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黄色い水着の謎 桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活2 奥泉 光 文藝春秋 2012-09-22 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
★★★
桑潟幸一ことクワコーシリーズ。
夏の期末テストの答案用が盗まれる「期末テストの怪」と、
文芸部の夏合宿で水着が盗まれる「黄色い水着の謎」の2編の短編集。
下流生活に適応しひらきなおってたくましく生きているクワコーが楽しげで、
羨ましいやら、空しいやら。
謎解きよりも、クワコーのしょうもなさが良い。
テンポ良く繰り出される謎と物語の展開のペースがうまく噛み合ってて、
一気に読んでしまいました。
(2014年6月読了)
桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活 (文春文庫) 奥泉 光 文藝春秋 2013-11-08 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
★★★★
沈没寸前の短大から何とか抜けだし、千葉の底辺大学の准教授として赴任したクワコーこと桑潟幸一。
相変わらず風采も上がらずやる気もないクワコーだったが、教授職とは思えない超低収入に節約生活を余儀なくされ、顧問となった文芸部の生徒達に研究室を占拠されたり、教授達の派閥抗争に巻き込まれ使いっぱしりをしたりする毎日。
そんなクワコーを、怪事件が毎月のように襲う―。
ああ…クワコー面白すぎる!
学園を舞台にしたライトミステリなのですが、クワコーの小説を楽しむにあたって、わたしにとってミステリ部分はメインではありません。
クワコーシリーズの最大の魅力とは、彼の煩悩のかたまりのような俗人っぷりなのです!(たぶん)
何しろ彼ってば、卑屈なくせに努力も大嫌いだし、無駄にプライドも高いのに意志薄弱で長いものにすぐ巻かれるし、思うようにいかないことは全て他人や環境のせいにするような、ネガティブで打たれ弱いどうしようもない人間。
ほんと、すごく共感できる(笑)し、読み進めていくうちにクワコーがだんだんいとおしくなってきちゃうのです。
人間の醜い部分をぐりぐりとほじりながらも自虐がくどくなりすぎないよう調節される、綿密かつ闊達にすべっていく筆とあいまって、彼の冴え渡る自虐の詩をあますところなく楽しめる、奇跡のようなシリーズなのです。
そしてまた、ゆとり世代のオタク文芸部員たちの人物造形も秀逸でした。
彼女たちの言動もすごく自然で、まるで目の前にいるみたい。
クワコーと彼女たちの噛み合わない会話もシュールすぎて、おかしい。
タイトルからして、スタイリッシュって・・・。脱力するわ!
(2014年4月読了)
モーダルな事象―桑潟幸一助教授のスタイリッシュな生活 (文春文庫) 奥泉 光 文藝春秋 2008-08-05 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
★★★★
短大で近代文学を教える桑潟幸一助教授(通称クワコー)が、あるマイナー作家について解説を書いたことをきっかけに、その作家の遺稿集を出すことになった。
意外にも遺稿集はヒットするが、次々と殺人事件が周りで起き、クワコーは複雑怪奇な事件に巻き込まれる…。
すごく面白かった!
ミステリや幻想ファンタジー、メタフィクションの要素など、いろんなジャンルのごった煮、といった趣向の小説。
事実と虚構が絶妙に同居していて、すごく楽しんで読みました。
くどいのに流れるような描写も痛快で、奥泉節に終始酔わされてしまいます。
小物すぎるクワコーの卑屈な自虐っぷりには爆笑させられ、北川アキの元夫婦刑事コンビの活躍には伝統的な探偵小説の味わいも楽しめました。
終盤で何となくオチがつきましたが、ちょっとミステリの味付けが薄いかな?と思いました。
解かれるミステリというより、人物描写や伝奇ファンタジー要素を楽しむエンタメ小説という感じで、ミステリを解くことを主眼にしないで読んだほうがいいかも。
結構ボリュームがありますが、つまんない所が無かったです。
知的だけど猥雑で下品な感じの文章が、単に自分の好みなんだと思います。
シューマンの指 (100周年書き下ろし) 奥泉 光 講談社 2010-07-23 売り上げランキング : 23464 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
★★★★
致命的な指のけがをしたにもかかわらず、復帰して見事な演奏を奏でた天才ピアニスト永嶺修人。
三十余年前の出来事が、修人と高校時代を共に過ごした「私」の手記によって徐々に明らかになっていく。
シューマンにとりつかれたピアニストたちの物語。
頻繁に登場する端正なシューマン音楽評論の難しさに、頭の中が疑問でいっぱい。
最後までこれでいくのかなと思いながら読み進めていくと、中盤以降はやっとミステリらしくなっていきます。
幻惑的な雰囲気の中、二転三転するラストにはびっくり。
横溢する音楽的な描写はとても美しく高踏的で、読み手をめまいを起こさせるような手腕は相変わらず。
奥泉さんの標準仕様という感じです。
ただ、音楽うんちくとミステリのバランスの匙加減がなんだか微妙で、半端な小説という印象をちょっと受けました。
音楽小説として楽しめなかった私にとっては、幻想的で耽美なおもむきを味わうための小説でした。
(2012年4月読了)
鳥類学者のファンタジア (集英社文庫) 奥泉 光 集英社 2004-04 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
★★★★★5つ!
ウダツのあがらない30代負け犬ジャズピアニストのフォギーが、「オルフェウスの音階」に導かれ戦時下のドイツに至る大冒険譚。
「ロンギヌスの石」やら「フィボナッチ数列」やら、神秘的なモチーフの断片が散りばめられ、しまいにはオクイズミヒカルまで出現する荒業のメタフィクション。
根底に流れる遊び心満載のジャズ魂から発せられる、人を食ったような展開にまるめこまれながら読んでいくのが気持ちよくてたまんないです。
何よりも、自由闊達に動き回るフォギーの魅力にヤラれました。
中盤の、祈りについてのフォギーの考察は胸に迫るものがありました。
特定の信仰、民族、文化を超えて、祈るということの意味を考えさせられます。
最後のほうは蛇足と思われる向きもあるかもしれませんが、これはこれで、ジャズのグルーヴ感をフォギーと一緒にめいいっぱい味わったようですごく良かったです。
(2008年6月読了)
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大好きな作家は、ジョン・アーヴィング、筒井康隆、津原泰水、中上健次、桐野夏生、北村薫、金井美恵子、梨木果歩。
コンプリート中なのは宮部みゆき、恩田陸、松尾由美、三浦しをん、桐野夏生、北村薫。今のところ、多分著作は全部読んでいます。