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村上海賊の娘 上巻 和田 竜 新潮社 2013-10-22 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
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上巻★★★
下巻★★★★
戦国時代の海賊・村上水軍を題材にしたお話。
信長に兵糧攻めにさせられ、窮地に陥った大坂本願寺。
本願寺は莫大な兵糧の調達を毛利氏に依頼するが、それには当時瀬戸内海を仕切っていた
最強の海賊、村上海賊の協力が不可欠だった。
その海賊王・村上武吉の娘、景(きょう)はひょんなことから一向宗の門徒を木津砦へ
届けることになるが、兵糧入れをしようとする毛利軍とそれを阻止せんとする信長軍の
戦いに巻き込まれていく――。
面白かったです。
何が面白いって、景のキャラクターが秀逸!
長身・怪力の彼女は、海賊働きに明け暮れ、当時の感覚では嫁の貰い手のない悍婦で
醜女と扱われていた。
そんな彼女が、婿探しという身もフタもない理由で大坂に向かい、本願寺と織田の戦いを
見物する。
「モテたい」という理由で欲望のままに行動する女性を主人公に据えた時代小説って、
なかなか無いですよね。
男達の戦いの論理とかけ離れてるし、ぶっとんでて、滑稽で、めっちゃ爽快。
自分の家を存続させるために戦う男たちを目の当たりにし、戦いに甘い夢を見ていた景は
落ち込む。
彼女の無力感は現代の働く女性にも通じる感覚で、すごくリアルに伝わってきました。
家族を養うために何としてでも生き抜こうとする男達の一種利己的な強さや狡猾さに辟易し、
覚悟の無い自分にへこんでしまうことって、女性なら一度はあるんじゃないかな。
その後、下巻では家のためではなく人を助けるために戦いに撃って出た景が男たちの心を
動かして行くのですが、ここらへんの流れがすごく読みごたえがありました。
利己的な男達が、ハラを決めた彼女の、幼く脆いけれども尊い心に惹かれ参戦していく。
景だけではなく、脇を固める敵側と味方側のそれぞれの事情が丁寧に生き生きと描かれている
ので、やむにやまれぬ衝突を産み、怒涛のドラマをつむいでいくこのクダリは大いに納得
させられ、引きこまれました。
人生の酸いも甘いもかみ分けた登場人物達の魅力的な息遣いがすぐそばで聞こえてくるようで、たぐいまれな群像ドラマに仕上がっていると思います。
ラストもすごく良かったです。
「思うさまに生きて、死んだ」という言葉が心に刺さりました。
生まれたからには思うように生き、死んでいきたい・・・そんな生き方が自分はできているか、改めて考えさせられます。
(2014年5月、7月読了)
左手に告げるなかれ (講談社文庫) 渡辺 容子 講談社 1999-07-15 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
★★★
万引きGメンの八木薔子のもとに、かつての不倫相手の妻が殺害されたことで刑事が訪ねて来た。
自らの疑いを晴らすため、仕事の合間に独自に事件の調査を始める薔子。
同じ犯人を追う探偵と出会い、コンビニスーパーバイザー連続殺人事件に巻き込まれていく。
登場人物たちの、様々な視点から捉えられた細々としたエピソードが積み重なり、やがてはそれが繋がり合って事件解決に導いてくれる。
そのラストに持っていく処理が抜群にうまく、安定した面白さでした。
しかしこの主人公、面白そうな職業(万引きGメン)に就いているのに、主軸のミステリ部分には関係が無いのでその仕事である必然性があまり感じられない(保安士として人間観察に優れている、ということなのかな?)。
万引きを捕獲する描写が面白かっただけに、残念。
海外ミステリのようなもったいぶったセリフや状況描写も、今読むとちょっと恥ずかしい・・・バブルの香りがします。
(2013年4月読了)
★★★★
時は戦国、秀吉は北条氏を攻め滅ぼそうと、小田原城とその周囲に点在する北条の支城を次々と攻略してゆく。
その内の一つ、忍城への攻撃は石田三成に命じられた。
これを迎え撃つのは、でくのぼうの「のぼう」様こと成田長親。
忍城と三成軍、攻防を制するのはどちらか―?
忍城攻めというマイナーな題材だけど、すごく面白かった。
物語をぐんぐん牽引してゆくのは、物語を進ませる司馬遼太郎風な老獪な手つきと、魅力的なキャラクターの力。
何を考えているのか推測不能な底知れぬ存在感を放っているのぼう様と、それを引き立てる脇の個性的な登場人物たちの面々。
のぼう様の真意は何か、この戦いはどう決着するのかという興味からページは先に先にと進む。
戦闘シーンや水攻めのシーンは、ビジュアルを強く喚起させ、実際に見てみたいと思わせてくれる。
ライトな語り口ながらも読みごたえばっちり。堪能しました!
(2011年10月読了)
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大好きな作家は、ジョン・アーヴィング、筒井康隆、津原泰水、中上健次、桐野夏生、北村薫、金井美恵子、梨木果歩。
コンプリート中なのは宮部みゆき、恩田陸、松尾由美、三浦しをん、桐野夏生、北村薫。今のところ、多分著作は全部読んでいます。