豚がつづる読書ブログ
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★★
大手印刷会社・大塔印刷が後援している女流書道家の坂部幽嶺が姿を消した。
同じ頃、会社の工場では社員三名が相次いで病死していることがわかった。
ちょっと頼りない御曹司の三郎、社長秘書・南知子、史上最速の窓際族・建彦の三人は、事件の調査を社長より命じられる。
そして一見無関係な二つの事件にはつながりがあることがわかる──。
書と印刷の対比をテーマに描かれた物語ですが、壮大なテーマの割には何だか小さくまとまっている印象を受けました。
癖のある独特のリズムで進んでいく文章にノリきれず、つかみどころのないキャラクターに全く共感できず、誰もが予想できる謎解きで拍子抜け。
書家の芸術的な葛藤もイマイチ納得できず、心を揺さぶられることもなく淡々と読み終えました。
門井作品は何冊か読みましたが、たまに「これ、書いてて面白いのかな?」って思う作品があります…。残念。
(2019年10月読了)
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★★★
福井在住だった宮下一家は、夫の強い希望から北海道に期間限定の山村留学をすることに。
移住先は大雪山国立公園の中にあるトムラウシという集落。
虫や寒さに悩まされながらも、大自然の素晴らしさや地元の人との温かな交流を描いた、作者の移住体験記風エッセイ。
いやー、すごいです。
いやー、すごいです。
何がすごいって、宮下一家のフットワークの軽さ。
アクティブすぎます。
何しろ、移住した先は大自然に囲まれた寒さの厳しい過疎地域。
何しろ、移住した先は大自然に囲まれた寒さの厳しい過疎地域。
携帯は圏外、スーパーまで37キロ、子どもの通う学校は小中合わせて生徒は僅か10人。
その上長男は受験生だし、宮下さんの夫も北海道で職探し(移住のために福井での仕事を辞めたみたい)。
自分だったら考えられないかも…。
その逞しさには、憧れを通り越して畏敬の念さえ抱いちゃいました。
美しい景色と穏やかで楽しい暮らしが生き生きと語られていくのでどんどん読み進められます。
美しい景色と穏やかで楽しい暮らしが生き生きと語られていくのでどんどん読み進められます。
数の多いやたらと楽しげな学校行事や地域行事、濃密なご近所づきあい、子どもたちのオモシロ発言や珍事件など、クスっと笑えるエピソードばかり。
もちろん、描かれないその裏には初めての土地での苦労があり、楽しいことばかりではないと思います。
でも、宮下一家の面々は問題についても深刻になりすぎず、リスクを恐れずに目の前の興味あることに対して貪欲に、全力で楽しんでいきます。
日常を大切に愛おしみ、光に顔を向けてゆく家族のまっとうな姿は下手な小説を読むより面白かったです。
世間や常識に囚われて曇っていた目を覚ましてくれたエッセイでした。
(2019年10月読了)
世間や常識に囚われて曇っていた目を覚ましてくれたエッセイでした。
(2019年10月読了)
★★★
実家が讃岐うどん屋で調理師免許を持つ編集者・柳楽尚登は社長から解雇を言い渡され、吉祥寺にある立ち飲み屋で働くことに。
その店の息子であり、うずまき専門の写真家・雨野秋彦は、立ち飲み屋をエスカルゴ料理のレストランにリニューアルしようとしていた。
なりゆきで松阪でエスカルゴ料理修行をすることになった尚登は、伊勢うどん屋の娘に一目ぼれ。
秋彦一家に振り回されながらも、尚登は店を軌道に乗せることができるのか――。
幻想的でとんがった作品をものする津原作品も大好きですが、前身の津原やすみを思い出させてくれるコメディ調も大好物。
この作品は後者に当たり、 敷居が低く気軽に読めます。
真面目で粘り強いけれども、優しく気弱な青年が料理人として成長していくストーリーはザ・王道って感じで、本当に津原作品か?と最初は思いました。
でも、ボケにボケを被せていく漫才のような会話はオフビートでとぼけた独特の雰囲気を形作っていて、いつもの津原作品と同じでした。
