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豚がつづる読書ブログ
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★★★★

私有財産と個人の欲望を否定した理想郷の建設を目的として、かつて東北の寒村に作られた唯腕村。
しかし近年、過疎化や高齢化の影響は避けられず、創立者の孫・東一(といち)は共同体の維持にあえいでいた。
ある日、村にマヤという美少女が漂流してきたことをきっかけとして東一は暴走を始め、村を己の意のままに改革しようとする―。
 

高邁な理想を掲げてつくられたユートピアの内実は、ドロドロとした生臭い欲望にまみれた現実社会そのもの。
ユートピアが、その本来の意味である「どこにも無い場所」であることを皮肉にも実証している。

そんな村の純血種、欲望の申し子である東一のキャラクターが強烈。
自己中で貪欲で狡猾な東一の人間性に辟易しながらも、でももどこか愛嬌があって憎むことができない。
村を一度捨てるも、やっぱり村に囚われていて結局そこを拠り所とするしかない彼が何だかかわいそうになってくる。

母親に運命を翻弄され、東一の欲望に蹂躙される、少女であるマヤの無力さも痛ましい。
弱者である彼女が図太さを身につけ浮世をサバイブし、凡庸なカタルシスを抱かせないところが桐野作品らしい。

ただ、北と関わりのあるマヤの母親の物語が、本筋の唯腕村の物語にフィットしていない。
要素を詰め込みすぎていくつかのテーマはなおざりにされているため、お話としての強度を欠いている気がする。

面白いけど、なんかとっちらかっている印象を受けた。

(2011年7月読了)

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読むのがすごく遅いけど、小さい頃から本を読むのが大好き。

大好きな作家は、ジョン・アーヴィング、筒井康隆、津原泰水、中上健次、桐野夏生、北村薫、金井美恵子、梨木果歩。

コンプリート中なのは宮部みゆき、恩田陸、松尾由美、三浦しをん、桐野夏生、北村薫。今のところ、多分著作は全部読んでいます。
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