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豚がつづる読書ブログ
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母性 (新潮文庫) 母性 (新潮文庫)
湊 かなえ

新潮社 2015-06-26

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★★★

母と娘が過去を回想していく物語。
庭に花が咲く高台の小さな家で親子三人は幸せな日々を送っていた。
しかし、泊まりにきていた母親の母親が土砂崩れで亡くなった時に幸せな暮らしは一瞬にして崩れ去った。
一家は父親の実家に住むことになり、母親にとって地獄のような生活が始まった・・・。

異常なマザコンの母親と、母の愛を渇望しながらも愛されない娘の回想が交互に語られていきます。

最初から不穏な空気が立ち込め、不安定なざらざらとした手触りの物語空間を構築しています。
ゾクゾクしながら読み進めました。

母親は自分の母親にべったり依存し、母がどうしたら喜んでくれるか、自分をほめてくれるか、行動の全てがそれが基準になっています。
母親は娘にも同じ依存関係を強要し、自分の理想像を押し付けてきます。
娘は母に応えようとするが、成長とともに違和感を感じ、母からの無償の愛を得られないことに苦しむようになります。
人は、育てられたのと同じやり方でしか人を愛することができないので、この母親は歪んだ愛を娘に与えることしかできないんですね。

母親と娘が、それぞれ自分の母親の愛を求めるさまは信仰や報われない恋にも似ていて、とても切なくなりました。

生んだだけでは母親になれない。
母性の正体について考えさせられました。
子どもに捧げる無償の愛、自分の命を次世代に繋げていくための愛・・・。
愛するという行為は相手に伝わり心を満たしてこそ完成するものなのかもしれません。

このお話、どう着地させるのか気になって読み進めていくと・・・意外な結末でした。
母娘のわだかまりを解いてくれたのはなんと「時間」なんですよね。
衝撃的な結末などではなく「時間」というのがとてもリアルです。

真実が明らかになるとき、趣向を凝らしたミステリの貌で読者をあっといわせるのがこの著者の常道ですが、今回は曖昧な結末がなんだか物語の切れ味を鈍くしている気がしました。

それにしても、家庭内での父親の存在感の無さ!!・・・怖すぎです。

(2017年1月読了)
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読書
自己紹介:
読むのがすごく遅いけど、小さい頃から本を読むのが大好き。

大好きな作家は、ジョン・アーヴィング、筒井康隆、津原泰水、中上健次、桐野夏生、北村薫、金井美恵子、梨木果歩。

コンプリート中なのは宮部みゆき、恩田陸、松尾由美、三浦しをん、桐野夏生、北村薫。今のところ、多分著作は全部読んでいます。
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