豚がつづる読書ブログ
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★★★★
歌舞伎役者の父が急逝し、残された7歳の少年・秋司の後見人になったのは中堅役者の萩太郎。
萩太郎にも同学年の息子・俊介がいたが、全く歌舞伎に興味が無い様子。
秋司の踊りを見てその才能に驚いた萩太郎は、俊介と秋司の初共演に秋司に難しい役をやらせることにする。
しかし、秋司の急病のため、彼の役を俊介に変更したことにより、秋司とその母親との関係がこじれていく…。
歌舞伎の子役に焦点を当てて描かれた長編物語。
梨園の特殊で独特な世界の仕組みがわかりやすく描かれているので、すんなりと作品世界に入っていけました。
歌舞伎を全く観たことのない方も興味のない方も問題なく読めると思います。
役者たちの日常や等身大の悩みも垣間見られるし、世襲制が基本の梨園で後見人の父を失うことがどれほどのことなのか、すべて読んでいるうちに理解できました。
役者同士の仲が良くても基本的にはライバルだし、中でも御曹司はスタートから異なり、配役にも差があるらしい。
人に見られる華やかな業界だけど、内実は一般社会とそんなに変わらないんですね。
同様に、親が子を、子が親を思いやる気持ちは誰でも一緒なんだと、読んでいてつくづく思います。
また、才能や運命とは何なのか、考えさせられました。
生まれつきの天才だけではなく、努力を重ねて芸を磨き続けることができるという才能もある。
才能が人を不幸にすることだってあるし、才能の有無が人の幸不幸を左右するわけではないのです。
秋司の運命は一見悲劇のようにも見えるが、歌舞伎から離れた十数年は彼にとって運命を甘受し、耐え忍ぶ雌伏の時だったかもしれない。
この離別は母を守るため、そして人生をより良く生きるための力を涵養していた、子どもなりの生存戦略だったのかも。
配られたカードで勝負するしかない人生の残酷さと、そのカードをうまく使って運命を乗り越えようとする意志の強さ。
案外、人間って強いものだし、前を向いていかざるを得ない本能を持った生き物なのかな、と思います。
これを悲劇とか運命とか、どう呼ぶかは他人が決めることじゃないよね。
(2017年6月読了)
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自己紹介:
読むのがすごく遅いけど、小さい頃から本を読むのが大好き。
大好きな作家は、ジョン・アーヴィング、筒井康隆、津原泰水、中上健次、桐野夏生、北村薫、金井美恵子、梨木果歩。
コンプリート中なのは宮部みゆき、恩田陸、松尾由美、三浦しをん、桐野夏生、北村薫。今のところ、多分著作は全部読んでいます。
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