豚がつづる読書ブログ
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★★★
異端の女性民俗学者・蓮丈那智が、助手でワトソン役の三國と共に事件を解決するシリーズ第二弾。
即身仏や大黒天、三種の神器、御蔭講などを題材にした五篇の短編集。
前作ではフィールドワーク先で事件が起きるというパターンでしたが、今回は大学周辺の日常の中での事件が多く、蓮丈先生が怪我したり失踪したり犯人扱いされたりと、バリエーションに富んだ展開が楽しめました。
こんなに頻繁に危険な目に遭う学者なんているのかな、と思うけど、事件に巻き込まれないとお話にならないしね…。
まあ、マンネリにならないように色んなシチュエーションを描いていて、読み手としては飽きません。
今作でも民俗学仮説が現実の事件と絡み合い、学究の考察を進めることによって事件の真相が明らかになったり、その反対もあったりして、巧妙な構成にわくわくしながら読みました。
印象に残ったのは、即身仏と塞の神を描いた表題作の「触身仏」や、神の変遷を描いた「大国闇」。
支配者によって塗り替えられるのは歴史だけではなく神々も変貌させられて…というのが面白いわ~。
古代史の暗黒面もたくさん描かれていて知的好奇心が刺激されます。
「触身仏」のラストは珍しく幻想的に仕上がっていて、自分の好みでした。
「死満瓊」や「御蔭講」も面白かったけど、民俗学的考察や解釈に飛躍がありすぎな気がしてちょっと読みにくかったです。
知識が増えることでまた違った側面が見えることもあるので、単に今のわたしは知識が足りなくて理解できなかったのだと思います。
(2019年7月読了)
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★★★★
歌舞伎役者の父が急逝し、残された7歳の少年・秋司の後見人になったのは中堅役者の萩太郎。
萩太郎にも同学年の息子・俊介がいたが、全く歌舞伎に興味が無い様子。
秋司の踊りを見てその才能に驚いた萩太郎は、俊介と秋司の初共演に秋司に難しい役をやらせることにする。
しかし、秋司の急病のため、彼の役を俊介に変更したことにより、秋司とその母親との関係がこじれていく…。
歌舞伎の子役に焦点を当てて描かれた長編物語。
梨園の特殊で独特な世界の仕組みがわかりやすく描かれているので、すんなりと作品世界に入っていけました。
歌舞伎を全く観たことのない方も興味のない方も問題なく読めると思います。
役者たちの日常や等身大の悩みも垣間見られるし、世襲制が基本の梨園で後見人の父を失うことがどれほどのことなのか、すべて読んでいるうちに理解できました。
役者同士の仲が良くても基本的にはライバルだし、中でも御曹司はスタートから異なり、配役にも差があるらしい。
人に見られる華やかな業界だけど、内実は一般社会とそんなに変わらないんですね。
同様に、親が子を、子が親を思いやる気持ちは誰でも一緒なんだと、読んでいてつくづく思います。
また、才能や運命とは何なのか、考えさせられました。
生まれつきの天才だけではなく、努力を重ねて芸を磨き続けることができるという才能もある。
才能が人を不幸にすることだってあるし、才能の有無が人の幸不幸を左右するわけではないのです。
秋司の運命は一見悲劇のようにも見えるが、歌舞伎から離れた十数年は彼にとって運命を甘受し、耐え忍ぶ雌伏の時だったかもしれない。
この離別は母を守るため、そして人生をより良く生きるための力を涵養していた、子どもなりの生存戦略だったのかも。
配られたカードで勝負するしかない人生の残酷さと、そのカードをうまく使って運命を乗り越えようとする意志の強さ。
案外、人間って強いものだし、前を向いていかざるを得ない本能を持った生き物なのかな、と思います。
これを悲劇とか運命とか、どう呼ぶかは他人が決めることじゃないよね。
(2017年6月読了)
★★★★
中性的な美貌を持つ異端の民俗学者、蓮丈那智。
彼女が助手と共に全国各地にフィールドワークに赴くと必ず事件に巻き込まれる…。
五篇の民俗学ミステリ短編集ですが、どの話も大体同じパターン。
民俗学者、蓮丈那智助教授と助手の内藤三國が調査依頼を受け現地で調査を開始すると、必ず何かしらの事件が起きる。
そして、彼女の直感と冷徹な観察力により快刀乱麻に事件を解決するが、諸事情によってその成果を学会に発表できない、というオチまでセットでパターンとなっています。
この作品シリーズの一番の面白さは、民俗学的な歴史の謎と、二人が遭遇する事件の真相がリンクしているところ。
事件の動機やトリックと民俗学的要素が有機的に結びついており、どちらの要素も生かされている練られた状況設定には唸らされます。
二つの要素を持つ小説って、どうしても比重が片方に寄りがち。
一方は面白いけど、もう一方は物語のテーマから乖離している場合もあったりして、バランス良く絡み合ってうまく作用し合うことは難しい気がします。
その点、この作品は二つの要素の融合に成功しており、作者の卓越した手腕に魅了されました。
考えてみれば、ミステリと民俗学はその構造に共通項も多く、かなり親和性の高いジャンルかもしれません。
ある謎に対して想像力を駆使して仮説を立て、それを証明するための根拠を探し、ひたすら検証を繰り返していく。
