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豚がつづる読書ブログ
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迷子の王様: 君たちに明日はない5 迷子の王様: 君たちに明日はない5
垣根 涼介

新潮社 2014-05-22

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★★★★★5つ!

リストラ請負会社で働く真介は、今日もリストラ面談に明け暮れていた。
しかし、リストラ請負という仕事が社会的意義を失ったという社長の判断によって会社が廃業となり、
真介は岐路に立たされる。
シリーズ完結篇。

これで終わりなんて、ずいぶんあっさりしているなあ、というのが最初の感想。

でも、じわじわと、きます。

最終話のタイトルは「オン・ザ・ビーチ」。
これ、ジャック・ケルアックの「オン・ザ・ロード」を
もじっているのかなーと思いました。

沢木耕太郎さんの「深夜特急」で、主人公がすれ違った旅行者に「禅とは何か?」と
問われた時、「オン・ザ・ロード(途上である、ということだ)」と答えるのですが、
この「君たちに明日はない」シリーズも、「仕事、恋愛、ひいては人生とは、
常に途上であるということだ。」
っていうことを言いたいんじゃないかと。

前巻までは、真介と陽子は最終的に結婚するのかしら?と思っていたのですが、
「途上にある」ということなら、
ラストも納得できます。

結婚しても、しなくてもいい。
真介は誘われた仕事を選ぶかもしれないし、選ばないかもしれない。

全ては、その時点での最良の選択肢を選ぶという、「途上にある」ということ。

P108
「大事なことはなんだ。会社に残ることか。それとも次の就職先を探すことか。食うための仕事を探すことか。たぶん違う。そんなレベルじゃ、人は本当には生きられない。食うためだけに仕事をする人間は、いつの時代だって結局その仕事からは、永久に報われることはない」

P204
「今の時点で判断できないことは、また状況が変われば、その時に判断すればいい。そういう曖昧な自分を許しておく。というか、その時が来たら嫌でも判断せざるを得ない。そういう意味で、未来は常に不確定です。そしてその分だけ、気楽です。つまりぼくたちの今は、死ぬまでずっと連続した、一つの通過点でしかない」
「たぶん職業も暮らす環境も含めて、今というこの時間は、常に暫定仕様です。むしろその無常を意識して過ごすことに、意味があるんじゃないでしょうか」


シリーズを通して作者が読者に問いかけた「仕事とは?」「人生とは?」という問い。
作者は
心の底の深いところで納得できる、実にまっとうな回答を用意してくれました。

時々挿入される日本の経済情勢予想には作者の意見が反映されているようですが、
押しつけがましくは無いんだけどちょっと面映ゆかったです・・・。


(2014年10月読了)
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sis
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非公開
趣味:
読書
自己紹介:
読むのがすごく遅いけど、小さい頃から本を読むのが大好き。

大好きな作家は、ジョン・アーヴィング、筒井康隆、津原泰水、中上健次、桐野夏生、北村薫、金井美恵子、梨木果歩。

コンプリート中なのは宮部みゆき、恩田陸、松尾由美、三浦しをん、桐野夏生、北村薫。今のところ、多分著作は全部読んでいます。
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