイツ」というアパートで共同生活を送るクリエイターの卵たちのお話。

上巻は、アクの強い性格の環を中心とした住人達の紹介がメイン。
少し過剰に、丁寧になぞられ、お互いに刺激し合いながら夢を追いかける彼らの日常を楽しんだ。

下巻から物語が大きく動き始め、散りばめられたさりげない伏線が終焉に向って収斂していく。

絶望を知っている人たちがつく優しい嘘が至るところに配置され、あたたかい雰囲気を形作っている。
それは偽善かもしれないが、最後まで貫き通すことによって真実となる、と思わせてくれる。

優しい楽園を手放すことから、それぞれの未来に道筋を見つけてゆくというラストも良かった。

(2011年9月読了)

カレンダー
04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
フリーエリア
最新TB
プロフィール
HN:
sis
性別:
非公開
趣味:
読書
自己紹介:
読むのがすごく遅いけど、小さい頃から本を読むのが大好き。

大好きな作家は、ジョン・アーヴィング、筒井康隆、津原泰水、中上健次、桐野夏生、北村薫、金井美恵子、梨木果歩。

コンプリート中なのは宮部みゆき、恩田陸、松尾由美、三浦しをん、桐野夏生、北村薫。今のところ、多分著作は全部読んでいます。
バーコード
ブログ内検索
カウンター
アクセス解析

Copyright © [ 豚は無慈悲な夜の女王 ] All rights reserved.
Special Template : 忍者ブログ de テンプレート
Special Thanks : 忍者ブログ
Commercial message : [PR]