豚がつづる読書ブログ
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どこかでベートーヴェン (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ) 中山 七里 宝島社 2017-05-09 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
★★★
新設高校の音楽科クラスに天才的なピアノの才能を持つ生徒・岬洋介が転校してきた。
彼は卓越したピアノ演奏でたちまちクラスメイトを魅了するが、その才能は羨望と嫉妬をも集めてしまう。
ある日、豪雨により土砂崩れが起き音楽科の一同は校内に閉じ込められてしまうが、岬の勇気ある行動によって全員救助される。
だが同級生が死体で発見され、岬は容疑者となってしまう・・・。
高校生時代の岬の初事件を描いたストーリー。
このシリーズはいつもミステリ部分はおまけで、素晴らしい音楽描写を楽しむことがメインとなっています(そういう方は多いのではなかろうか…)。高校生時代の岬の初事件を描いたストーリー。
なのですが、今作はそれに加え、「才能」を持つ者と持たざる者の葛藤を執拗に描いており、読み応えがありました。
凡人がどれだけの努力をしても到達できない境地に、生まれながらの天才である岬は軽々と達しているという現実の残酷さ。
無自覚な岬にそれをまざまざと近くで見せつけられた同級生たちの嫉妬と劣等感について丁寧に描かれています。
作中の同級生たちは圧倒的な才能を前にした時、嫉妬して岬をいじめたり距離をおいたりするのですが、愚かだと思いつつ、自分もそんな場面に直面したら平静でいられるかはわからないなと思いました。
己を客観視して折り合いをつけるというのが正しいやり方なのでしょうが、それができる人間ばかりとは限らないですよね。
10代の多感な時期に味わう挫折の味はさぞかし苦かろう…と思うけど、若いから違う道を模索できるし立て直しも早いよね…と、岬よりもついつい同級生たちへ同情してしまいました。
また、天才である岬にも彼なりの悩みや不幸があり、タイトルの「ベートーヴェン」が示すような展開になるにつれ、読んでいてやるせなくなりました。
「夢をあきらめるのも勇気がいる」という言葉が胸にしみます。
(2018年9月読了)
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読むのがすごく遅いけど、小さい頃から本を読むのが大好き。
大好きな作家は、ジョン・アーヴィング、筒井康隆、津原泰水、中上健次、桐野夏生、北村薫、金井美恵子、梨木果歩。
コンプリート中なのは宮部みゆき、恩田陸、松尾由美、三浦しをん、桐野夏生、北村薫。今のところ、多分著作は全部読んでいます。
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