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豚がつづる読書ブログ
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刑事のまなざし (講談社文庫) 刑事のまなざし (講談社文庫)
薬丸 岳

講談社 2012-06-15

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★★★

娘が通り魔事件の被害に遭い、植物状態になったことをきっかけで警察官に転職した夏目。
6年後、刑事課に配属され新人刑事となった夏目の刑事としてのまなざしは被害者の痛みを
知る優しさと罪を憎む厳しさを湛えていた―。

7つの殺人事件や窃盗事件を夏目が紐解いていくという短編集ですが、どの事件も経過が
ちょっとワンパターンで、あっと驚くような結末ではありません。

それでも読み手の心を強く打つのは、やむにやまれぬ事情で犯罪を犯した者たちに夏目が
寄り添う気持ちが強く伝わってくるから。

元法務技官として人が更生することに尽力してきた夏目が、娘の事件によって葛藤しながら
も人の罪に真正面から向き合う仕事に転職した、その彼の言動だからこそ説得力がある。
大切な人を失った痛みを知る大人こそ、響いてくるお話となっているんですね。

夏目の言動はまっとうで人間味があり、人を見つめる視線の暖かさに安心します。
犯罪を犯した人がどうやって罪を償うかという問題に言及しており、ひどく考えさせられ
ました。


(2014年10月読了)
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木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか(上) (新潮文庫) 木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか(上) (新潮文庫)
増田 俊也

新潮社 2014-02-28

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木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか(下) (新潮文庫) 木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか(下) (新潮文庫)
増田 俊也

新潮社 2014-02-28

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上巻★★★
下巻★★★★

不世出の柔道家、木村政彦の忘れられた生涯を書いた評伝。
木村政彦の生涯を丁寧に描きつつ、戦前から戦後にかけての柔道史、総合格闘技やプロレス界の歴史も紐解き、その知られざる真実についてつまびらかにしていく。

上巻は、師匠の牛島の鬼の指導の下で猛練習を重ね、天覧試合を制し日本最強の柔道家になり、そして戦後、プロ柔道に参加し海外へ活躍の場を求めるまでが描かれています。
下巻はブラジルでのグレイシーとの伝説の戦いを経て、帰国してプロレスに転向し、「昭和の巌流島」と言われた力道山との試合とその後の生について語られていきます。

柔道もプロレスも全く興味が無かったので、木村政彦の名や柔道の歴史等々、初めて知ることばかり。
そんな自分でも心を掴まれ、むさぼるように一気に読んでしまう骨太のノンフィクションでした。

上巻は猛練習と試合の描写が執拗に続き、どれだけ木村が強かったのか繰り返し強調され、少し単調に感じてしまいました。
が、その執拗な描写が生きてくるのは下巻に入ってから。

上巻の冗長的な説明があるからこそ、力道山との対戦時の木村の立ち位置や周辺の状況、その試合が彼にとってどのような意味を持ち、そしてその後の人生にどう影響したのか、見えてくるんですね。

「力道山に負けた男」として、75歳までの「余生」を生きた木村。
柔道の試合に臨む際は負けたら死ぬことを覚悟していたという木村が、どのような気持ちでその後の生を生きたのか、作者の筆によって克明にあぶり出されていきます。

木村の汚名返上のため、資料収集と取材に18年もの歳月を費やしたという作者の執拗で真摯な姿勢に圧倒されるばかりでした。

(2014年10月読了)
写楽百面相 (文春文庫) 写楽百面相 (文春文庫)
泡坂 妻夫

文藝春秋 2005-12

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★★★

江戸の本屋の若旦那二三(にさ)は、馴染みの芸者卯兵衛の部屋で見たことのない斬新な役者絵
を目にする。
いったい誰が描いたのか。浮世絵師の正体を追っていく中で、二三は怪事件に巻き込まれていく。

謎の絵師・写楽の正体探しをするうちに、その背景に広がるより大きな事件に肉迫していくと
いう構成に唸らされます。

当時の人々の暮らしや写楽の周辺の状況を克明に描くことで「写楽」の謎へのアプローチを
しているので、空前の文化統制を受けながら芸術家たちが活躍した寛政期になぜ写楽が
出現し消えたのか、自然と納得することができました。

最後まで読むとすべての絵解きがぴたりと嵌って、カタルシスを感じることが出来ました。

(2014年2月読了)
迷子の王様: 君たちに明日はない5 迷子の王様: 君たちに明日はない5
垣根 涼介

新潮社 2014-05-22

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★★★★★5つ!

