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贖罪の奏鳴曲 中山 七里 講談社 2011-12-22 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
★★★
物語は弁護士の御子柴が豪雨の中、死体を捨てに行くシーンから始まる。
死体を調べた警察は御子柴に辿りつき事情を聞くが、彼には死亡推定時刻は法廷で弁護していたという鉄壁のアリバイがあった。
御子柴を調べた刑事たちは、彼がかつて猟奇殺人を犯した過去があったことを知る。
罪を犯した人間ははたして改心できるのか―?
悪か正義か、謎の人物を軸に据えた先の読めない物語運びには緊迫感があり、一気読みでした。
罪人が罪を贖うのは、ただ救われたいだけ。
何をしたら罪を償うと言えるのか、贖罪というテーマに迫った作者の姿勢には感嘆しました。
ただ、作者が主人公に肩入れしすぎているせいか、エピソードを詰め込み過ぎているせいなのか、ストーリーが過去に飛んで詳細に書き込まれたかと思うとさっと次のエピソードに移ったりと、物語の変調が多く、主題に集中させてくれないので少し読みにくかったです。
また、中盤の医療少年院時代のエピソードがやたら長く、御子柴がどのような経緯で現在の心境に至ったのか十分に納得できたのですが、やっぱり長すぎて他の章とは有機的にストーリーが絡んでいない気がしました。
御子柴の心を揺さぶったピアノの演奏者のその後も気になるし・・・。
(調べたら、他の作品で出てくるようですね)
続編があるらしいので、次も読んでみたいです。
(2013年3月読了)
おやすみラフマニノフ (宝島社文庫) 中山 七里 宝島社 2011-09-06 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
★★★★
『さよならドビュッシー』の姉妹作。
音大に通う貧乏学生の晶は、プロへの切符をつかむために学内演奏会のオーディションの練習に励んでいた。
必死の練習の甲斐もあり、コンマスに選ばれた晶だったが、完全密室で保管されていた時価2億円のストラディバリウスが盗まれ、脅迫状も届く。
一体誰が、なぜコンサートを妨害しようとするのか―?
ミステリ要素が薄かった前作よりも、いっそう謎が小粒かつ杜撰。
最初から犯人も予想がついてしまうし、ストーリーもどこかで読んだことがあるかのような内容なのですが・・・
やっぱり音楽の描写が素晴らしい!
情緒に流されず、理論的かつ的確な言葉で紡がれる演奏描写の迫力は、鳥肌もの。
演奏者と一体になっているような体感を味わうことができ、音楽をこんなにも言葉で再現できるのかと、比類のない表現力の高さに驚きます。
音楽が人を勇気づけ、生きる力となると言及していることに、深い感動を覚えました。
これで、もうちょっとお話部分やミステリ部分が凝っていると傑作なのに・・・残念です。
せっかく音大生のオケの話なんだから青春群像劇にすればいいのに、ステレオタイプなキャラばかりだし、セリフ回しや展開も一昔前の漫画みたいなありきたりな感じだし・・・。
次回作もこんな感じだったら、もう読まないかも。
(2013年2月読了)
さよならドビュッシー (宝島社文庫) 中山 七里 宝島社 2011-01-12 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
★★★★
裕福な家庭に育ち、ピアニストを目指す遥は、家族やいとこに囲まれ何一つ申し分のない生活を送っていた。
しかしある日、火事により祖父といとこのルシアを失い、自らも後遺症の残る大火傷を負ってしまう。
懸命のリハビリと天才ピアニストの指導によって再びピアニストを目指す遥だが、周囲では不穏な事件が次々と起こる…。
「このミス」大賞作品ですが、ミステリ部分はお粗末というか、おまけみたいなもの。
それより何より、演奏シーンの描写の圧倒的な迫力。
まるで音楽が聞こえてくるような、聴覚を刺激される音楽描写です。
また、逆境に打ちのめされながらもド根性で障害を克服していく主人公の遥や、病気を抱えながらもそれを感じさせない強さを持った岬など、登場人物たちの魅力的な息遣い。
そして、心の機微に入りこむような台詞の数々。
新人離れした実力には感嘆させられ、夢中になって読み終えてしまいました。
ちょっとご都合主義的な設定や展開もあるのですが、素晴らしい音楽描写がそんなこと細かいことは関係ない、と思わせてくれるような説得力と力強さを持っているお話です。
(2012年12月読了)
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大好きな作家は、ジョン・アーヴィング、筒井康隆、津原泰水、中上健次、桐野夏生、北村薫、金井美恵子、梨木果歩。
コンプリート中なのは宮部みゆき、恩田陸、松尾由美、三浦しをん、桐野夏生、北村薫。今のところ、多分著作は全部読んでいます。