「ラブレス」桜木紫乃

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★★★

戦後の北海道、開拓小屋に生まれた百合江と里実の姉妹。
百合江は奉公先から旅芸人の一座に飛び込んで歌手を目指すが、夢は儚く破れ、流転の人生を送る。
一方、理髪師を目指した妹の里美は雇い主の息子と結婚し店を切り盛りしてゆくが、強すぎる妻に対し夫は浮気を重ねてゆく。

タイトルと表紙から想像していた話とまるで違うのでびっくり。
ライトな恋愛ものかと思ったら、思いっきり「ザ・昭和枯れすすき」な世界でした。

百合江と里実の人生と、その娘達の話が交互に語られてゆき、最後には張られた伏線が回収され、百合江の密やかな思いが見えてくるという構造の小説。

男に裏切られ、根無し草となってその場その場を生き抜いた百合江の人生は傍から見ると不幸そのもの。
でも読み進めていくうちに、人が幸か不幸かなんて他人が計れるものじゃない、と気づかされました。
運命に翻弄されながらも精一杯生きた百合江の人生は、誰よりも充実していたのかもしれません。

娘世代のエピソードがあまり語られないので、娘達の存在感が弱く、彼女達の生が受け継がれ未来へとつながっていく広がりを感じられなかったのが残念。

（2012年10月読了）