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水底フェスタ (文春文庫) 水底フェスタ (文春文庫)
辻村 深月

文藝春秋 2014-08-06

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★★★

昔からのしがらみが残る閉鎖的な村が誘致した野外フェスティバルで、村長の息子・広海は由貴美と出会う。
村を捨て東京へ出て行ったモデルの由貴美に広海は魅了され、「村への復讐に協力してほしい」という彼女の企みに応じることになったが、実は由貴美には真の目的があった。

タイトルからは予想もつかない内容で、非常に怖いお話でした。

まず、古い因習に縛られたいわゆる「田舎」の描写がいかにもありそうで、そこはかとなくリアル。
村ぐるみでどんな不都合も隠蔽する排他的な共同体の様子が細かくスケッチされていて、過剰な展開も絵空事でないと思わせてくれます。

そして、穏やかだけれども退屈な日常に倦み閉塞感を覚えている広海は、由貴美という外部の「異端」に触れたことによって、信じていた世界がガラガラと音を立てて崩れ、それらが実は欺瞞に満ちたものだとわかってしまうのです。
・・・ほんと、救いの無い話。

一番哀れだったのは、由貴美でしょう。
因習を嫌って村を出て行ったはずの彼女がいちばん村に囚われ、身動きがとれない状態。
仕事や人間関係に傷ついた彼女は「血縁」(=究極の地縁)という拠り所を求めていただけなのに、それを広海の父親に否定され・・・、ただただ可哀想でした。

今まで辻村さんの作品は、自意識過剰な思春期の子ども達が閉鎖的な空間(学校)で事件を起こすといったパターンが多かったのですが、このお話もムラ社会という閉じた舞台ではあるものの「大人の理屈」がまかり通る薄汚れた話だったので、こんなのも描けるんだなー、と意外でした。

あと、ファムファタールとしての由貴美が全く魅力的じゃなかったです。
「芸能人」「すごく綺麗」というアイコンはしきりに強調されるんだけど彼女の魅力がちっとも描写されないから、なんだか物語のために動かすコマみたいに感じてしまい、白けてしまいました。

(2015年1月読了)
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自己紹介:
読むのがすごく遅いけど、小さい頃から本を読むのが大好き。

大好きな作家は、ジョン・アーヴィング、筒井康隆、津原泰水、中上健次、桐野夏生、北村薫、金井美恵子、梨木果歩。

コンプリート中なのは宮部みゆき、恩田陸、松尾由美、三浦しをん、桐野夏生、北村薫。今のところ、多分著作は全部読んでいます。
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