しかもたたみかけられていく会話はハイブロウで軽妙洒脱、読んでいてとんでもなく心地よいのです。
魅力的で賑やかなキャラクターたちが次から次へと登場して主人公をブン回していく展開もたまらなく面白いし、雨野一家と尚登が連帯感を持ち疑似家族めいた関係性になっていくのも感涙モノだし、どこを切っても楽しいお話でした。
疑似家族の嘘っぽくなりがちなところを絵空事でないようにリアルに寄せているのも上手く、全体に細かいところまで良く目配りされた印象を受けました。
料理描写が多いので空腹時は辛かった…。
気持ちの上では満腹になれましたが。
(2019年10月読了)
★★★
昭和初期、豪華客船「箱根丸」を舞台に次々と起こる事件を描いたオムニバス形式の短編集。
横浜から倫敦までの長い船旅中、殺人事件や令嬢の逃亡騒ぎや密航騒ぎなど、個性的な乗客たちが起こす魅力的な事件はそれぞれ趣向が凝らされていて、まったく退屈しません。
少し不思議で奇妙な話もあれば後味の悪い話もあり、ロジックできちんと解決される話もあり…。
ひとつひとつの密度の濃い謎もさることながら、全編を通した仕掛けもあり、豪華な気分にさせてくれます。
自分も旅をしているかのような、昭和初期のゆったりとした旅情ムードに浸りつつ、サスペンスフルな気持ちも味わわせてくれるという、なんともお得感あふれる短編集でした。
(2019年6月読了)
★★★
流行のファッションに身を包むキリコは清掃の仕事のついでに事件も人の心もクリーンにしてしまう――。
お掃除ミステリ第五弾にして最終巻。
四篇の連作短編集ですが、最初の二話は英会話学校、三話目はコワーキングスペースで起こった事件のお話。
例によって、掃除の派遣で働くキリコの深い洞察力によって事件とそれに関わる人の心を解きほぐしていきます。
軽く読める肩の凝らないミステリですが、真相の裏に隠された悪意や嫉妬の熱量は結構重みがあり、認知の歪みやいじめでは済まされないビターな内容でした。
特に三話目の「重なり合う輪」の女性が受ける悪意のない嫌がらせは、胸がつまり苦しくなります。
その上、自分の見たい世界しか見えていない人間に対して仕返ししても被害者は楽になることができず、やるせなくなりました。
そして最後の四話目「ラストケース」では、いつもは他人の問題を解決してきたキリコが自身の問題に悩み、旅に出てしまい…というお話。
キリコが万能な人間ではなく、人並みに傷つき揺らぐ女性として描かれているのがとてもいい。
彼女が他人の感情に人一倍敏感なのは、そうならざるを得ない環境で育ったから…ということが行間から垣間見えるのが悲しい。
賢く人の気持ちに敏感なキリコは、見えすぎるゆえに思わぬ行き違いを起こしてしまう。
しかも弁解の機会は二度と訪れないとなると、本当に切ない。
でも今はキリコには大介がいる、そのことが読んでいて救いになりました。
最初の頃の大介はもっと頼りなかった気がするけども、巻を重ねて夫として成長したのか、キリコを立派に支えていて目頭が少し熱くなりました。
大介は問題を見て見ぬふりをしないし、キリコを信頼して、彼女のやることについて一緒に責任を取ってくれるでしょう。
このシリーズは二人が出会ってから強い絆で結ばれるまでの長い話だったのかも、と思うとイイハナシダナー、と感慨深いです。
終わっちゃうのは寂しいですが、このラストだったら納得。
また近藤作品の別シリーズを楽しみたいです。
(2019年9月読了)
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読書
自己紹介:
読むのがすごく遅いけど、小さい頃から本を読むのが大好き。
大好きな作家は、ジョン・アーヴィング、筒井康隆、津原泰水、中上健次、桐野夏生、北村薫、金井美恵子、梨木果歩。
コンプリート中なのは宮部みゆき、恩田陸、松尾由美、三浦しをん、桐野夏生、北村薫。今のところ、多分著作は全部読んでいます。
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