検証をフィールドワークまたは捜査と言い換えれば、ミステリも民俗学も謎へのアプローチは共通していて、どちらも発想の柔軟さや緻密な考察(推理)が求められます。
常識や先入観、思い込みをとっぱらい、目の前の事実から論理的に導き出された真実のみを抽出するという点では同じ。
異なるのは、民俗学は答えは一つではないが、ミステリはそうじゃないということ。
なんだか掘れば掘るほど奥深そうです…。
また、探偵役となる蓮丈那智の造形が独特すぎて、違和感だらけのキャラ設定に最初は疑問を感じました。
感情の波を全く感じさせないクールな年齢不詳の中性的美女で、アンドロイドみたいで全然感情移入ができない…。
でも、読んでいるうちに探偵がなぜ彼女なのか何となくわかりました。
隠された犯罪であれ、闇に葬られた正史の裏側であれ、真実を白日の下にさらけ出すという過酷な役割を持たせるため、あえて性別や固定観念を超越した、なにものにも囚われない強さを持つ人物造形にしたのかな、と思います。
人間らしさはちょっと情けないキャラの助手の内藤君が担ってくれるので、これもバランス取れてますね。
短編ひとつひとつの巧拙の差は少なからずあるけれど、ダイナミックな民俗学仮説とトリッキーなミステリ要素の双方の醍醐味を味わえる、一級の作品です。
(2019年7月読了)
★★★
主人公は、見た目は冴えないが美声を持つラジオパーソナリティの恭太郎。
ラジオの収録後、常連のバー「if」で飲んでいると全身ずぶ濡れの若い女性・恵が現れた。
思いがけず恵を騙すことになってしまったバーの常連たちは、彼女の復讐計画に巻き込まれることになる…。
中盤まで、何となく違和感とちぐはぐさを感じつつ、職業も年齢もバラバラでクセの強いバーの常連たちの軽妙な会話のやり取りが楽しくてどんどん先を読んじゃいます。
テンポの良いコミカルな語り口はページをめくる推進力となったものの、だんだん展開がモタついてきて何だかイヤな予感…。
そして終盤…ちょっとドタバタアクションが冗長で退屈だったけど、怒涛の展開に。
ラストはじわりと涙が出てきましたが…ちょっとズルいよねー。
こんなラストでは泣く人も多いだろうに、取ってつけたようなオチになっていて反則だと思いました。
後出しジャンケンでもいいんだけど、もっと良いやり方があったはず。
最後が唐突すぎて、気持ちよく騙された感じがしないのです。
小説って微妙で絶妙なさじ加減と伏線で成り立っているのだなー、と再認識させてくれました。
嘘や虚構が人を守り救ってくれるというテーマはすごく感動しました。
目に見えないものを信じたっていいよね!
(2019年6月読了)
★★★★
大手出版社・文宝出版に勤める文芸編集者の美希。
美希が会社で起こった小さな出来事や謎を実家に持ち帰ると、定年間際の高校教師の父親がたちまち解決してくれるという安楽椅子探偵もの。
こういうのが読みたかったんだ!としみじみ感動しながら読了。
娘が身の回りの「日常の謎」を中野在住の実家の父に持っていくと見事に解決してくれるという、お決まりのパターンで終わる8編の短編集です。
1話ごとの分量は少なめで、どれも結論がすっきりと端正で美しい。
このお父さん、ほんとに凄いんですよねー。
見た目は地味だしおなかも出てるけど、博識ぶりや洞察力が半端ない。
娘の美希が帰ってくると嬉しくてたまらないみたいで、ちょっと甘やかし過ぎなところもスキがあって可愛い。
そして謎だけではなく、輻輳する人間交差点を見事に解きほぐしてくれ、気持ちもすっきりさせてくれます。
父娘のあたたかな交流を描くとともに、時間の流れを感じさせる無常さが行間からにじんでくる演出もニクい。
ただ、お父さんが博覧強記すぎてついていけないこともありました。
読み手のこちらとしては国文学にすごく造詣が深いわけではないので、高踏な謎解きをされても「ふーん…」で終わることも。
落語や歌舞伎まで話が広がっていく短編「闇の吉原」は、謎じたいが高踏すぎて、やや鼻についてしまいました。
(わたしの教養が無いせいです、すみません…)
美希の編集者の同僚たちも、いい味を出していてどのキャラも良かったです。
同僚の言葉で印象に残ったセリフ。
「事実で説明出来るものって、すっきりはするけど、可能性の翼をたたませるところがある。解釈の冒険って、いかにも人間らしいじゃない」
こういうセリフがさらっと出てくるのが北村薫節ですよねー。好き。
読み終わるのがもったいない、と久しぶりに体感した一冊でした。
(2019年6月読了)
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プロフィール
HN:
sis
性別:
非公開
趣味:
読書
自己紹介:
読むのがすごく遅いけど、小さい頃から本を読むのが大好き。
大好きな作家は、ジョン・アーヴィング、筒井康隆、津原泰水、中上健次、桐野夏生、北村薫、金井美恵子、梨木果歩。
コンプリート中なのは宮部みゆき、恩田陸、松尾由美、三浦しをん、桐野夏生、北村薫。今のところ、多分著作は全部読んでいます。
大好きな作家は、ジョン・アーヴィング、筒井康隆、津原泰水、中上健次、桐野夏生、北村薫、金井美恵子、梨木果歩。
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