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村上海賊の娘 上巻 村上海賊の娘 上巻
和田 竜

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和田 竜

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上巻★★★
下巻★★★★


戦国時代の海賊・村上水軍を題材にしたお話。
信長に兵糧攻めにさせられ、窮地に陥った大坂本願寺。
本願寺は莫大な兵糧の調達を毛利氏に依頼するが、それには当時瀬戸内海を仕切っていた
最強の海賊、村上海賊の協力が不可欠だった。
その海賊王・村上武吉の娘、景(きょう)はひょんなことから一向宗の門徒を木津砦へ
届けることになるが、兵糧入れをしようとする毛利軍とそれを阻止せんとする信長軍の
戦いに巻き込まれていく――。


面白かったです。

何が面白いって、景のキャラクターが秀逸!
長身・怪力の彼女は、海賊働きに明け暮れ、当時の感覚では嫁の貰い手のない悍婦で
醜女と扱われていた。
そんな彼女が、婿探しという身もフタもない理由で大坂に向かい、本願寺と織田の戦いを
見物する。
「モテたい」という理由で欲望のままに行動する女性を主人公に据えた時代小説って、
なかなか無いですよね。
男達の戦いの論理とかけ離れてるし、ぶっとんでて、滑稽で、めっちゃ爽快。

自分の家を存続させるために戦う男たちを目の当たりにし、戦いに甘い夢を見ていた景は
落ち込む。
彼女の無力感は現代の働く女性にも通じる感覚で、すごくリアルに伝わってきました。
家族を養うために何としてでも生き抜こうとする男達の一種利己的な強さや狡猾さに辟易し、
覚悟の無い自分にへこんでしまうことって、女性なら一度はあるんじゃないかな。

その後、下巻では家のためではなく人を助けるために戦いに撃って出た景が男たちの心を
動かして行くのですが、ここらへんの流れがすごく読みごたえがありました。

利己的な男達が、ハラを決めた彼女の、幼く脆いけれども尊い心に惹かれ参戦していく。
景だけではなく、脇を固める敵側と味方側のそれぞれの事情が丁寧に生き生きと描かれている
ので、やむにやまれぬ衝突を産み、怒涛のドラマをつむいでいくこのクダリは大いに納得
させられ、引きこまれました。
人生の酸いも甘いもかみ分けた登場人物達の魅力的な息遣いがすぐそばで聞こえてくるようで、たぐいまれな群像ドラマに仕上がっていると思います。

ラストもすごく良かったです。
「思うさまに生きて、死んだ」という言葉が心に刺さりました。
生まれたからには思うように生き、死んでいきたい・・・そんな生き方が自分はできているか、改めて考えさせられます。

(2014年5月、7月読了)
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読書
自己紹介:
読むのがすごく遅いけど、小さい頃から本を読むのが大好き。

大好きな作家は、ジョン・アーヴィング、筒井康隆、津原泰水、中上健次、桐野夏生、北村薫、金井美恵子、梨木果歩。

コンプリート中なのは宮部みゆき、恩田陸、松尾由美、三浦しをん、桐野夏生、北村薫。今のところ、多分著作は全部読んでいます。
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