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豚がつづる読書ブログ
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誰かが足りない (双葉文庫) 誰かが足りない (双葉文庫)
宮下 奈都

双葉社 2014-10-16

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★★★

就職活動に失敗して納得のいかない仕事に就いている男性、認知症の症状が出始めた老女、ビデオをまわしていないと部屋から出られない青年、人の失敗の匂いを嗅ぎとってしまう女性・・・
それぞれが何かが「足りない」事情を抱えた、人気のレストラン「ハライ」に同じ日に予約をした6組の客たちの来店に至るまでのエピソードを描いた連作集。

取り返しのつかないものを失ってしまった登場人物たちが、喪失感の中でもがきながらもその喪失自体を受け入れ、明日へのかすかな道筋を見つけていくお話。

ハライは大事な誰かとの温かな思い出の場所だったり、憧れの場所だったりするわけですが、おいしいものを誰かと共有した記憶がその後の人生を豊かにし、どんなことがあってもそれをよすがとして生きていけると思わせてくれる・・・それってとっても尊いし、幸せなことだと思います。

「足りない」ことで満たされ、人生から下りてまた這い上がる時の景色をも楽しむ・・・そんな風に自分も生きていけたらいいなあ。

構成が独特なせいか、少し作り物めいてリアル感がなかったのが気になりましたが…内容は良かったです。

(2015年6月読了)
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メロディ・フェア (ポプラ文庫 日本文学) メロディ・フェア (ポプラ文庫 日本文学)
宮下 奈都

ポプラ社 2013-04-03

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★★★

大学卒業後故郷に戻り、地元のショッピングセンターの化粧品カウンターに勤めることに
なった結乃。
化粧に興味のない家族の理解も得られず、希望とは異なる配属先で売り上げも伸びず、
空回りで焦る日々。

あまり化粧が好きではない私にとっては正直、ピンと来ない題材のお話だったのですが、
「無人島にひとつ好きなものを持っていくとしたら、迷わず口紅を選ぶだろう」というほど
理由も無く化粧が「ただ好きなのだ」という結乃のブレない力強い気持ちが直に伝わってきて、自然と感情移入してしまいました。

何も買わないで愚痴だけ言いにカウンターに寄っていくお婆さん、いつも通りがかる
「鉄仮面」と呼ばれるほど厚化粧の女、突然辞めた前任者の白田さん、
化粧好きの姉を冷ややかな眼で見る、化粧嫌いの妹。

人間関係に悩み迷いながらも前を向いてひたむきに前進していこうとする、
ありがちな女性の成長小説なのですが、作者の真摯な手つきであらわになる結乃の
心の揺れ動きに、ひたすら魅せられました。

ただ、幼馴染みのミズキが鉄仮面のようなメイクを始めた理由がわからなかったり、
同僚の馬場さんの敏腕ぶりがいまいち伝わってこなかったり、いろいろ腑に落ちない点も
多かったです。

エピソードをあえて描きこみすぎないせいだと思うのですが、もうちょっと脇役達の
背景も知りたかったです。

(2014年8月読了)
スコーレNo.4 (光文社文庫) スコーレNo.4 (光文社文庫)
宮下 奈都

光文社 2009-11-10

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★★★★★5つ!

古道具屋の三姉妹の長女として育った麻子。
彼女の人生の4つの時間を「スコーレ(人生の学校)」として切り取り、少女から大人の女性へと成長していく心の軌跡を描いた物語。

自由奔放で美しい妹とは対照的に、麻子は不器用で、思ったままに行動することができず、自分に自信を持てずにいる。
妹へのコンプレックスから、卑屈ゆえに縮んだ自我を肯定してゆく過程を、みずみずしい視点できめ細やかに優しく描かれています。

彼女の物語は決して劇的ではなく、むしろ地味な、ささやかな出来事の中で繰り広げられていくのですが、豊かな語り口で細かな感情の揺れを捉え、頑なな自分に向き合っていく道程を丹念に追っていくので、女性なら誰でも共感し、魅せられるのではないかと思います。
なんというか・・・自分も通って来た道筋なので、自然と麻子を応援しちゃうんですね。

終盤、そんな麻子が悩みを乗り越え、次のステージへとたどり着く。
大げさですけど、麻子と悩みを分かち合いながら読んだので・・・すごくカタルシスをもたらしてくれました。


ただ、妹との葛藤が中盤以降あまり描かれなかったのが残念。
麻子の世界が広がって妹へのコンプレックスから解放されたということなんだろうけど、妹絡みでもう一波乱あったら、もう少し物語のふくらみがあったんじゃないかなと思いました。

(2013年8月読了)

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プロフィール
HN:
sis
性別:
非公開
趣味:
読書
自己紹介:
読むのがすごく遅いけど、小さい頃から本を読むのが大好き。

大好きな作家は、ジョン・アーヴィング、筒井康隆、津原泰水、中上健次、桐野夏生、北村薫、金井美恵子、梨木果歩。

コンプリート中なのは宮部みゆき、恩田陸、松尾由美、三浦しをん、桐野夏生、北村薫。今のところ、多分著作は全部読んでいます。
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