リストラ請負会社で働く真介は、今日もリストラ面談に明け暮れていた。
しかし、リストラ請負という仕事が社会的意義を失ったという社長の判断によって会社が廃業となり、
真介は岐路に立たされる。
シリーズ完結篇。

これで終わりなんて、ずいぶんあっさりしているなあ、というのが最初の感想。

でも、じわじわと、きます。

最終話のタイトルは「オン・ザ・ビーチ」。
これ、ジャック・ケルアックの「オン・ザ・ロード」を
もじっているのかなーと思いました。

沢木耕太郎さんの「深夜特急」で、主人公がすれ違った旅行者に「禅とは何か?」と
問われた時、「オン・ザ・ロード(途上である、ということだ)」と答えるのですが、
この「君たちに明日はない」シリーズも、「仕事、恋愛、ひいては人生とは、
常に途上であるということだ。」
っていうことを言いたいんじゃないかと。

前巻までは、真介と陽子は最終的に結婚するのかしら?と思っていたのですが、
「途上にある」ということなら、
ラストも納得できます。

結婚しても、しなくてもいい。
真介は誘われた仕事を選ぶかもしれないし、選ばないかもしれない。

全ては、その時点での最良の選択肢を選ぶという、「途上にある」ということ。

P108
「大事なことはなんだ。会社に残ることか。それとも次の就職先を探すことか。食うための仕事を探すことか。たぶん違う。そんなレベルじゃ、人は本当には生きられない。食うためだけに仕事をする人間は、いつの時代だって結局その仕事からは、永久に報われることはない」

P204
「今の時点で判断できないことは、また状況が変われば、その時に判断すればいい。そういう曖昧な自分を許しておく。というか、その時が来たら嫌でも判断せざるを得ない。そういう意味で、未来は常に不確定です。そしてその分だけ、気楽です。つまりぼくたちの今は、死ぬまでずっと連続した、一つの通過点でしかない」
「たぶん職業も暮らす環境も含めて、今というこの時間は、常に暫定仕様です。むしろその無常を意識して過ごすことに、意味があるんじゃないでしょうか」


シリーズを通して作者が読者に問いかけた「仕事とは?」「人生とは?」という問い。
作者は
心の底の深いところで納得できる、実にまっとうな回答を用意してくれました。

時々挿入される日本の経済情勢予想には作者の意見が反映されているようですが、
押しつけがましくは無いんだけどちょっと面映ゆかったです・・・。


(2014年10月読了)
いわゆる天使の文化祭 (創元推理文庫) いわゆる天使の文化祭 (創元推理文庫)
似鳥 鶏

東京創元社 2011-12-10

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★★★

葉山の通う市立高校では文化祭の準備が大詰めを迎え、生徒達が準備に忙しく働いていたが、
ペンギンのような天使のイラストが描かれた貼り紙が学校中に貼られるという事件が起こる。
さらには化学準備室で何者かが劇物の棚を開けるという事件も起き、文化祭の開催まで
危ぶまれるような騒ぎに発展していく。

葉山君シリーズ第四弾。
今回は葉山の視点が中心のAパートと、吹奏楽部のカナの視点のBパートに分かれてお話が
進んでいきます。
このパート分けの理由は終盤で明かされるのですが、私は仕掛けられた企てに途中まで
全く気付きませんでした・・・。
最後まで読むとすべての絵解きがぴたっと嵌って、納得できましたが。

ただ、犯人の動機や推理の精度には疑問が残りますねー。
リアリティに欠ける気がするし、本格ミステリかと思って読むと、肩すかしを食らいます。

脇キャラの伊神さんや柳瀬さんがいい味出してるし、キャラの会話が微笑ましくて好きな
シリーズなのですが、ミステリとしても物語性としても、今一歩という印象です。

(2014年9月読了)
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プロフィール
HN:
sis
性別:
非公開
趣味:
読書
自己紹介:
読むのがすごく遅いけど、小さい頃から本を読むのが大好き。

大好きな作家は、ジョン・アーヴィング、筒井康隆、津原泰水、中上健次、桐野夏生、北村薫、金井美恵子、梨木果歩。

コンプリート中なのは宮部みゆき、恩田陸、松尾由美、三浦しをん、桐野夏生、北村薫。今のところ、多分著作は全部読んでいます。
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