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豚がつづる読書ブログ
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白の祝宴 (逸文紫式部日記 ) 白の祝宴 (逸文紫式部日記 )
森谷 明子

東京創元社 2011-03-24
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★★★★

「千年の黙」に続く平安朝ミステリ絵巻の第二弾。

女房たちが記した中宮彰子の出産の記録をまとめてほしいとの要請にこたえ、再出仕した香子(紫式部)。
その中宮の屋敷に逃げこんだ手負いの賊の行方を、式部と侍女の阿手木の探偵役コンビが解き明かす。

盗賊事件の謎を縦軸、「紫式部日記」の成立過程と隠された謎にまつわる物語が横軸となっています。

縦軸のミステリについては、多くの伏線が無駄なく有機的に結びついていて、見事に結論へと導かれます。
人の機微を客観的に眺めることのできる紫式部ならではの視点に唸らされました。
若宮誕生の祝宴の影には、様々な思惑や閉塞感あふれる女性の世界が垣間見え、読みごたえがありました。
前作では少女だった阿手木が、夫の義清と夫婦として絆を深めていく様子にもほろりとさせられます。

そして、横軸である「紫式部日記」の謎。
千年も物語が語り継がれてきた理由が明らかになる時、不自由でままならぬ世を生きる無名の女性たちへ投げかける作者の温かい眼差しの存在を感じ、胸が熱くなりました。
後の世まで読み継がれた物語の歴史は、読み手の生きる力となってきた歴史でもあったという物語の広がりに、いつまでも深い余韻が胸に残りました。

(2011年12月読了)
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七姫幻想七姫幻想
森谷 明子

双葉社 2006-02

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★★★★★5つ!

七夕の織姫の異称になぞらえて語られる、七編の連作ミステリー。

神代から江戸時代までの連綿とした時の流れの中で、泉のほとりで機織りをする姫君とその隠れ里にまつわる物語が、史実に絡みながら巧みに織り込まれている。
連作を読み終える頃には、一族の断片的な物語が繋ぎあわされ、まるで鮮やかで美しい織物を眺めるかのよう。

元々は古事記や万葉集、古今集の短歌から話を想像して書かれているので、読後に原典や史実を調べる楽しみもある。

姫君の一族の女たちの、したたかさと同時に揺らぎを抱えているような生き方も印象的。

文章がとても美しく、ゆかりの和歌も彩りを添えていて、幻想的で豊かな世界観が楽しめました。

(2011年7月読了)
★★★

小さな町のれんげ畑に囲まれた図書館を舞台とした日常ミステリ。
春から始まり季節をひとめぐり、次の春で終わる連作短編集。

日ごろ図書館にとてもお世話になっている身としては、その舞台設定だけで惹きつけられます。

最初の一、二編はほのぼのとしたミステリですが、終盤のお話は小さな悪意がもたらすほろ苦い読後感が印象的です。
綺麗ごとに終わらない感じが、とても良かった。

(2011年6月読了)

千年の黙―異本源氏物語千年の黙―異本源氏物語
森谷 明子

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★★★★★5つ!

平安時代を舞台に、紫式部を探偵役にしたミステリ。

第一部は失踪した猫を探すという日常の謎系のお話。

ワトソン役である、紫式部に仕える女童のあてきをを中心に登場人物が生き生きと描かれている。
あてきが情報収集のためにいろんな御屋敷を動きまわり、都の大路を駆け回る情景が鮮やかに浮かんでくるので、わくわくしました。
源氏物語が書かれた当時の雰囲気を味わいつくすことができます。

第二部は今でも文学史上の謎である源氏物語の幻の巻に迫ったミステリ。

源氏の一巻「輝く日の宮」の写本が出回っていないことに気付いた式部とあてき。
真相をめぐり、式部は権力者と対峙する。

物語というものは、一度作者の手を離れてしまえばもう読者に託すしかない…という式部の作家としての葛藤と矜持。
式部のそんな覚悟が、千年の時を超え、物語を通して読み手に響くのかもしれないと思うと、本好きとして鳥肌が立ちました。

(2011年2月読了)

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プロフィール
HN:
sis
性別:
非公開
趣味:
読書
自己紹介:
読むのがすごく遅いけど、小さい頃から本を読むのが大好き。

大好きな作家は、ジョン・アーヴィング、筒井康隆、津原泰水、中上健次、桐野夏生、北村薫、金井美恵子、梨木果歩。

コンプリート中なのは宮部みゆき、恩田陸、松尾由美、三浦しをん、桐野夏生、北村薫。今のところ、多分著作は全部読んでいます。
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