豚がつづる読書ブログ
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★★★
両親を殺人事件によって亡くした天野直人と七海の兄妹は、偶然、犯人が存在し得ない殺人事件の場に居合わせる。
兄妹はこの不可能犯罪を見事に解き明かすが、鮮やかに事件を解決してしまったために、諜報機関からその身を狙われることになってしまう。
名探偵の遺伝子を持つ者は機関から追われ、その問題解決能力を悪用されるのだという…。
可愛らしいイラストの表紙からは想像もできない、壮大な設定と激しいアクションシーンが意外過ぎるお話でした。
名探偵の遺伝子を持つ者は、その問題解決能力から、世界経済の鍵を握る存在として国際的な争奪戦が行われている。
機関は名探偵をあぶりだす為に不可能犯罪を仕掛け、それに対抗して直人たちは自ら事件解決に臨む…という凝った設定とシチュエーションが面白かったです。
ただ、そんな壮大な設定の割には描かれる事件のトリックは地味で小粒なので、そこはちょっと物足りなく感じました。
クールな御曹司やら、メイド兼ボディーガードやら、緘黙症の天才少女やら、キャラクターが立っているのでサクサク読めます。
ラノベっぽいのでこれぐらい嘘くさい話でも何となく納得できちゃいます。
(2019年12月読了)
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★★★
ゴーストライターの名賀尻はAV業界をテーマとした原稿の依頼を受け、複数のAV女優へのインタビューを行う。
だが、取材した女優たちが次々と謎の死を遂げ、彼は罠にはめられ警察に追われることになってしまう。
事件の裏にはアルテーミスの采配というウェブサイトがあった…。
前半は名賀尻が取材したAV業界に身を投じた女性たちの転落人生が詳細に語られ、後半は名賀尻の失踪後、彼の原稿を読んだ女性が謎を探っていくという流れになっています。
AV業界の仕組みと実態、そしてブラック体質が赤裸々に語られるのでかなりエグい読み心地でした。
女性を女優に堕とすためのえげつない手口、低賃金かつ肉体労働の過酷さ、グレーゾーンの業界体質ゆえ救済措置は皆無という容赦の無さ…
小説ですが、著者は取材もしているので多少真実も反映しているんでしょうね~。
男性の性的欲望を満たすためだけに存在する業界のおぞましさには、吐き気をおぼえました。
また、視点がどんどん変わり、誰の視点で語られているのかわからないモノローグが重なり合って物語が進んでいくため、読み手は混乱させられます。
事件の全貌が把握できないまま最後までストーリーが疾走していくのでゾクゾクするやら目まぐるしいやら、何が何だかわからない 笑。
最終的にはうまくまとまるけど、破綻もあるし、大したトリックも無い気がするし、尻すぼみ感が半端ない。
刺激的な題材を扱ってるだけで、ご都合主義感満載の物語には面白みを感じなかったです。
もっと作者の悪だくみに翻弄されるような、凝ったイヤミスが読みたい!!
(2019年11月読了)
★★★
作者のデビュー作「静かな雨」と、「日をつなぐ」の二編が収録されている作品集。
「静かな雨」は、諦めを知り、苦い時間を過ごす術を知っている人たちのお話。
クリスマスの日に失業した行助(ユキスケ)は、偶然見つけたたいやき屋の店主のこのみと知り合う。
彼女が作るたいやきはとても美味しく、行助は店に通うようになり、このみと徐々に親しくなる。
しかしこのみは交通事故に遭い、記憶を一日しか留められないという障害を負ってしまう。
静謐でゆったりとした物語の中で世界の豊かさを描き出すことができる宮下さんの手腕は、デビュー作から発揮されています。
行助は生まれつき足に麻痺があり、こよみは「瞳に秋の夜みたいな色と、あきらめの色がある」「あきらめるのってとても大事なことだと思う」と言います。
行助は彼女の強さに惹かれていきますが、事故の後は二人の関係も変化していきます。
日々の暮らしの記憶を共有できないことにストレスを感じながらも、やがてはそれを受け入れていく行助。
二人に奇跡は起きないが、諦めの中でも生きていける。
そんな強さが、読み手の心を静かに打つのです。
短編「日をつなぐ」。
中学時代の恋人と結婚し、誰も知り合いのいない町で子育てをする女性のお話。
夫は仕事で忙しく、一人きりで育児に格闘するワンオペ状態の母親の孤独感や不自由さが、自分が体験したかのように伝わってきます。
逃げ場のない、ゴールの見えない育児環境の中でまともな思考もできない状況に追い詰められていく主人公。
彼女の疲弊感が増していく様子が、豆を煮る描写をたびたび挿入することで表現されているのがうまい。
夫と向き合おうとするところで話は終わるのですが、今後夫婦の関係がどうなろうとも、向き合おうと努力する主人公の姿勢は偉いと思う。
小説の主人公や題材にしにくい話を奥行きのある、繊細な物語に仕上げている筆さばきには安心感があります。
やっぱり、最初から宮下奈都さんは宮下奈都さんなのだなー。
(2019年11月読了)
★★★
来年には世界が滅びると噂される荒廃した世界の片隅で、カバン修理で細々と生計を立てている車椅子の女性シズカ。
そんな彼女の元に、言葉を話す不思議なサル“ノーマジーン”がやってきた。
無邪気なノーマジーンとの奇妙で穏やかな生活がはじまったが、やがて二人の抱える秘密が明らかになっていく──。
体の不自由さとその生い立ちゆえに外界とのつながりを絶ち、ずっと一人で孤独に生きてきたシズカ。
介護ロボットの代わりにやってきたノーマジーンは人間の子ども程度の知能しか無く、はっきり言って役立たず。
手順を覚えられないので家事も頼めない上に仕事の邪魔をする彼を、シズカはとことん邪険に扱います。
本書の2/3以上を占める第一部では、そんな二人のささやかな日常の出来事が淡々と綴られていきます。
現状に不満を持たず、他人を必要としないシズカですが、純粋でひょうきんなノーマジーンに影響され、少しずつ変わっていくのです。
一人きりの閉じた生活よりも張りが出てきて、次第に彼の存在が大きくなっていく様子が、細かいエピソードの積み重ねと共につぶさに読み手に伝わってきます。
自分よりも弱い存在である彼を励ますために歩行リハビリをはじめたり、自分の食事を分け与えたり。
傷つかないように自分を守り、諦めの中で生きていた彼女が、誰かのために何かをしてあげたいと思えるようになる。
それって愛だよね…と、読んでるこちらの心も温かくなってきた矢先、第二部からガラリと様相が変わり、急展開に。
寓話めいた雰囲気から一転し、残酷で容赦のない現実を突きつけられるシズカ。
知らなかったら、幸せが続いたのに。
知ってしまったからには、知らなかった頃にはもう戻れない。
何かに苦しんでいるシズカの様子を敏感に感じ取り、取り繕うように明るくふるまうノーマジーンの姿が切ない。
そしてラスト…残酷な真実と同様に、一度知ってしまった愛する気持ちを手放すことなんて、できやしないのです。
最後にまた、読者の気持ちを温かくさせてくれました。
(2019年11月読了)
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sis
性別:
非公開
趣味:
読書
自己紹介:
読むのがすごく遅いけど、小さい頃から本を読むのが大好き。
大好きな作家は、ジョン・アーヴィング、筒井康隆、津原泰水、中上健次、桐野夏生、北村薫、金井美恵子、梨木果歩。
コンプリート中なのは宮部みゆき、恩田陸、松尾由美、三浦しをん、桐野夏生、北村薫。今のところ、多分著作は全部読んでいます。
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